ヴイエムウェア vs. レッドハット
【徹底比較】2大Open Paas、Cloud FoundryとOpenShiftの強み/弱み
Cloud FoundryとOpenShiftはプロダクト展開がかなり似通っている。両者の強みと弱みを考えるには、ヴイエムウェアとレッドハット両社の強みと弱みを第一に考えなくてはならない。
特定のベンダーに依存せず、幅広い言語・フレームワークへの対応が魅力のOpen PaaS(関連記事:オープンソースのPaaSはなぜ注目されるのか ~Open PaaSの魅力と課題)。
2011年にはヴイエムウェアの「Cloud Foundry」がオープンソースとして公開され、複数のベンダーがCloud Foundryとの連携を発表した。また、2011年にレッドハットが発表した「OpenShift」も当初からオープンソース化を目指しており、2012年4月末にソースを公開した。
本稿では、Open PaaSの代表としてCloud FoundryとOpenShiftを比較する。両者の詳細な機能や仕組みなどは、以下の関連記事を参照いただきたい。
Cloud Foundryを解説した記事
OpenShiftを紹介した記事
機能比較
利用可能なプログラミング言語、データベースサービスの比較表を以下に示す。
| Open PaaS | Cloud Foundry | OpenShift |
|---|---|---|
| 提供元 | ヴイエムウェア | レッドハット |
| 登場時期 | 2011年4月 | 2011年5月(オープンソース版:2012年4月) |
| 対応プログラミング言語 | Erlang、Java、Node.js、PHP、Python、Ruby、Scalaなど | Java EE、Node.js、Perl、PHP、Python、Rubyなど |
| 対応フレームワーク | Django、Grails、Groovy、Rails、Sinatra、Springなど | CakePHP、Django、JBoss Tools、Rails、Sinatra、Spring、Zendなど |
| 対応サービス | MongoDB、MySQL、Neo4j、PostgreSQL、Redis、vFablic | Membase、MongoDB、MRG、MySQL、PostgreSQL |
| 対応Iaas | AWS、Eucalyptus、OpenStack、VMware vSphere | AWS、OpenStack |
| バックグラウンドジョブ | ○ | ○ |
| 導入ケース | eBayや楽天がEコマース基盤として採用を決定 | - |
| ユーザー会 | 日本Cloud Foundryグループ(2012年2月25日発足) | - |
どちらも幅広い環境に対応している。OpenShiftはレッドハットが持つJBossをアプリケーションサーバに内包しているため、Java EEに対応しているのが大きな特徴だ。
プロダクト展開を比較する
Cloud FoundryとOpenShiftのプロダクト展開を以下に記す。列挙してみると、双方の展開が驚くほど似通っていることに気付く。
Cloud Foundry
(1)Cloud Foundry
オープンソースとしてのPaaSがCloud Foundryで、コミュニティー「cloudfoundry.org」で開発されている。ヴイエムウェアのメンバーが中心だが、他の開発者がパッチを送り開発に参加することも可能だ。
(2)Micro Cloud Foundry
(1)をベースに、アプリケーション開発者が自前の仮想環境上で手軽に利用できるよう、OSから各種設定までセットにしたものがMicro Cloud Foundryだ。デプロイするアプリケーションの開発・テスト環境として利用できる。
(3)CloudFoundry.com
(1)をベースにして、ヴイエムウェア自身が提供するPaaSがCloudFoundry.comである。現在βテスト中のため、無料で利用できる。
(4)Cloud Foundry for Enterprise
(1)をベースにして、企業のプライベートクラウド内PaaSや、クラウドプロバイダーが提供するPaaSのための商用版として予定しているのがCloud Foundry for Enterpriseだ。
OpenShift
(1)OpenShift Origin
2012年にオープンソースとして発表されたのがOpenShift Originだ。レッドハットが提供するサービスOpenShiftと区別するため、表記を分けている。開発はレッドハットのメンバーが中心となって行っているが、パッチを送付する形で他の開発者も参加可能。
