英国有数の貿易港Thames Freeportが、Verizon BusinessとNokiaの技術を用いたプライベート5Gネットワークを構築し、大規模な経済再生に乗り出した。AI技術による自動化も見据えた“港のスマート化”の全容は。
通信インフラがますます重要になる中、英国の貿易港Thames Freeportは、通信会社Verizon Communicationの法人向けサービス部門Verizon Business、通信機器ベンダーNokiaと提携した。テムズ川河口に広がる複数の主要な物流、製造、イノベーション拠点に、5G(第5世代移動体通信システム)を利用した専用の通信ネットワーク「プライベート5G」を導入する。どのようなネットワークを構築し、どのような効果を見込んでいるのか。
Thames Freeportは、2021年12月に英国政府から自由貿易港に指定された、英国で最も活発な海運物流拠点の一つだ。テムズ川河口地域の再興を目指す長期的な取り組みの一環として、経済成長の促進、高付加価値な雇用の創出、海外からの投資誘致を目標に掲げている。
Thames Freeportには、港であるPort of Tilburyや物流施設DP World London Gateway、自動車メーカーFordのダゲナム工場が含まれる。Thames Freeportは45億ポンドの新規投資を誘致し、1400人の雇用を創出した。2030年までには5000人規模の雇用を目指しており、地域住民に向けた技能訓練にも力を入れている。
Verizon Businessが提供するプライベート5Gネットワークは、複数の物流、製造、イノベーション拠点にまたがって、複数年にわたる事業変革と経済復興計画を支える技術になる。このネットワークは、港湾や製造業務の変革を目指すもので、高度なデータ活用、人工知能(AI)技術、データをデバイス(エッジ)の近くで処理する「エッジコンピューティング」、モノのインターネット(IoT)といったインフラを導入するための、拡張性のあるネットワークを提供する。
Nokiaは、このプライベート5Gネットワークのハードウェアとソフトウェアを供給する役割を果たす。同社が提供する5G管理用クラウドサービス「Nokia Digital Automation Cloud」(NDAC)と「Nokia MX Industrial Edge」(MXIE)が組み込まれる予定だ。
プライベート5Gネットワークの管理は、Thames Freeportと、テナントである株主企業が担う。これによって、Thames Freeportで事業を展開するテナント企業は、自社のデータを独立管理できるだけではなく、事業運営の自主性を保ったまま、拠点ごとに最適なネットワーク接続環境を構築できる。
優先課題の一つは、AI技術、エッジコンピューティング、IoTといった先進技術を各産業拠点で利用可能にし、Thames Freeportの関係者が新たなアプリケーションで連携できるようにすることだ。例として、産業拠点では、IoTを活用してターミナルトラクター(港湾でコンテナを移動させるためのトラクター)やガントリークレーン(コンテナを積み下ろしするクレーン)の自動運転、貨物のリアルタイム追跡、最適な輸送経路の選択、状態監視などを実現することが考えられる。こうした活用は、テナント企業が貨物の受け入れから数量・状態の確認、出荷までをより迅速かつ効率的に実施し、損傷や紛失による損失を削減する助けになる。
AI技術とエッジコンピューティングを組み合わせれば、環境への影響も管理可能になる。エッジに接続されたスマートセンサーとAI技術による分析機能を用いて、港湾の運営や資産のパフォーマンスを監視・最適化し、排出物、大気質、水質、騒音レベルなどをほぼリアルタイムで把握できるようになる。
プライベート5Gネットワークは、Thames Freeportの複数の主要拠点に導入される。主な導入先は、DP World London Gatewayとそれに隣接するDP World Logistics Parkだ。これらの施設は英国最大級の統合型深海コンテナ港および物流施設で、大規模な鉄道ターミナルや物流センターを備えている。
Thames Freeportの多目的港の中でも、特に規模が大きいPort of Tilburyの2つの拠点にも、プライベート5Gネットワークが導入される。Port of Tilburyは港湾運営企業Forth Portsの配下にあり、建設、自動車、飲食料品分野の物流ハブとして機能している。導入対象の一つであるFordのダゲナム工場は、地域の製造業集積地や部品供給網に近く、同時に最終市場にも近いという立地的な強みを持つ。この強みを生かして、主要な生産拠点としての重要な役割を担う。
Thames FreeportでCEOを務めるマーティン・ホワイトリー氏は次のように述べる。「テナント企業各社のニーズに応えられる高性能なネットワークインフラは、われわれの長期ビジョンに不可欠だ。今回の投資は単なるインフラの更新ではなく、テナント企業と共に港全体の価値を押し上げるという長期的な使命の土台になる」
ホワイトリー氏は、今回のプライベート5Gネットワーク導入によって、テナント企業の業務効率が向上し、Fordや港湾運営会社DP World、Forth Portsなど株主企業の投資収益率(ROI)も改善すると期待を寄せる。官民双方にメリットをもたらす技術革新にもつながる。他にも効率的なエネルギー利用を促す循環型経済モデルの実現や、高付加価値な雇用と訓練を通じた地域社会の発展、医療現場でのリアルタイム診断による公共サービスの変革も目指すという。
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