手袋の発注、配布作業をほぼ不要に
管理工数を約80%削減 ジェイテクトが「手袋」の配布をやめた理由
ジェイテクトは、自社工場で使用する保護手袋の、月1度の集計・注文・配布作業を自販機での配布に切り替えた。同社が抱えていた課題や運用方法定着のプロセスを紹介する。
自動車部品や工作機械などを手掛けるジェイテクトは、同社亀山工場にミスミグループ本社の間接材トータルコストダウンサービス「MISUMI floow」を導入した。手袋を管理担当者が各職場へ配る運用から、従業員が自販機から必要な分を取り出す運用へ変更した。
その結果、手袋の管理工数を約80%削減したほか、使用状況の可視化によって従業員の意識が変わり、手袋の使用量も約20%削減した。ジェイテクトは今後、工具やセンサー類など、手袋以外の備品への展開も検討する。同社はなぜ運用方法を変えたのか。
「探す・配る・抱える」無駄をなくした取り組み
ジェイテクト亀山工場は、軸受関連製品を中心に製造する拠点だ。研磨、組み立て、品質検査、設備保全、包装・出荷などの各工程で、作業内容に応じた手袋を使用している。
従来は月1回、管理担当者が各課にメールを送り、必要な手袋の種類やサイズ、数量を確認していた。回答を集計した後、メーカーへまとめて注文し、納品された手袋を各課や個人へ配布する流れだった。
しかし、現場からの回答が締め日までに届かず、再度連絡することがあった。新しく入った従業員の分が集計から漏れたり、数量の計算や種類を間違えたりする可能性もあった。
特に対応を難しくしていたのが、人員の増減や配置換えだ。派遣社員を含めて人員が入れ替わるたびに、必要な手袋の種類やサイズ、数量も変わる。新しく働き始めた人が手袋を試した結果、サイズが合わなければ、次回の注文から変更する必要があった。
手袋が届くまで時間がかかるため、現場では欠品に備えて工場内のさまざまな場所に予備を保管していた。見込みで多めに注文した結果、想定ほど使われず、在庫が長期間残ることもあったという。
自販機で「必要な人が必要な分だけ取り出す」
こうした管理作業と在庫を減らす手段として候補に挙がったのがMISUMI floowだった。手袋などの間接材を自動販売機(以下、自販機)に収納し、従業員が必要なタイミングで取り出せる仕組みだ。
ジェイテクトはMISUMI floowの導入前に、既に同サービスを利用している他社工場を見学した。自販機を現場に設置した際の操作方法や運用を確認するとともに、従来使用していた手袋をミスミグループ本社の相当品に置き換えられるかどうかも検証した。
製造現場では、使い慣れた手袋から別製品への変更が作業性や品質に影響する可能性がある。そのため、サンプルを使用し、装着感や使いやすさを確認したのだ。ただし、全ての手袋を置き換えたわけではない。特殊な用途で相当品が見つからないものや、コスト面で切り替えが難しいものについては、従来品を継続して自販機に収納した。
導入の決め手となったのは、亀山工場側が手袋の在庫を抱えずに済むことと、従業員が必要な時に必要な分を取り出せる点だ。月1回まとめて配布する必要がなくなれば、各課や個人が余分な在庫を持つ必要もなくなる。
管理工数を約80%、手袋使用量を約20%削減
MISUMI floowの導入後、管理担当者が各課に必要数を確認し、回答を集計して発注、配布する作業はほぼ不要になった。ジェイテクトによると、手袋に関する管理工数は導入前と比べて約80%減少した。
利用者本人が自販機から必要な種類とサイズを取り出すため、管理担当者による種類や数量の間違い、手配漏れも防ぎやすくなった。
現場では、人員変更への対応も容易になった。月の途中で人員が増えた場合でも、自販機に在庫があれば、新しい従業員に合った手袋をすぐに渡せる。サイズを変更する際も、翌月の配布まで待つ必要がない。
想定を上回ったのが、手袋使用量の削減効果だった。導入後の使用量は従来と比べて約20%減った。
従来の配布方式では、必要量を正確に把握しにくく、欠品を避けるため多めに渡すことがあった。自販機方式では、各従業員が必要になった時に取り出すため、必要以上に手元へ保管する行動が減った。
さらに、MISUMI floowから送られる日報を通じて、手袋の使用状況を確認できるようになった。誰がどの製品をどの程度使用したかを把握できるようになり、従業員にも「必要な分だけ取り出す」という意識が生まれたという。
効果をサイネージで伝え、現場の意識をそろえる
ジェイテクトは、自販機を設置するだけでなく、導入した目的や効果を現場に伝える取り組みも進めた。
自販機の操作画面に備わるデジタルサイネージを活用し、管理工数や使用量、在庫の削減効果を表示している。従業員が、なぜ新しい仕組みを導入したのかを理解できるようにする狙いがある。
新しいシステムを導入しても、利用者が目的を理解していなければ、従来と同じ感覚で備品を取り出し、期待した効果が得られない可能性がある。利用実績を現場に共有したことが、使用量の削減や運用ルールの定着を後押ししたとみられる。
導入前には、利用者が認証や操作に戸惑わないか、自販機から誤った製品を取り出さないかといった懸念もあった。実際には顔認証を利用でき、スマートフォンと似た感覚で操作できたため、現場にも比較的受け入れられやすかったという。
工具やセンサー類への展開も検討
ジェイテクト亀山工場は今後、手袋以外の貯蔵品にもMISUMI floowの対象を広げる考えだ。候補に挙がっているのが、加工に使うチップや、設備で使用する近接スイッチなどだ。
ただし、対象品目を増やせばよいわけではない。例えば同じ種類の部品が、自販機と現場の保管場所に分散すると、従業員がどこへ取りに行けばよいか迷う可能性がある。
ジェイテクトは、同じ用途の部品を可能な限り自販機へ集約し、「必要なものはまず自販機を確認する」という分かりやすい運用にする必要があるとみている。
間接材の管理を効率化するには、購入価格だけでなく、必要数の確認、発注、配布、在庫管理、備品を探す時間まで含めて考える必要がある。ジェイテクトの事例は、小さな消耗品の管理方法を変えることが、管理部門と製造現場の双方の負担軽減につながることを示している。
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