人工知能(AI)技術の利用に当たり、企業はさまざまな障壁に直面している。その一つは、ネットワークだ。通信機器ベンダーEricssonの調査から読み解く、AI技術と通信の関係とは。
通信機器ベンダーEricssonの調査報告書は、企業が人工知能(AI)技術を活用する上で、通信インフラが重要な役割を果たすことを浮き彫りにした。調査では、回答企業の88%が「旧式の通信インフラがAI技術の恩恵を十分に受ける上での障壁になっている」と感じていることが分かった。AI技術と通信技術はどのような関係にあるのか。Ericssonの調査報告書を踏まえて考える。
2025年6月にEricssonが発表した年次報告書「The State of Enterprise Connectivity Europe 2025」は、調査会社Censuswideが欧州5カ国(英国、フランス、ドイツ、オランダ、イタリア)のIT意思決定者約2500人を対象に実施した調査を基にしている。
Ericssonによると、企業は5GとAI技術が「相互依存の関係にある」と捉えている。具体的には、AI技術の利用がネットワーク性能の向上に寄与するとともに、AI技術を利用するためには高度なネットワークインフラが必要になるという見解だ。調査では、回答企業の85%が「AI技術はネットワークの分析を自動化し、パフォーマンス向上に貢献する」と答え、87%が「研究開発を加速させるために5Gは不可欠だ」と答えた。実際、通信を分析してネットワークの最適化を自動化するために、AI技術を利用する動きも拡大しつつあるという。
「企業がAI技術の恩恵を受けるには、通信インフラの高度化が不可欠だ」とEricssonは説明する。
一方で、調査からは欧州企業が抱える課題も明らかになった。調査では、欧州企業の約67%が、既存の通信インフラの複雑さが5G活用の妨げになっているとみている。その背景には、高度の通信インフラへの投資を阻害する規制があるとEricssonは指摘する。同社の調査報告書によると、「欧州におけるネットワーク中立性に関するルールが通信事業者のサービス提供を制限している」と答えた回答企業は35%だった。ネットワーク中立性とは、「通信事業者はインターネット内の全通信データを、平等かつ公平に扱わなければならない」という原則を指す。
ネットワーク接続の品質の低下は企業のビジネスにもさまざまな悪影響を与えかねない。不安定なネットワーク接続がもたらす悪影響について、調査では企業の46%が「運用コストの増加につながっている」、28%が「収益損失につながっている」と回答した。
Ericssonのエンタープライズ無線ソリューション部門でEMEA(欧州・中東・アフリカ)地域を統括するポール・マキュー氏は、「企業が堅牢(けんろう)な通信インフラの利点と重要性をますます認識していることが明らかになった」と述べる。複雑な通信インフラや規制などの障壁を乗り越えるには、「通信事業者をはじめとした外部パートナーと密に連携し、通信に関するスキルを高めることが重要だ」と同氏は指摘する。
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