企業はクラウドサービスのコスト管理を徹底する必要に迫られている。企業はどのような問題に直面しているのか。業界のアナリスト4人にその実態を聞いた。
クラウドサービスのコストを可視化することは、企業のIT部門にとっては軽視することのできない優先事項の一つだ。ただしクラウドサービスの利用料金を見積もることは複雑な作業になる。クラウドサービスのコストが予算超過となる状況がさまざまな企業において発生していることを受けて、複数のクラウドサービスの利用料金を可視化し、コストの予測をしやすくする手法として「FinOps」が注目されるようになった。
企業はクラウドサービスのコストに関してどのような問題に直面しているのか。4人のアナリストに、企業が直面しているコストの問題と、その背景を聞いた。
IDCの調査では、IT予算が「横ばい」か「減少している」と回答した企業は2022年初頭には60%だったが、2022年7月には72%を超え、IT予算が限られている状況が顕著だ。クラウドサービスのコストはユーザー企業にとっての重要な予算項目となっており、クラウドサービスの請求額を見て驚く企業が増えている。そうした中で、コストを削減したり管理したりする手段になり得るのがFinOpsだ。
FinOpsのニーズは、主にクラウドサービスの使用量に基づく従量課金の料金体系によって生まれている。クラウドサービスへの移行によって、企業の業務アプリケーションは複数のインフラに分散することになる。これがコスト管理を難しくする要因だ。
システムの分散化が進む一方で、中央集権的な監視の必要性が増している。監視が必要な分野は主に2つある。1つ目はデータガバナンス。2つ目は財務ガバナンスだ。財務ガバナンスを強化するために、FinOpsは有効な手段となる。
企業のIT部門にはコスト最適化の圧力がかかっており、IT部門は運用のコストを再評価する必要性に迫られている。
ESGが実施した2023年の技術とコストに関する調査では、710人の回答者のうち「FinOpsの手法を広範囲に使用している」と回答したのは34%だった。31%は「限定的にFinOpsを使用している」と回答した。
FinOpsの注目度が高まる背景には、幾つかの要因がある。1つ目は、オンプレミスのインフラからIaaS(Infrastructure as a Service)への移行が進んだことで、ITコストがCAPEX(資本的支出)からOPEX(事業運営費)へと変化しつつあることだ。こうした背景から、サーバとストレージのOPEXが予算に与える影響が大きくなっている。クラウドサービスのコストを詳しく追跡して管理することは、OPEXの自然な進化といえる。
2つ目の要因は、リソースの消費量と使用量に関するデータが入手しやすくなり、意思決定に十分な、粒度の細かいデータが得られるようになったことだ。
3つ目の要因は、アプリケーションの構造の複雑化に伴う、コスト計算の複雑化だ。リソースの消費量を把握するために、利用中の複数のクラウドサービスやインフラの関係性を考慮しながらコストを正確に計算する必要が生じている。
IaaSが登場した当初は、CAPEXをOPEXに変換できることがその利点の一つだと考えられていた。IaaSが普及してユーザー企業のIT予算に占めるOPEXの割合が高くなると、OPEXをより綿密に管理することが重要になってくる。クラウドサービスの使用量や使用数が企業内で増えるにつれて、FinOpsはさらに重視されるようになるだろう。
後編は全ての企業がFinOpsを採用するとは限らない理由や、FinOpsの戦略を策定するためのポイントを取り上げる。
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