毎朝の処理遅延エラーから解放
データ増でインフラ費用爆発 オンワードデジタルラボが維持費を半減させた手法
データ量増加に伴う処理遅延や維持費の高騰は、既存システムの維持費高騰や運用破綻を招く。安易なインフラ増強が許されない中、オンワードデジタルラボはどのようにして運用費用を半減させたのか。
ビジネスの成長に伴ってデータ量が急増すると、既存アーキテクチャでは大量のデータを処理し切れなくなるケースがある。オンワードグループのデジタル事業を担うオンワードデジタルラボでは、2021年から運用する顧客データ基盤(CDP)が悲鳴を上げていた。データ量の増加によって朝9時までに必要な売り上げレポートの処理遅延や、システムエラーが頻発する状態に陥っていたのだ。データ抽出にはSQLの知識が求められるため、特定のメンバーに業務が集中する属人化も問題だった。処理能力の不足を解消するために、契約プランを変更してシステムを増強すれば、売り上げを上回るインフラ費用が発生する懸念があった。エラーの復旧作業に追われて、運用現場の手間が増大するリスクも見過ごせない。
既存契約の更新を機に、どのような基準で新たなアーキテクチャを選定すべきか。オンワードデジタルラボは次期システムとして、高い処理性能と自由度が高い従量課金を備えるクラウドDWH(データウェアハウス)「Snowflake」を中核とし、必要な機能を組み合わせる「コンポーザブルCDP」に刷新することを決断した。
売り上げ成長を上回る「インフラ費用の爆発」というジレンマ
オンワードグループのデジタル事業を担うオンワードデジタルラボは、CDPをクラウドDWHのSnowflakeを中核とするコンポーザブルCDPに刷新した。構築はprimeNumberが支援した。処理遅延が解消し、運用コストは従来の約半分になった。新基盤の稼働から約1カ月の時点で、重大なシステムエラーは発生していない。10月9日、primeNumberが発表した。
オンワードデジタルラボは、ファッションを中心にウェルネス事業まで広げるオンワードグループで、ECシステムの管理、デジタルマーケティング、グループを横断した顧客基盤の運営を担う。2021年から運用してきたCDPは、データ量の増加で、大量のデータを処理し切れなくなった。契約プランを変えれば増強はできたが、費用が一気に上がり、売り上げの伸びを超えてインフラコストが増える構造だった。朝9時までに必要な売り上げレポートの処理が詰まり、復旧作業に追われる状態で、年間で数多くのエラーも起きていた。データの抽出にはSQLの知識が要り、社内でSQLクエリを書けるメンバーが少ないため、各ブランドからの依頼が特定のメンバーに集中していた。
既存システムの契約更新を機に、primeNumberと次期システムの構築を始めた。社内公募で、自ら課題を解決したいと志願したメンバーが、プロジェクトを担った。primeNumberを知ったきっかけは、同業のアパレル企業が、クラウドETL(抽出、変換、格納)ツール「TROCCO」を使っている事例記事を見たことだ。まず、提案依頼書(RFP)の作成の支援を頼むベンダーの選定に参加してもらい、短い期間で質の高い提案が出たことが印象に残った。本番の構築コンペで、あらためて声をかけた。提案書は100ページを超え、課題への理解の深さがそのまま形になっていた。解像度の高い提案と、レスポンスの速さが、決め手になった。AI活用を含む技術の裏側まで、包み隠さず提案した点も評価した。
Snowflakeを選んだのは、パフォーマンスの高さ、自由度が高い従量課金、特定のベンダーに依存しない拡張性が、利用実態に合っていたためだ。構成は、必要に応じて組み合わせるコンポーザブルCDPを採用して、データの収集にTROCCO、メタデータの管理にAI搭載のメタデータ管理ツール「COMETA」を使う。データやパイプラインの構造をAIが読み取れる、「AI-Ready」なシステムを重視した。移行では、CDPを止めず、日常業務やマーケティング施策を続けながら、新システムの開発とデータ移行を並行した。旧システムの構築時から支援してきた会社も加え、3社が毎週の定例ミーティングで、バックログを共有した。
運用コストは、従量課金への切り替えと、利用実態に合わせた構成の最適化で、従来の約半分になった。処理の性能も上がっている。新システムの稼働から約1カ月の時点で、重大なシステムエラーは1件もない。構造が把握しやすいため、エラーの原因の切り分けも速くなった。設計と開発に自社のメンバーが深く関わり、チーム全体のデータへの理解と技術力が上がって、運用を内製化する土台もできた。
オンワードデジタルラボ イノベーショングループの髙橋秀樹氏は「今回CDPを移行して一番良かったことは、会社のデータ管理システムのことを知る人間ができたこと」だと話す。今後は、グループ横断で顧客IDの一元化を目指す。従来は会員IDが分断され、食品やギフト、コスメ、ペット用品などの事業間で、シナジーを生めていなかった。ブランド側にもデータを扱える人材を育て、全従業員が自然言語などで、必要なデータを取り出せる体制を目指す。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「オンワードデジタルラボ、顧客データ基盤を刷新 運用コストが約半分に」(2026年10月13日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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