(2)OpenShift Origin LiveCD
OpenShift Originを手軽に利用できるように、ブート可能なCDイメージとして用意されているのがOpenShift Origin LiveCD。開発者はCDイメージを実機や仮想マシン上で実行することで、アプリケーションのデプロイやテスト開発を行うことができる。
(3)OpenShift
レッドハットが自ら提供するPaaSがOpenShiftだ。以前はExpress、Flex、Powerというそれぞれ機能が異なるサービスとして提供されていたが、2012年に3サービスを統合し、OpenShiftとして再発表された。
OpenShift Originを基に構築されており、現在はβ版として無料で利用できる。
(4)エンタープライズ向けOpenShift
レッドハットもヴイエムウェアと同様、OpenShift Originの成果を基に、エンタープライズ版の提供を計画している。
アーキテクチャを比較する
Cloud FoundryとOpenShiftのアーキテクチャ比較してみよう。
Cloud Foundryのアーキテクチャ
機能・役割ごとに明確にコンポーネントが分けられているのがCloud Foundryの特徴だ。外部からのアクセスは全てRouterを経由して、適切なコンポーネントに分配される。データベースなどはServicesノード上、アプリケーションはDEAノード上に分けて配置される。独自に対応言語、フレームワークを追加する場合、DEAに対して変更を加えることになる。
各コンポーネントが疎結合となっており、コンポーネント間はNATSと呼ばれるメッセージングシステムを経由して連携が行われる。
OpenShiftのアーキテクチャ
OpenShiftのコンポーネントは、大分すると、BrokerとNodeに分けられる。Brokerはアプリケーションのデプロイ、認証・認可、各種データの保存などを担っている。
アプリケーションやサービスをホストするのはNodeの役割だ。Cartridgeと呼ばれる、各種実行環境のテンプレートが用意されており、それを基にGearと呼ばれるアプリケーションの実行単位を構成する。Webブラウザなどからのアプリケーションへのアクセスは、Nodeごとのリバースプロキシを経由し、各Gearに分配される。
データベースもCartridgeの1つとして用意され、アプリケーションごとにGearとして動作する仕組みになっている。
対応言語、フレームワーク、データベースを追加したい場合、Cartridgeを追加する形になる。実行環境をプラグイン形式で増やしていけるのがOpenShiftの特徴といえよう。
両者の強みと弱みは何か
Cloud FoundryとOpenShiftの強みと弱みを考えるには、ヴイエムウェアとレッドハット両社の強みと弱みを第一に考えなくてはならない。
仮想化ソリューションのヴイエムウェア、OSのレッドハットという印象が強いが、両社のプロダクト展開を図にすると以下のようになる(図3)。
このように、両社のプロダクト展開がかなり似通っていることに気付く。あくまでもビジネスの主力になっているのは、ヴイエムウェアなら仮想化ソリューション、レッドハットならOSだ。しかし垂直にプロダクトを展開していった結果、多くのレイヤーで競合製品が存在するという結果となっている。そのため、Cloud FoundryとOpenShiftの強みと弱みは、そのまま両社の強みと弱みにつながる。以下、両社を比較した際の強みと弱みを挙げる。
Cloud Foundryの強みと弱み
Cloud Foundryの強みは、OpenShiftに1年先行してオープンソース化し、多数の開発者やパートナーを引き込むことができたことだ。ActiveStateやAppFogはCloud Foundryをベースとした独自のPaaSを提供している。Iron Foundryを始めとした、.NET Frameworkに対応したWindowsベースのCloud Foundry派生も誕生している。2012年4月には開発円滑化のため、開発コミュニティーの体制見直し、コード受け入れ体制の改善に加え、クラウドベースIDEを始めとした、新たなパートナーも発表された(関連リンク:1周年を迎えた Cloud Foundry 、新たなエコシステムを提供)。
日本国内においても採用事例が出てきており、例えば楽天がプライベートクラウドでCloud Foundryの採用を発表している(関連記事:楽天がプライベートPaaSを構築――「Cloud Foundry」を選んだ4つの理由)
コミュニティー活動も盛んに行われており、技術者コミュニティーの他、日本電信電話(NTT)とNTTコミュニケーションズが発起人となり、普及促進と情報共有を目的とした「日本Cloud Foundryグループ」も設立された(関連リンク:日本Cloud Foundryグループ設立のお知らせ)。
技術的な側面で言えば、仮想化プラットフォームで大きなシェアを持つヴイエムウェアが中心となっていることは重要だろう。Cloud Foundryはアンチベンダーロックインをコンセプトに掲げているが、Cloud Foundry採用する側とすればヴイエムウェア製品との組み合わせが安心感につながる。エンタープライズ版を採用するに当たっては、ヴイエムウェアが買収したSpringSourceの持つフレームワークや、vFablicなどの既存製品との連携が注目される。
弱みを上げるとするならば、ヴイエムウェアの製品はオープンソースで開発されているものが少ないため、オープンソースコミュニティーの運営に懸念があるという点だろう。コミュニティーをうまく回していくことが製品の質に直接関わってくるため、安定した運営が求められる。前述したようにヴイエムウェアは開発コミュニティーの見直しを適宜行っており、試行錯誤しながら改善していこうという意思が読み取れる。
OpenShiftの強みと弱み
OpenShiftの強みは、Red Hat Enterprise Linux(以下RHEL)という大きなシェアを持つOSを持っている点だろう。OpenShiftはRHELおよびFedora上で動作するように作られており、多数存在するRHEL技術者のユーザー資源を活用できるのはCloud Foundryには無い強みだ。またレッドハットは、Linuxカーネルに取り込まれている仮想化技術であるKVMを積極的に推進しており、Linuxと一体となったプロダクト展開の余地も残している。
OpenShiftは既にレッドハットのアプリケーションであるJBossに対応しており、Cloud Foundryが対応しないJavaEEが使えるなど、レッドハットの既存資産を生かしたエンタープライズ展開が取りやすい体制になっている。
Cloud Foundryにもいえることだが、両社の持つ既存資産をいかに取り込んで行くかが鍵となるだろう。
OpenShiftの弱みは、オープンソース化で1年先行するCloud Foundryと比べると、エコシステムの構築がまだ出来上がっていないことだ。オープンソース化してからまだ1カ月しかたっていないため、レッドハット以外の開発者はOpenShiftの可能性を模索している段階だ。有力なパートナーとの協力関係もこれからという段階である。
レッドハットはLinuxとともに成長してきたため、オープンソースコミュニティーとは長い関わりがある。そこはヴイエムウェアにはない強みといえる。エコシステムの構築において早い巻き返しが期待されるところだ。
要件に合致する選択をするには構築面・運用面双方から検討を
Cloud FoundryもOpenShiftも、OpenPaaSの特徴といえる幅広い言語や環境に対応しており、機能面ではどちらも遜色ないといえよう。両社がそれぞれ持つアプリケーション実行環境やフレームワークなどをいかに取り込んでいくかが差別要素として期待される。
アーキテクチャ面においては、両者で設計思想の違いが感じられる。どちらが優れているかは単純に判断できず、構築面・運用面双方から検討し、要件に合致する方を選択する必要があるだろう。
現時点では1年オープンソース化で先行したCloud Foundryがコミュニティーやパートナー関係の構築においてリードを築いており、日本国内でも採用事例が出てきている。OpenShiftにおいてはオープンソース化してから日が浅いため、国内外問わず採用事例やコミュニティーが不足している。早い巻き返しが期待される。
草間一人(くさま かずと)
NTTコミュニケーションズ勤務
前職(業務系ソフトウェア開発)では、PaaSを利用した業務システムの開発・運用を担当。
2012年4月よりNTTコミュニケーションズに勤務し、社内のPaaS導入推進および基盤技術開発を担当。
社外ではクラウド技術を主なテーマにしたblogを共同執筆中。
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この記事の著者
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