量子力学を応用してデータを暗号化・復号し、暗号鍵をセキュアに配送する量子鍵配送(QKD)。従来の暗号鍵配送プロトコルとの決定的な違いは、第三者による傍受を察知できるところにある。
量子コンピュータは20年もあれば利用可能になるだろうと漠然と予想され、長い間実用化が期待されている。そして最近の飛躍的な進歩により、以前の予測よりもはるかに早くエンタープライズレベルの量子コンピュータが実現するかもしれない。
量子コンピュータは、その潜在処理能力によって数多くのメリットが見込まれている。同時に、通信の暗号化方法を根本的に変えることも期待されている。
この変化を見越して、米国立標準技術研究所(NIST)は現在、提案を受けた一連のポスト量子暗号(Post-quantum cryptography)アルゴリズムをレビューしている。選定プロセスが完了すれば、このアルゴリズムが公開されるだろう。
「NISTが新しい暗号アルゴリズムを導入するまで、あと5〜7年、あるいはそれ以上かかる可能性がある。それでは遅過ぎる」と話すのは、Quantum XchangeのCEO、ジョン・プリスコ氏だ。
量子鍵配送(QKD:Quantum Key Distribution)は、既存の暗号化アルゴリズムを基盤に構築するのではなく、暗号化したメッセージとは別に量子レベルで鍵を送信する。QKDは現段階ではまだ未成熟な技術だが、最近の進化を踏まえると防御の有効な形態になる可能性がある。
QKDは、送信側と受信側の間で光子などの素粒子を送信することで動作する。素粒子の振る舞いはランダムなので、ランダムデータのストリーム生成に使用すると、暗号鍵を生成する理想的な方法になる。
「鍵を生成すると100万個の光子で構成されるだろう。恐らく、最終的な鍵は10万個程度の光子で構成することになる。第三者が鍵を傍受しても、鍵のコンテンツが一度に全て送信されることはない。光子は一度に1つずつ送信される」(プリスコ氏)
素粒子は複製できない。それが素粒子を利用するメリットになる。素粒子の属性の一部は複製できても、全てを複製することはできない。さらに素粒子の性質を利用すれば、信号の傍受を察知することができる。
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