熟練者の知識をAIで構造化
日立が放つ「生成AI×数理最適化」の威力 生産ライン設計の自動化で工数87%削減
日立が生成AIと数理最適化を連携させ、生産ライン構成の自動立案技術を開発した。熟練者の知識に頼っていた工程設計を構造化し、工数を最大87.3%削減。現場の要請を定量的な構成案へ即座に変換する新手法を解剖する。
「明日から生産量を20%増やしてくれ」。現場から降ってくる唐突な要請に、熟練者の経験と勘に頼り切った調整で何とか急場をしのぐ――。そんな製造現場の危うい綱渡りに、日立製作所が終止符を打とうとしている。
同社が開発したのは、生成AIと数理最適化を組み合わせ、生産ラインの構成を自動で立案する新技術だ。熟練者が数日かけていた検討をわずかな時間で完了させ、工数を87%も削減するという。その鍵は、バラバラに点在する現場の「言葉」を、AIがシステム的な「数値」へと翻訳する仕組みにある。
熟練者頼みの工程設計を自動化、工数87.3%削減を実証
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日立製作所とハンガリーの研究機関HUN-REN Institute for Computer Science and Control(SZTAKI)は2026年8月4日、需要変動や人員不足に応じて生産ラインの構成案を自動で立案する技術を開発したと発表した。生成AIと数理最適化技術を連携させることで、現場の要請から具体的な設備割り付けまでを一貫して自動化する。
バッテリー製造ラインを用いた検証では、熟練者と同等の立案品質を維持しつつ、業務工数を手作業と比べて最大87.3%削減できることを確認したという。同技術により、従来は特定の担当者の知識に依存していた工程分割や設備の見直し業務が、データに基づいた迅速な意思決定へと置き換わる。
「現場の要望」を「最適化パラメーター」へAIが3段階翻訳
製造現場では、急な需要変動や設備故障への対応が日常茶飯事となっている。しかし、最適なライン構成を導き出すには、現場の生産技術についての知識と、数理最適化モデルを構築する専門知識の両方が必要だ。これらの知見を横断的に持つ熟練者は限られており、関連データも部署やシステムごとに分散しているため、変化に応じた迅速な見直しが困難だった。
開発された技術は、生成AIに「翻訳者」としての役割を担わせることでこの課題を解決した。具体的には、生成AIの処理を「運用・改修方針の決定」「パラメーター項目の決定」「パラメーター値の決定」という3段階に分割。これにより、「生産量を20%増やしたい」といった自然言語での要請を、数理最適化モデルが処理できる定量的データへと変換している。
分散した製造知識を「階層型ナレッジ」で構造化
情報の分散による検討時間の長期化を防ぐため、日立とSZTAKIは「階層型ナレッジ参照技術」を導入。これまで部署ごとにバラバラに管理されていた製造知識を集約し、生成AIが各段階で必要な情報を効率的に引き出せる形式に構造化した。
また、新技術には作業者や設備の違いがコストや作業量に与える影響も組み込まれている。これにより、単に生産可能な案を出すだけでなく、労務費や設備費などのコスト、および生産性から見て複数の案を比較できるようになった。現場の担当者は、提示された各案の選定理由を定量的に確認できるため、上位層への提案や意思決定をスムーズに進められる。
日立は今後、自社工場や顧客とのPoC(概念実証)を通じて、バッテリー、自動車、産業機械など幅広い分野への展開を目指す。同技術は、同社が掲げる社会インフラ向けの知能基盤モデル「IWIM(Integrated World Infrastructure Model)」を構成する業務特化型AIモデルの1つとして位置付ける。なお、本成果の一部は2026年8月に国際的な学術誌「Procedia CIRP」に掲載される。
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