ベンダーは値上げを継続【前編】
あの時クラウド移行した企業を苦しめる「値上げだけじゃないコスト」の正体
政府やITベンダーの調査を分析すると、クラウドサービスの値上げはしばらく継続する可能性がある。ただし、企業がコスト増に悩む理由はベンダーの値上げだけではない。
クラウドサービス料金の値上げは2024年も続く可能性がある。米国政府が発表した2024年2月の生産者物価指数(PPI)では、「データ処理と関連サービス」(クラウドコンピューティングを含むカテゴリー)は前月比で0.6%増となっている。前年同月比では3.7%増だ。PPIは2022年9月以降、クラウドサービスの値上げが続いていることを示している。
クラウドサービスの支出最適化ツールを提供するVertice Technologyによれば、クラウドサービスの中でもSaaS(Software as a Service)の価格上昇が目立っている。Vertice Technologyの創業者でCEOのエルダー・ツビー氏は、2024年1~3月期の観測で、SaaSの価格が1年間で10.6%上昇する見通しを示した。
一方で、コンサルティング会社Deloitte Consultingの最高クラウド戦略責任者デビッド・リンシカム氏は、クラウドサービスの値上げはSaaS分野に限ったことではなく、市場全体で進んでいるとの見解を示す。だが、企業がコスト増に苦しんでいる理由は、ベンダーの料金設定だけが原因ではない。
なぜ“あの時期”にクラウド移行した企業ほどコストに苦しむのか?
「企業はクラウドサービスしか利用しない『クラウドオンリー』の方針によって自分の首を締めている」とリンシカム氏は指摘する。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)中にクラウドオンリーに引かれた企業は珍しくない。そうした企業はクラウド移行を急ピッチで進めたという。
ほとんどの企業は、クラウドサービスへの移行によってコストが下がると考える。だがリンシカム氏は、「企業は既存のアプリケーションやOSをそのままクラウドサービスに移す『リフト&シフト』によって最良の結果を得られると期待したが、それは捕らぬたぬきの皮算用(まだ手に入れていないものを当てにして計画を立てること)だった」と話す。
オンプレミスで稼働しているアプリケーションが、必ずしもクラウドサービスで効率的に稼働するとは限らない。この事実を失念してクラウド移行を進めるとコストの増加につながる。「どの社内IT資産がクラウド移行によって恩恵を受けるかの徹底的な分析を怠っていた企業もある」(リンシカム氏)
リンシカム氏は続ける。「自社で設備を所有するオンプレミスインフラやコロケーション(データセンターの場所貸しサービス)など、クラウドサービス以外のインフラも考慮した、バランスの取れたアプローチは、クラウドサービスのコストを抑えるのに役立つ」
アプリケーションの移行には想像以上にコストがかかる可能性がある。調査会社Gartnerは、オンプレミスのレガシーアプリケーションをクラウドサービスに移行することには、「技術的な障壁が付きまとう」と警告する。レガシーアプリケーションの中には、クラウド移行の際にエミュレーター(アプリケーションの実行環境を疑似的に再現するツール)やコードトランスレーター(別のプログラミング言語への変換ツール)が必要になるものがある。リンシカム氏によれば、メインフレームで稼働しているアプリケーションをクラウドサービスで稼働させると、約10倍のコストがかかる可能性もあるという。
ツビー氏は、クラウドサービスの値上げが続けば、SaaSのユーザー企業の間で、より安価な選択肢に乗り換える動きに火が付く可能性があると分析する。
後編ではストレージの価格変化とその背景について解説する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
3
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
6
AI導入が失敗する“真犯人”は現場のマニュアル 7割が陥る「標準化」のわな
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
ライオンが脱レガシーシステムのパートナーに「Google Cloud」を採用した理由
-
9
ITの世界で「エグレス」(Egress)はどういう意味? 実例で解説
-
10
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
8
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
9
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー