オンワードHDの“コミュニケーション崩壊”を救った「Backlog」活用術「言った・言わない」問題からの脱却

中国の大連工場のシステム刷新において、多国籍メンバー間のメール連絡による情報分散が課題となっていたオンワードHD。1拠点に導入した「Backlog」が、全社システムになるまで定着した背景とは。

2026年08月18日 05時00分 公開
[TechTargetジャパン]

 アパレル会社の持株会社であるオンワードホールディングス(以下、オンワードHD)は、グループ事業会社が展開する新ブランド「KASHIYAMA」立ち上げに伴い、プロジェクト管理ツール「Backlog」を導入した。

 新ブランドは、注文から最短1週間で顧客にオーダースーツを届けることを目標に掲げていた。この迅速な生産体制を実現するため、オンワードHDは従来の紙ベースの受注管理から脱却し、中国の大連にある工場の生産管理システムを刷新する「スマートファクトリー化プロジェクト」を始動させた。

 しかし、スマートファクトリー化プロジェクトには建設会社、ITベンダー、コンサルタント、現地の工場スタッフなど、多様な国籍と職種のメンバーが関与していた。そのため、従来のメール中心の連絡手法では情報が各所に分散してしまい、「誰がどの事項を確認したのか」「どの情報が最新なのか」が不透明になるという深刻な課題に直面していたのである。

 この状況を打破し、進行管理を一元化する仕組みとして採用したのがプロジェクト管理ツール「Backlog」だ。同ツールは工場DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進ツールとして成果を上げ、2026年7月時点ではグループ会社や社外のパートナー企業を含め、約800ユーザーが日常的に利用する巨大な情報共有システムとして定着している。

 1拠点のシステム刷新プロジェクトで採用されたツールが、なぜ全社横断の共通ツールとして定着したのか。その成功の裏には、属人化を排除する徹底した情報集約と、大規模運用に耐え得るセキュリティ統制の仕組みが存在した。

「言った・言わない」を防ぐ情報の一元化とノウハウの蓄積

 大連工場のプロジェクトにおいて、オンワードHDは徹底した情報集約を実施した。決定事項はもちろん、それに至るまでの課題ややりとりの経緯、プロジェクトの運用ポリシーもドキュメントとしてシステム上に記録した。

 プロジェクトでは、社内のメンバーだけではなく、外部の関係者もBacklogにアクセスし、同一の状況を確認できる体制を構築した。システムで担当者を指定し、メンション機能を活用して連絡することで、「誰が何を担うか」を可視化した。これによって、担当者不在による課題の放置や、口頭連絡による「言った・言わない」といった意思疎通のトラブル、知識の属人化を防ぐ管理からの脱却を果たしたという。

 この情報共有の仕組みがモデルケースとなり、約800ユーザーが同じ情報を参照しながら業務を進める土台が完成した。

ガントチャートの活用による遠隔プロジェクトの推進

 国境を越えたプロジェクト推進において、進捗(しんちょく)状況の可視化も重要なテーマだった。Backlogは、登録・変更した課題が自動的にガントチャートと連動する機能を搭載している。これによって、プロジェクトのスケジュールが常に最新の状態で可視化されるようになった。担当者別やマイルストーン別など、任意の条件で絞り込んだガントチャートを出力し、共有可能だ。日本と中国という遠隔地同士であっても、双方が同じ画面を確認しながら進捗を追跡できるようになった。

 以前の体制では、意思疎通の食い違いを防ぐために「直接現地に行った方が早い」と判断されがちだった確認作業も、オンラインで正確に進められるようになった。結果として、海外出張にかかる費用や移動の手間を削減する成果も生み出している。

800人規模の運用を支えるアクセス制御と監査ログ

 Backlogの利用者が拡大し、約800人規模の運用体制となる中で、情報漏えい対策とアカウント管理の強化が急務となった。オンワードHDはセキュリティを確保するため、専用のセキュリティとアカウント管理サービス「Nulab Pass」を併せて導入した。この仕組みによって、会社が管理する端末およびアカウントからのみシステムへのアクセスを許可している。監査ログ機能を用いることで、「誰が、いつ、何をしたか」を追跡できる状態を整え、厳密なセキュリティ統制を実現している。

「対話の土台」としての価値とAI活用の展望

 オンワードHDの担当者は、導入した仕組みを単なるタスク管理ツールではなく、「コミュニケーションツール」であり「対話の土台」だと位置付けている。「誰が何を担当し、どこで止まっているのか、決まったことややりとりの経緯が1カ所に残り、関係者全員が同じものを見ながら話せる」と評価しており、「ないと仕事が回らない状態」にまで深く浸透している。

 今後の展開として、オンワードHDは「Backlog AIアシスタント」の活用を視野に入れている。蓄積された膨大な課題やドキュメントの検索、過去の議論の経緯の整理などを自動化し、知見の再利用を促す考えだ。これによって、新たにプロジェクトへ参画するメンバーのオンボーディングにかかる人手や時間の負担を軽減することが期待されている。過去の記録を確認するだけではなく、現在の状況を踏まえて次に取るべきアクションを検討できる高度な活用への発展を見据えている。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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