実用化に向けた取り組みが進む量子関連技術は、量子コンピュータだけではない。他の主要な量子技術の「量子鍵配送」「量子プリンタ」「量子センシング」について、実在する企業の取り組みを基に紹介する。
IBM、Google、Intelの他、複数の政府機関までもが量子技術についてしのぎを削っている。量子コンピュータは2022〜2024年までには利用可能になると予想される。
現行のコンピュータは計算にビットを利用するのに対して、量子コンピュータは量子ビットを利用する。量子ビットの通常のビットとの違いは、重ね合わせが可能な点にある。つまり通常のビットは0と1のどちらか1つを表すのに対し、量子ビットは0と1の両方の状態を同時に持つ。この特性によって、量子コンピュータでは何百万件という演算の同時実行が可能になる。量子は世界の謎の一部を解き明かし、現状のスーパーコンピュータが抱える処理能力の壁を打ち破る。
現在世界中で利用が検討されている量子技術は、量子コンピュータだけではない。量子セキュリティや量子複製などがその例だ。本稿では実用化に向けた研究が進む3つの量子技術について説明する。
標準的な暗号化アルゴリズムの突破が、量子コンピュータによって容易になるのではないかという懸念が広がっている。その影響は、ブロックチェーンからセキュアな通信まであらゆるものに及ぶ。一方で量子の特性が、新しい暗号化技術に使われることもある。
量子は観測されると状態が変化する。中国は、この量子の特性を生かして盗聴者が通信を傍受したかどうかを識別し、衛星通信を保護している。具体的には送信者が受信者に鍵を送信したら、それが観測されていないことを両者が確認した場合のみ、その鍵を使う。その後、鍵を使ってメッセージの暗号化と復号ができる。この手法を「量子鍵配送」(QKD)という。
QKDでは、光の粒子的な側面であり、光エネルギーの最小単位である「光子」に1と0を“刻む”ことで、送信者と受信者の間で解読不能の鍵を共有する。何者かがその鍵の取得を試みて、データを傍受すると、量子力学の法則によって鍵が変化し、その鍵は添付されたデータの復号に使えなくなる。「このような方法を使えば、いずれ量子コンピュータに、現在使われている最高の暗号セキュリティ対策を突破する性能が備わったとしても保護できる」と話すのは、QKDサービスを提供するQuantum Xchangeの創設者兼CEOのジョン・プリスコ氏だ。
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