2019年12月20日 08時00分 公開
特集/連載

量子コンピュータによる複雑な証券取引処理の実現、残る課題は?実用化後に必要なもの

現在のコンピュータアーキテクチャでは困難な証券取引処理を量子コンピュータならば処理できる可能性が示された。量子コンピュータの実用化後にも残されそうな課題とは何か。

[Cliff Saran,Computer Weekly]
iStock.com/Gearstd

 Barclaysのチーフテクノロジーおよびイノベーションオフィスの研究者チームがIBMと共同で、量子最適化アプリケーションの概念実証に関する論文を発表した。

 2019年10月に公開された論文「Quantum algorithms for mixed binary optimization」(混合バイナリ最適化のための量子アルゴリズム)は、同チームが証券取引の整合性を確保するために取引決済に応用したアルゴリズムについて論じている。

 同論文は、証券取引決済を「最適化が難しい問題」であると説明している。それは、証券と資金の同時決済(DVP)取引の決済時に満たさなければならない法的制約と、論文の執筆者が言う「資産の担保化と信用枠の利用」によって生じる追加オプションの両方の組み合わせが求められるためだ。

 Barclaysのチーフテクノロジーおよびイノベーションオフィスで研究とエンジニアリングの責任者を務めるリー・ブレイン氏は英Computer Weeklyのインタビューに答えて、取引決済のプロセスについて次のように説明している。「自身の取引の詳細を提示する。相手も取引の詳細を提示する。両者が一致すると取引が成立し、キューに追加される」

 ブレイン氏によると、決済は取引単位に行われるか、キューに追加された証券取引が一括処理期間内に処理されるという。「一括処理期間内にできる限り多くの取引を決済するのが目標だ」と同氏は話す。

 取引を精算するにはトレーダーの資金活用力が必要になるため、その計算が複雑な問題になる。「資金を調達できるか、信用担保枠の形で資金を利用できれば決済が可能だ」(ブレイン氏)

 関係する取引数が多いほど複雑さが増すとブレイン氏は言う。「少数の取引しか存在しなければ、恐らく暗算できる。取引数が10〜20件に増えると、紙に書いて計算することになる。それ以上に増えると、コンピュータの域になる。取引数が数百件になると、現在のコンピュータのアルゴリズムでは限界が生じ始める」

 ブレイン氏は「さらに数が増えると、経験則を用いる必要がある。それにはアニーリングのシミュレーションのような手法が含まれる」と付け加える。この手法は、全取引の中で精算可能な取引群を特定するために最適化プロセスを使うと同氏は話す。その後、特定された精算可能な取引が実際に決済される。

 取引数が5万〜10万件に及ぶ証券取引の場合、




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