「分析ツールを入れたらデータドリブン企業になれる」はなぜ間違っているのか打ち破るべきは“20%の壁”

データドリブン志向を強める企業が増える中、ベンダー各社は最新のセルフサービス型ツールでこうした要求に応えようとしている。だがデータドリブン型組織を作ることは文化であり、ツールではない。

2015年09月02日 12時00分 公開
[Ed BurnsTechTarget]
Dresner Advisory ServicesのWebサイト《クリックで拡大》

 アナリティクスベンダー各社は、企業でのアナリティクスの普及を促進するために使い勝手の良いツールに力を入れている。この数カ月だけでも、「アナリティクスの民主化」といった触れ込みの製品に関するプレスリリースで溢れかえっている。ベンダー各社はいずれも、企業の間でアナリティクスが普及しない状況を打開するために、データ分析ツールをシンプルにするという方針を打ち出している。

 しかしながら、これはツールの問題ではなく、企業文化の問題である、と筆者は考えている。

 「ユーザーはシンプルなツールを求めており、シンプルさが普及を促進する」というベンダーの認識は別に新しいものではなく、いわば自明の理屈だ。確かに、今日リリースされているツールは、10〜15年前に登場したものと比べるとずっと使いやすいようだ。だがツールがシンプルになっても、普及があまり進んでいないのが実情だ。

 アナリティクスの専門家からよく聞くのは、「データドリブンツールの普及率は一般的に、企業の全従業員の20%程度で頭打ちになる」という説だ。IT部門やアナリティクス担当チームが従業員に与えるツールが何であれ、この数字はさほど変わらない。

データ分析ツールの普及を妨げる“20%の壁”

 この20%という数字は調査に裏付けられているが、実際にはこれでも過大な推定だと思えるようなケースもある。米Dresner Advisory Servicesが最近実施した調査「Wisdom of Crowds BI Market Study」によると、調査に協力した企業の40%近くでは、データ分析ツールを利用している従業員の数は10%未満だった。利用率が11〜20%と答えたのは、回答企業の20%以上で、利用率が40%以上と答えたのは回答企業の25%以下だった。

 これらの数字で注目されるのは、2014年以前と比べて利用率が下がっていることだ。つまり、ツールが間違いなく使いやすくなっているにもかかわらず、ビジネスの第一線にいる従業員の間での普及率が全く伸びていないのだ。

 第一線の従業員が新しい分析ツールを利用しようとしない理由はたくさんある。1つには、人々は自分のやり方を変えるのを好まないことが挙げられる。逆に言えば、必要に迫られない限り、人は新たな手法を採用しようとはしないということだ。例えばマーケティングマネジャーであれば、目の前にドンと置かれたという理由だけで新しいセルフサービス型の分析ツールを使い始めようとは思わないだろう。顧客を効率的に分類したり、各種のキャンペーンを検証・比較して最も有効なものを選び出したりするのに、分析ツールが役立つことを従業員に説明するのはアナリティクスチームの役割だ。

従業員にデータの活用を奨励するデータドリブン型企業

 だが従業員の教育だけでは不十分だ。データドリブン文化を植え付けるのは経営幹部の責任であり、このプロセス自体は分析ツールと何の関係もない。従業員は、データを活用しているかどうかで自分が評価されること、そして会社で昇進するにはもっとデータドリブンにならなければならないことを知る必要がある。

 このような企業文化の育成に成功した企業の話を聞くと、そこには次のような共通点がある。会議で自説を裏付けるデータを持っていない従業員は、短い発言時間しか与えられない。経営幹部はどの従業員がツールにログインしたかを監視し、それを業績指標の1つにしている。そしてマネジャーたちは発表の練習を行い、自分の直感をデータで補強するのだ。こうしたプロセスを主導するのが経営陣の果たすべき役割だ。

 「使いやすいデータ分析ツールをインストールするだけで、従業員がすぐにデータドリブンになる」と考えている経営リーダーは、考えを改めた方がいい。どれほどシンプルでユーザーフレンドリーなツールであろうと、日々の業務でデータを活用していない従業員をデータ重視型人間に改造することはできない。上述した“20%の壁”を打ち破りたいと考えている企業は、自社の文化が障害になっていないか、そしてその文化を変革することが、目指すべき新たな地平に本当につながるのかを検討する必要がある。

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