NVIDIAの“言い値”はもう限界?
Microsoft 新AIチップ「Maia 200」の衝撃――GPU枯渇に悩む情シスを救うか
AI需要の爆発によりGPUの価格高騰と調達難が続く中、Microsoftが発表した独自AIチップ「Maia 200」。これは単なる新製品の発表ではない。NVIDIA依存からの脱却、そして企業のAI運用コストを劇的に左右する「ゲームチェンジャー」となる可能性がある。
Microsoftは2026年1月26日(米国時間)、AI(人工知能)アクセラレーター「Maia 200」を発表した。AIアクセラレーターとは、AI関連処理を高速化するために特別に設計されたハードウェアを指す。Maia 200は電力使用量を抑えながら、高速のAI推論処理を可能にするという。業界アナリストは、Maia 200の登場が「AIインフラにおけるドミノ効果を引き起こす可能性がある」と指摘する。どういうことなのか。
Maia 200が引き起こすドミノ効果
併せて読みたいお薦め記事
MicrosoftのAI戦略
AI技術の利用が広がっている中、IT業界では「AI推論の高速化」に注目が集まっている。AI推論とは、訓練済みのLLM(大規模言語モデル)をデータセットに適用し、出力を生成するプロセスを指す。つまり、学習した結果の実行だ。そうした中、NVIDIAは次世代AIプロセッサ「Vera Rubin」を発表し、2026年後半の投入を予定している。
他のAIアクセラレーターとして、Amazon Web Services(AWS)のAI専用チップ「Trainium」シリーズやGoogleの「TPU」(テンソル処理ユニット)もある。Maia 200は性能やコスト効率に関して、これらと比較されることになる。AIアクセラレーターは、一般的なAIモデルを実行するGPU(グラフィックス処理装置)とは異なり、特定のAI処理タスク用に設計されている。
調査会社Informa Tech(Omdiaの名称で事業展開)のアナリスト、マイク・レオン氏によると、Vera RubinとMaia 200は特徴が異なる。Vera Rubinは、クエリ(問い合わせ)に対し非常に複雑な回答が求められるAI推論向けに設計されている。一方で、Maia 200はMicrosoftのさまざまな製品やサービスに組み込まれるAIアシスタントツール「Microsoft Copilot」をはじめ、クエリに対しそれほど深い推論が必要ではないユースケースを想定していると同氏は述べる。
MicrosoftはMaia 200を社内でも使用する予定だ。そのため、「MicrosoftがMaia 200の当面の主要なユーザーになる可能性がある」とレオン氏は述べる。Microsoftは自社システム運用のため、NVIDIAから大量のGPUを仕入れているとみられる。同氏によると、MicrosoftがCopilotの大規模な社内ワークロードをMaia 200に移行すれば、NVIDIAのGPUへの需要が減り、Microsoftのユーザー企業を含めた他社にとって、NVIDIAのGPUが購入しやすくなる可能性がある。
しかし、調査会社Forrester Researchのアナリストを務めるナビーン・チャブラ氏は、NVIDIAのGPUからのMaia 200への移行は簡単ではないと説明する。「両方が必ずしも互換性のあるものではない」(同氏)ため、そのための確認作業が発生する可能性があるという。
Microsoftが同社クラウドサービス「Azure」のインフラを高額なNVIDIAのGPUからより安価なMaia 200に移行すれば、コスト削減につながり、その結果、Azureのユーザー企業も恩恵を受けると指摘する業界アナリストもいる。
さらに、MicrosoftがMaia 200の自社利用を通じてコスト削減の成功事例を示せば、他の企業にとってMaia 200を採用する魅力も高まると考えられる。レオン氏は、「ITリーダーが、経済性を重視してMaia 200を選ぶか、NVIDIAのGPUを採用してクラウドサービス間の柔軟性を維持するかにかかる」と語る。
AIチップ分野におけるNvidiaの支配的地位について、一部の業界専門家の間で懸念が高まっている。Maia 200の登場によって、長期的にNVIDIAの支配が和らげられると考えられる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
4
「IBM iはDXのボトルネック」は誤解 意外と知らない今風モダナイズの効果
-
5
「朝8時にバッチが終わらない」データ爆発の危機をJPX総研はどう乗り越えたか
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
AI導入後に発覚する「社内文書を読めない」問題 情シスは何を直せばいい?
-
8
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
9
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
10
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー