厳格な基準とユーザビリティの両立
「Windows Server」終了で10TBをクラウド移行 ヤマハサウンドシステムの挑戦
「Windows Server 2012 R2」のサポート終了と本社移転が重なり、ヤマハサウンドシステムはファイルサーバのクラウド移行を迫られた。大容量データと厳格なセキュリティ要件の板挟みの中で、どう成功に導いたのか。
企業のITインフラにおいて、ファイルサーバのクラウド移行は避けて通れない課題だ。2023年10月の「Windows Server 2012 R2」のサポート終了は、企業にそうした課題を突き付けたリプレースの決断を迫った。
音響エンジニアリング企業のヤマハサウンドシステムは、Windows Server 2012 R2のサポート終了に加え、本社移転という物理的な環境変化も重なり、オンプレミスサーバの維持管理が限界を迎えつつあった。長期保管が必要な、製品情報や図面などの膨大な業務データが約10T(テラ)Bもあるという問題もあった。
大容量のデータを安全にクラウドストレージに移行する上で、ヤマハサウンドシステムはヤマハグループが定める厳格なセキュリティ基準の壁に直面する。二要素認証やIPアドレス制限といった要件を満たしつつ、多岐にわたるセキュリティチェックを通過しなければならない。同時に、現場からは「これまでと使い勝手を変えたくない」という要求が寄せられた。
費用、セキュリティ要件、現場のユーザビリティという異なる条件を前に、ヤマハサウンドシステムはどのような基準で移行先のクラウドストレージを選定し、全社展開を成功させたのか。
10TB移行を阻む壁をどう乗り越えたのか
併せて読みたいお薦め記事
ストレージ運用の課題
ヤマハサウンドシステムは、ダイレクトクラウドが提供する法人向けクラウドストレージ「DirectCloud」を採用し、約10TBのファイルサーバをクラウドストレージに移行した。2026年8月28日、ダイレクトクラウドが発表した。オンプレミスサーバの保守管理負担を軽減するとともに、アクセス権やログ管理の統制強化を図る。
ヤマハサウンドシステムは、劇場やホール、スタジアムなどの音響システムについて、企画や設計から施工、保守までを一貫して手掛ける音響エンジニアリング企業だ。同社では工事に関する製品情報や図面、写真データなどを長期保管する必要があり、運用していたファイルサーバのデータ容量は約10TBに達していた。そうした中、運用していたWindows Server 2012 R2のサポート終了と東京から横浜への本社移転が重なり、移転先でのサーバ室確保の不確定さやオンプレミスサーバの維持管理が課題となっていた。
そこでヤマハサウンドシステムは、他社クラウドストレージを含む3サービスを比較検討し、DirectCloudの採用を決めた。選定に当たっては、二要素認証やIPアドレス制限といったヤマハグループのセキュリティ基準を満たせる点や、問い合わせに対する迅速なサポート体制を評価した。「DirectCloud ドライブ」によって従来のファイルエクスプローラーと同様の操作感を維持できる点、エンドユーザー数に依存しない料金体系と約10TBのデータ容量に対する費用対効果の高さも決め手となった。
データ移行は外部業者の支援を受けながら夏季休暇期間を利用して実施し、優先度の高いデータから順次移行を進めた。従来のファイルサーバで設定されていた役職や部門単位の細かなアクセス権をそのまま再現した他、自社向けのマニュアルを作成して配布することで、休暇明けから全社で円滑に利用を開始できた。2026年8月時点では233ユーザーが利用している。
DirectCloudへの移行によって、ヤマハサウンドシステムは実機の維持管理やサーバ更改に伴う設備投資の負担から解放された。運用面では、フォルダごとの細かなアクセス権設定が即時に反映されるようになった他、管理者画面からアクセスログを詳細に追跡できるようになり、ファイル操作履歴の把握や統制が容易になっている。
今後は、社内に分散しているファイル保管場所の集約を進める。現場業務が多くmテレワーク率が高い技術系従業員に向けて、複合機でスキャンしたデータを社外からDirectCloudで受け取れる連携機能の活用も検討している。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「ヤマハサウンドシステム、約10TBのファイルサーバーをクラウド移行 管理負荷を軽減」(2026年8月30日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
7
AI時代のITインフラ戦略とは? 販売代理店が知っておきたい最新トレンド
-
8
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
9
人間のせいでAIエージェントの生産性が上がらない
-
10
「IBM i(AS/400)はクローズドなシステム」という誤解 DXに寄与する一歩
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー