開発現場で培ったAI活用ノウハウをいかに全社や顧客サービスへ広げるか。英デジタル銀行の副CIOが、日常業務を「スキル化」してスケールさせる実践知と、急速に進化するAIの目利き基準を明かした。
オンライン専業のデジタルバンク(チャレンジャーバンク)である英Starling Bankは、同行のチャットボット「Starling Assistant」にAIを活用した「スキル」を追加した。これはテクノロジー分野の進展や、社内のソフトウェア開発チームがコーディング支援にAIを活用してきた手法に着想を得たものだ。
同行は顧客からのフィードバックに基づき、こうした「スマートツール」を定期的に追加していく計画を立てている。Starling Bankで副CIO(最高情報責任者)を務めるフレデリック・ローラン氏は、今回の開発を顧客向けAIツールの取り組みの集大成と捉えている。同氏は「過去18カ月間に実施してきた顧客向けAI開発の成果で、AI業界全体が技術的な観点から発展させてきた道筋をたどる取り組みでもある」と語る。
AI技術が進化し、AI業界がその活用法を見いだす中で、Starling Bankは技術の進歩が同行と顧客の双方に利益をもたらすよう努めてきたとローラン氏は説明する。
「われわれは、LLM(大規模言語モデル)に基づく自然言語処理を利用した支出分析ツール『Spending Insights』から開発を始めた。その後、AI開発企業がマルチモーダル機能を追加したため、写真を取り込んで詐欺に関連する要素の有無を判定できる不正検知機能『Scam Intelligence』を作成した。さらに推論機能が追加されたことでStarling Assistantを開発した。現在、業界は『スキル』という概念に集約されつつあるようだ。これは、手順をコード化することで、AIモデルに一連のタスクの実行方法を指示する仕組みのことだ」(ローラン氏)
ローラン氏によると、スマートツールのプロジェクトは社内のソフトウェア開発におけるAIの活用法から着想を得たという。「エンジニアがコーディングエージェントを最大限に活用できるよう、コードベースに対する理解をスキル化することが有効だと気付いた。このスキルとは、エンジニアが日常的に行う特定の作業を指す」(同氏)
日常的なタスクをスキル化すれば、反復的な作業を横展開できる。ローラン氏と開発チームは、この手法がソフトウェア開発以外の領域にも応用可能だと判断した。同氏は次のように述べる。「当社はエンジニアの利便性のためにAIを導入し、非エンジニア部門のスタッフのためにAIを導入し、顧客の利便性のためにAIを導入してきた。ある領域で効果を発揮する施策が見つかるたびに、私の職務として、他に適用できる業務がないかをチームとともに検討している」
スマートツールを用いた最新の開発についてローラン氏は次のように語る。「当社は、顧客が直面する日常的な課題にAIを適用している。例えば、翌日から大学に通い始める顧客が、手元の収入や借り入れたローン、支出に基づいて予算を立てる必要がある場合などが該当する」
ローラン氏は2019年からStarling Bankに勤務しており、副CIOとしての担当分野にはAI、機械学習、データが含まれる。同氏によると、AI技術の発展のペースに追随することは「チーム全体で取り組むべき活動」だという。
「個人的には、多数のニュースレターやポッドキャストをチェックしている。常に最新の情報を把握するために情報源を追い続ける作業は膨大だ」(ローラン氏)
どのようなAI技術の革新を採用し、どれを見送るかをどのように判断しているのかという問いに、同氏は次のように答えた。「目にとまった情報をチームと共有している。リードデータサイエンティストが非常に有用だと判断することもあれば、逆に『フレッド、それは的外れだ』『役に立たない』と指摘されることもある」
他のAI技術の革新については、Starling Bankですぐに利用できる用途がない場合でも、将来的により適した用途が見つかる可能性がある。
ローラン氏は、全ての企業がAI開発企業が生み出すイノベーションの中から、注力すべき領域を見極める必要があると考えている。同氏は「逃してしまった機会もあるかもしれないが、2019年に機械学習やディープラーニングの分野へ参入したことを含め、これまで下してきた決断には非常に満足しており、誇りに思っている」と語る。
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