全行員6.7万人のリスキリングと組織変革
生成AIで210億円の価値創出へ 英ロイズが踏み出す4000億円コスト削減とAI武装の全容
英ロイズ銀行は2030年までに全顧客対応をAI化する。全行員6.7万人をリスキリングし、エージェント型AIの導入で4000億円規模のコスト削減を狙う。AI主導型組織へ変貌を遂げる金融大手の生存戦略を解剖する。
英金融大手のロイズ・バンキング・グループ(Lloyds Banking Group)は、2030年までに全ての顧客対応にAIを導入する方針を明らかにした。同グループはAIの活用により、1億ポンド(約210億円)の価値創出を目指している。
この発表は、2026年上半期の決算報告を受けてチャーリー・ナンCEO(最高経営責任者)が同グループの「Accelerate 2030」戦略の概要を説明した際に行われた。同戦略の一環として、AI技術を主要な手段に据え、今後4年間でさらに20億ポンドのコスト削減を狙う。過去4年間でも同額のコスト削減を実施しており、これが23%の増益に寄与した。2026年上半期の利益は42億ポンドに達している。
2026年にはAIから1億ポンド以上の価値を創出
2026年上半期の決算報告後、ナン氏は次のように述べた。「グループの全部門が、AIを活用した明確な戦略を持っている。これにより、サービスの差異化、成長、生産性向上の能力をさらに強化できる。2030年までには、AIを活用したツールが全ての顧客対応と全ての従業員をサポートするようになると予測している」
AIの活用は単純なカスタマーサポートの枠を超えつつある。同グループは、子会社スコティッシュ・ウィドウズ(Scottish Widows)のアプリ内ですでにAI投資アドバイスプラットフォームを提供しており、これをリテール銀行向けアプリにも拡張予定だ。顧客ごとに最適化されたアドバイスを提供することで新たに100万人の小規模投資家の獲得を目指す。
現在、AI投資の半分は生産性、効率性、リスク管理の改善に充てられており、残りの半分は収益拡大に向けられている。
ナン氏は、「2026年には生成AIとエージェンティックAI(自律型AIエージェント)から1億ポンド以上の価値を生み出す見込みだ。Accelerate 2030の推進により、収益成長と効率化で大きな恩恵が得られる。当社はこの変化の最前線に立ち続ける。規模の優位性と現在の立ち位置を考えれば、価値を実現する準備は整っている」と語った。
またロイズは、AIと共働するための適切なスキルを従業員に習得させる計画だ。ナン氏は「次の段階では、継続的なスキルアップと的を絞った採用により、社内の専門知識をさらに蓄積していく」と説明している。
同グループは2026年1月、全従業員6万7000人を対象にAIの活用方法をトレーニングする計画を発表した。独自の教育機関「AIアカデミー」を通じて、2026年末までに全スタッフがAIリテラシーを習得することを目指している。
エージェンティックAIに関連する300の職位は、既存の従業員と外部採用の両方で構成される。これにはデータサイエンティスト、AIサイエンティスト、エンジニア、責任あるAI(Responsible AI)の専門家、AI製品マネジャーなどが含まれる。
AIに対応するためのリスキリング(スキルの再習得)は銀行業界で重要だ。銀行業界のベンチマーク企業エビデント(Evident)が2025年に発表したレポートによると、金融機関がAI主導の変革を容赦なく進める中、AI関連の職種が銀行部門で唯一の“安全な仕事”になる可能性があるという。同レポートは、大手銀行10行が採用した従業員の50人に1人が、現在はAI関連の職務に就いていると指摘している。
同グループが実施した2025年版の金融機関意識調査によれば、銀行はAIから多大な恩恵を受けている。過去12カ月間にAIによる生産性向上を報告した企業は59%に上り、2024年調査の32%から大幅に増加した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「改正物流効率化法対策」徹底解説 総物流費を抑制するサプライチェーン戦略 -
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「サプライチェーン最適化」実践ガイド:効果的な意思決定を実現する秘訣とは? -
製品資料
[株式会社リンプレス] 非デジタル/IT人材を「自走するDX推進者」に変えるための育成ロードマップ -
市場調査・トレンド
[ワンアイルコンサルティング株式会社] AI時代の組織設計:「判断と責任」を人に残すための2つの原則とは? -
技術文書・技術解説
[ワンアイルコンサルティング株式会社] システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
AIが本番環境を削除し復旧に13時間 「暴走」ではなかったAWS事例
-
2
IT人材の42%が転職予備軍 辞めさせない組織の4つの共通
-
3
「プログラマー不要論」にThe Linux Foundationが示した答え
-
4
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
-
5
Microsoft 365の知られざる5つの裏口 パスワードを変えても攻撃者は消えない
-
6
SAP保守を分割・離脱も可能に EU承認で変わるECCユーザーの2027年問題
-
7
アラート47%削減 オープンハウスが捨てた「全部メール通知」の監視体制
-
8
「AIバブル」は崩壊するのか? 熱狂の後に来る“尻拭い”と4つの防衛策
-
9
ニトリHDが基幹システムをOCI移行 DR切り替えを12時間から3時間に短縮
-
10
高額GPUを買っても成果ゼロ? 「プライベートAI」の落とし穴
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
2
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
3
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
6
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
7
「人員を増やす」という選択肢はない 情シスが負の連鎖から抜け出すには?
-
8
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
9
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
10
「問題が深刻化しやすいプロジェクト管理」から脱却する方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー