なぜ社内AIプロジェクトは停滞するのか
9割が頓挫する「AI内製化」 差がついたのはツールより設計力
AI技術の急速な進展に伴い、競合との差に危機感を抱く企業が増加している。しかし全社展開を進める企業でも、9割以上が頓挫という壁に直面している。成功を拒む決定的な要因とは何か。
企業におけるAI活用は、実証実験の段階を過ぎ、本格的な全社展開や内製化のフェーズに入りつつある。しかし、競合との差に危機感を抱きながらも、社内主導のプロジェクトが期待した成果に至らず行き詰まる企業が後を絶たない。
エンジニア向け人材サービスを手掛けるTWOSTONE&Sonsは2026年8月10日から12日にかけて、従業員300人以上の企業で全社的にAI推進に取り組む経営層および推進責任者111人を対象に調査を実施した。その結果によると、9割以上がプロジェクトの停滞や頓挫を経験している。調査結果の数値を分析すると、現場が直面しているのは技術的なハードルではなく、より上流の業務設計にある実態が浮かび上がった。企業は具体的にどの工程でつまずき、何を課題としているのか。
危機感と全社展開への移行
AI技術の進化が加速する中、企業の危機感は強い。調査対象者の94.6%が、競合他社や業界全体の動きと比較して自社のAI活用に危機感を抱いている。その理由として「競合他社にAI活用で後れを取ること」(69.5%)、「業界全体の変化に自社が適応できないこと」(62.9%)、「AI人材、デジタル人材を確保できないこと」(61.9%)が上位に挙がった。
実際のプロジェクト展開状況を見ると、「全社的に活用、運用している段階」(24.3%)や「複数部署/業務に展開している段階」(22.5%)とする企業が目立ち、特定の部門に閉じたPoC(概念実証)のフェーズから、実業務への適用段階に移行している企業が一定数存在することが読み取れる。
表面化するプロジェクトの停滞と頓挫
しかし、内製化を進める過程で多くの企業が壁に直面している。社内主導で進めたAIプロジェクトが途中で停滞、あるいは頓挫した経験があるかという問いに対し、「何度もある」(31.5%)、「数回ある」(55.9%)、「一度だけある」(4.5%)と回答した割合の合計は91.9%に達した。ほとんどの企業が何らかの挫折を経験している現状が浮き彫りになった。
停滞によって企業が被る影響は軽微ではない。「プロジェクトや投資が縮小、凍結された」(56.9%)、「本格導入や全社展開の時期が遅れた」(55.9%)といった直接的な事業遅延が発生している。さらに「現場でAI活用への不信感や抵抗感が高まった」(53.9%)という組織文化に対する負の遺産も生じている。一度失われた現場の信頼を取り戻すには、多大な工数と時間を要する。
技術ではなく「上流設計」というボトルネック
プロジェクトが頓挫する最大の要因はどこにあるのか。調査結果から浮かび上がるのは、ツールや技術の選定以前の「上流工程」における構造的な課題だ。
社内主導のプロジェクトで特に行き詰まりを感じやすい段階として「AI活用の目的、テーマを決める段階」が57.7%で最多となった。プロジェクトを進める前には十分に認識できていなかったものの、実際には重要だったと感じた項目として「AI活用の戦略、構想の設計」(58.6%)が「AIに関する技術、ツールの選定」(37.8%)を大きく上回っている。
プロジェクトが頓挫した背景として不足していたものには「経営課題、業務課題をAI活用につなげる力」(58.8%)が最も多く挙げられた。AIツールやインフラを導入するだけでは業務効率化は実現しない。自社の経営課題を精緻に分解し、どの業務プロセスにAIツールを適用すれば効果が出るのかという、論理的な設計力が欠落していることが失敗の核心だ。
今後の内製化に向けた推進体制の再構築
現在または今後、自社の人材や体制だけでの対処が難しい領域についても「AI戦略、活用構想の設計」(58.6%)が首位となっている。その理由として「経営、事業、業務とAI技術の両方を理解できる人材がいないから」(53.6%)、「複数部門を横断して推進、調整する体制がないから」(45.5%)が上位を占めた。
従来のアプローチでは、IT部門が単独で技術主導の導入を進めるか、あるいは外部ベンダーに要件定義の段階から任せる手法が主流だった。しかしAI活用においては、業務プロセスに対する深い理解と技術的な知見の融合が不可欠となる。
今後の展望として、企業は自社に不足している機能を客観的に把握し、推進体制を再構築する必要がある。ビジネスの知識を持つ内部人材を育成しつつ、戦略策定や構想設計といった難易度の高い領域においては、専門的な知見を持つ外部人材を適切に利用することが合理的な判断だと言える。経営と現場、技術をつなぐ体制の構築こそが、AI内製化の停滞を打破する要だ。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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