「量子インターネット」は、従来使われてきたインターネットよりも高速に情報を処理できるネットワークとして期待されている。どのような仕組みなのか。その世界を解説する。
量子力学の特性を利用して情報を処理する「量子コンピュータ」が実現する一方で、今後より期待が寄せられる可能性があるのが「量子インターネット」だ。その定義についてさまざまな理論が検討される中で有力な概念となっているのが、量子情報を処理できるノード(コンピュータ)同士を接続する「量子ネットワーク」を大規模化したものだ。
どのような技術や現象を利用することで量子インターネットができるのか。従来使われてきたインターネットとは何が違うのかを踏まえて解説する。
量子コンピューティングや量子ネットワークは以下の量子力学の現象を利用する。
量子ネットワークは現状、研究室内の限られた距離でしか実現していない。量子インターネットの研究者は、より長距離での量子もつれを実現するための実験や、量子インターネットの仕様を研究している。
従来のインターネットと量子インターネットでは何が変わるのか。
従来のインターネットは、情報をビット(bit)という形で送受信、計算、保存する。ビットはコンピューティングで扱う情報の最小単位であり、情報を0や1で表現する。これによりテキストの文字や画像のピクセル、ビデオのフレームなどのさまざまな情報を表現できる。
一方、量子インターネットでは情報のやりとりに、光子の振動方向(偏光)や電子の自転(スピン)のような、粒子の特性を使った量子ビットを使用する。量子ビットは重ね合わせの性質から、0と1の両方の状態を同時に持つことができるため、複雑な情報処理を可能にする。
量子インターネットでは、エラー訂正や暗号化といった論理演算が、パケット(伝送するデータを小分けにした単位)内の他の量子ビットに影響を与えることなく、個々の量子ビットに対して実施される。従来のインターネットとは異なり、データの一部を変更しても全体には影響しない。
インターネットは、通信プロトコル群「TCP/IP」をベースとして仕様が定まっている。量子インターネットではTCP/IPよりもデータの配信やIPアドレス管理、ルーティング、セキュリティを効果的に実現する仕組みが研究されている。
次回は量子インターネットと現在のインターネットを比較して、通信エリアやセキュリティについて分析する。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
SD-WAN(ソフトウェア定義型WAN)を導入する際はどのような観点で製品を選べばいいのか。メリットやデメリットなど押さえておくべき5つのポイントを紹介する。
ロードバランサーから進化した「ADC」(アプリケーションデリバリーコントローラー)は、負荷分散にとどまらない、さまざまな機能を追加し続けている。充実するADCの機能をおさらいしよう。
ハイブリッドクラウド環境が当たり前となりつつある今、ネットワークの品質を確保することは組織にとって極めて重要な課題だ。本資料では、ハイブリッドクラウド環境のネットワーク監視におけるベストプラクティスを紹介する。
今日の企業における複雑化したITシステム環境においては、ビジネスの安全性や効率性が損なわれている。そこで求められるのがクラウドを活用したインテリジェントな自動化だが、これを実現するには、ネットワークの可視性と制御性が必要だ。
顧客や従業員のエクスペリエンスを向上させるとともに、インベーションを促進するには「アジリティ」の強化が鍵となる。しかし昨今、組織のネットワークは複雑化が著しく、アジリティの確保すら難しい。そこで求められるのが「簡素化」だ。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...