VPNが安全にリモートアクセスする手段として普及しているが、VPNを使うと待ち時間やネットワークのパフォーマンスに影響が出る。こうした課題を克服する「Always On VPN」をMicrosoftが提供している。
VPN(仮想プライベートネットワーク)は、リモートアクセスを安全にする方法として便利だ。しかしVPNは、VPNを介さずインターネットに接続する場合と比較して、コネクションを確立するまでの待ち時間が増加したり、ネットワークの通信速度が低下したりする問題を抱えている。
一般的なVPNが抱える課題を解決する手段として、Microsoftは「Always On VPN」を提供している。どのような仕組みで、どのようなメリットがあるのか。
Always On VPNはMicrosoftのクライアントOS「Windows 10」以降と、サーバOS「Windows Server 2016」以降で利用できるVPN機能だ。ユーザーがインターネットに接続している間は、常にVPN接続を確立し続ける。Always On VPN用のプロファイルを作り、設定をONにすることで、ユーザーの通信は常に保護される。そのため、公衆無線LANを利用していてもデータを保護できる。
安全と判断したネットワークへの接続時に自動的にVPN接続を切断する設定も可能だ。例えばオフィス内でイントラネットに接続している場合、VPNによる通信の保護が必要とは限らない。Always On VPNは接続しているネットワークが信頼できると判断した場合、自動でVPN接続をオフにしてネットワークのパフォーマンスを改善できる。
VPN接続が必要な通信のみ保護する「スプリットトンネリング」を設定できる。これは指定した宛先だけVPNへ通信させて、その他の通信はVPNを経由させず、直接インターネットに接続できる技術だ。例えば、ユーザーがサブスクリプションサービス「Microsoft 365」を利用するときは基本的にVPN接続を構築するが、一部の信頼できるリソースへのアクセス時にはVPN接続をオフにしてパフォーマンスを向上させることが可能になる。
Always On VPN以前のリモートアクセス機能としてMicrosoftは「DirectAccess」という機能を提供している。DirectAccessもVPN接続を常に維持するが、管理性やセキュリティ面で課題がある。そのためMicrosoftはWindows 10以降でのDirect Accessの利用を推奨していない。
ただしAlways On VPNは、Windowsの古いバージョンやWindows以外のクライアントOSを必要とする利用環境では適さない場合がある。クラウドサービス群「Microsoft Azure」の仮想マシンサービス「Azure Virtual Machines」との互換性もない。
後編はAlways On VPNに近年追加された新機能や、デバイス管理機能について説明する。
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