コロナ禍より立ち直った企業向け無線LAN市場は、回復期から安定期に入り、今後の確実な成長が見込まれる。調査会社IDCのレポートから、直近の数字を中心に業界の動向をお届けする。
調査会社IDCは、3カ月ごとに世界の無線LAN市場に関する報告書「Worldwide Quarterly Wireless LAN Tracker」を発行している。過去の報告書によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)に端を発したサプライチェーンの世界的な混乱により、企業向け無線LAN市場では未出荷在庫の滞留による売り上げの低迷が続いていた。
しかし2024年には全体の売上高が上昇に転じ、第3四半期(7〜9月)は前期比5.8%増、第4四半期(10〜12月)は前期比4.8%増となった。2025年6月17日(現地時間)に発表された最新の報告書から、2025年第1四半期(1〜3月)の主要な数値をまとめた。
需要は安定している。2025年第1四半期、世界の無線LAN市場は前年同期比10.6%成長し、市場規模は23億ドルに達した。
IDCは、成長の原動力として、新しいWi-Fi規格の普及を挙げる。「Wi-Fi 6E」に対応した機器の売上高が、2025年第1四半期に従属型アクセスポイント(無線LANコントローラーとの連携を要するアクセスポイント)市場の売上高全体の31.9%を占めたのだ。前年同期は27.7%だった。Wi-Fi 6Eとは、「Wi-Fi 6」が対応していた周波数帯2.4GHzと5GHzに加えて、6GHz帯が使えるようになった規格だ。
「Wi-Fi 7」対応機器の売上高も増加した。2025年第1四半期には従属型アクセスポイント市場の売上高全体の11.8%を占め、こちらも前年同期の10.2%から増加となった。
地域別に見ると、北米および中南米では、売上高が前年同期比15.2%増加した。米国の21%という力強い成長率がけん引した形だ。欧州、中東、アフリカ(EMEA)では、前年同期比11%の成長となった。アジア太平洋地域(APAC)は、前年同期比1%増加と振るわなかった。この低迷の原因は中国で、中国だけで見ると前年同期比4.2%の減少となった。
主要ベンダーの業績を見ると、Cisco Systemsの売上高が前年同期比4.6%増加して9億450万ドルに達し、市場シェアは圧倒的な39.5%となった。2位につけるHPE傘下のAruba Networksの市場シェアは15.9%で、Cisco Systemsの半分以下にとどまる。Aruba Networksの売上高は前年同期比10.7%増加して3億6390万ドルに達した。
市場シェア3位はUbiquitiの11.7%で、売上高は前年同期比50.9%増の2億6740万ドルに達した。4位はHuawei Technologiesの5.4%で、売上高は前年同期比10.7%減の1億2410万ドルとなった。5位はJuniper Networksの5.3%で、売上高は前年同期比21.9%増の1億2090万ドルとなった。
調査結果を受けてIDCのエンタープライズネットワーク担当シニアリサーチマネジャー、ブランドン・バトラー氏は次のように語る。「企業向け無線LAN市場は不安定な時期を脱したようだ。堅調に推移している。Wi-Fi 6E や人工知能(AI)を活用した管理機能など、刺激的なイノベーションが今後も需要を後押ししていくだろう」(バトラー氏)
翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(株式会社リーフレイン)
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