Cloud Foundryとは何か(前編)
.NET環境も構築できる、Cloud Foundry4つの強み
2回にわたりCloud Foundryの魅力に迫る。前編では、昨今のIaaS、PaaSの動向から始まり、Cloud Foundryがなぜ注目されるのかについて解説する。
国内においても高い成長性が見込まれているクラウドサービス。IaaS(Infrastructure as a Service)やSaaS(Software as a Service)が市場の中心であったが、その中間に位置するPaaS(Platform as a Service)も注目されつつある。
コモディティ化するIaaS
クラウドサービスの中でも、仮想化技術によって細分化したコンピューティングリソースを提供するIaaSは、サービス提供者側にとっても利用者側にとっても「分かりやすい」サービスであり、これまでのホスティングサービスの延長として、それを置き換える形で普及してきた。
しかしサービス提供者側の視点に立つと、IaaSは他社サービスとの差別化が図りにくい。コンピューティングリソースそのものを提供するという性質上、提供される機能はどこも同じになってしまう。つまりユーザー企業としても、サービスの優劣を決める要素は価格に対してどれだけの性能(CPUの速度、メモリ容量、ストレージの容量および速度など)を提供できるかでほぼ決まってしまう(関連記事:2011年クラウド業界を振り返る ~IaaSの発展、混沌としたPaaS業界の行方)。
差別化としてのPaaS
そこで、差別化の要素として注目され始めているのがPaaSである。コンピューティングリソースそのものを提供するIaaSと違い、ソフトウェアの開発および実行基盤を提供するPaaSは、サポートする言語やデータベースなどのミドルウェアの数、支援ツールの充実がサービスの要となる。サポートする言語やミドルウェアを増やせば増やすほど、提供側の負担は増加するが、その分、他サービスとの差別化や色付けを図りやすい領域といえるだろう。
代表的なPaaSとしては、マイクロソフトのWindows AzureやグーグルのGoogle App Engine、セールスフォース・ドットコムのForce.comやHerokuが挙げられる。これらのサービス事業者はPaaSに特化しているのが特徴だ(関連記事:注目のPaaSを一挙に紹介! ~Cloud Foundry、OpenShift、Herokuなど)。
上記の事業者は、ハードウェアのレイヤーからアプリケーションプラットフォームのレイヤーに至るまでの、細かな仕様は公開していない。「ここにアプリケーションをデプロイしてくれれば、後は全て面倒を見ますよ」という、完成度の高い垂直統合のサービスだ。
Cloud Foundryとは何か
マイクロソフト、グーグル、セールスフォース・ドットコムのような企業が提供するPaaSは「Proprietary PaaS」と呼ばれ、アプリケーションを構築・運用する際のコストを軽減できることから人気を博している。一方、IaaSレイヤーにインストールする形で利用できる「Open PaaS」と呼ばれる仕組みも誕生した(関連記事:オープンソースのPaaSはなぜ注目されるのか ~Open PaaSの魅力と課題)。その代表的なものがCloud Foundryである。
Cloud Foundryはヴイエムウェアが中心となって開発しているオープンソースのPaaSで、ヴイエムウェア自身も「cloudfoundry.com」という名称でサービスを提供している(現在はβ版で、無料で利用が可能)。
もともとはヴイエムウェアが2009年に買収したSpringSourceによる、「SpringSource Cloud Foundry」がベースとなっており、ヴイエムウェアの掲げるOpen PaaS戦略に沿う形で、あらためて発表されたものだ。
Cloud Foundryの特徴として、以下の4点が挙げられる。
(1)オープンソース(Apache License, Version 2.0)
(2)複数のプログラミング言語、フレームワークに対応
(3)複数のデータベース、ミドルウェアに対応
(4)パブリックPaaS、プライベートPaaSなど、さまざまな利用方法が可能
Cloud Foundryの強み
上記の4つの特徴は、そのままCloud Foundryの強みと言い換えられる。それぞれの要素について詳しく解説する。
(1)オープンソース
前述したように、Cloud Foundryはオープンソースである。つまり、どのような仕組みで動いているか、全て把握することが可能だ。その点において、既存のPaaSとは対照的な存在であるといえる。
また、Apache License, Version 2.0のため、Cloud Foundryを利用したサービスを提供するに当たって不足している機能があると感じたならば、自らその機能を追加することも可能だ。Perl実行環境「ActivePerl」などで知られるActiveStateは、PerlおよびPythonのサポートを追加した「Stackato」というサービスを提供している。また、Tier3はCloud FoundryをWindows上で動作させ、ASP.NETを利用できるようにした「Iron Foundry」というサービスを提供している。
(2)複数の言語・フレームワークに対応
Cloud Foundryは複数の言語およびフレームワークに対応している。標準で、Java(Spring Framework)、Scala、Ruby(Ruby on Rails、Sinatra)、PHP、JavaScript(Node.js)に対応している他、前述したように独自に言語サポートを加えている例もある。
(3)複数のサービスに対応
MySQLやPostgreSQLのようなRDB(リレーショナル型データベース)、MongoDBやRedisといったNoSQLと呼ばれるデータベース(DB)の他、メッセージバスであるRabbitMQが利用可能だ。Webアプリケーション構築の際に必須なサービスを多く備えているといえる。
(4)さまざまな利用方法が可能
Cloud Foundryを利用する場合、cloudfoundry.comやStackatoのようなサービスを利用するのが一番手間を掛けずに済む方法だが、自らCloud Foundryの環境を構築する方法もある。Cloud Foundryのアーキテクチャはレイヤーごとに分離されているため、IaaSレイヤーを自由に選択することが可能だ。既存のIaaSの上に載せてPaaSレイヤーを構築してもよいし、社内にあるサーバに直接インストールしてプライベートPaaSを構築することもできる(関連記事:楽天がプライベートPaaSを構築――「Cloud Foundry」を選んだ4つの理由)。
後編で詳しく解説するが、ユーザーの利用用途に合わせ、パブリッククラウドだけでなく、プライベートクラウドとしても利用できる、柔軟な仕組みだといえる。
ビジネスとしても重要性の増すCloud Foundry
オープンで、かつ柔軟性の高いCloud Foundryは、クラウドサービス市場においても注目すべき存在である。
現在のPaaS市場におけるプレーヤーが、マイクロソフト、グーグル、セールスフォース・ドットコムといった企業に限られてしまっている理由として、PaaS提供にはその企業の総合力が求められることが挙げられる。サーバやネットワークといったインフラ側の技術力だけでなく、ソフトウェアプラットフォームを作り上げていく開発力、そしてデベロッパーを巻き込んでいくマーケティング、全てが求められる。
既存企業に新たな付加価値を与えるCloud Foundry
オープンであるCloud Foundryを採用することで、特定の分野に特化した企業にもPaaSへの門戸が開かれる。例えば、IaaSを専業としている企業ならば、Cloud Foundryを採用すればPaaSという付加価値のあるサービスを提供できるようになる。また、前述したActiveStateのような、アプリケーションプラットフォームの開発を専業としていた企業であれば、Cloud Foundryに自社のアプリケーションプラットフォームが稼働できるような追加を施すことで、より幅広いユーザーへリーチすることが可能となる。
.NET Frameworkを利用できるPaaSは、Windows Azure一強というのが現状だが、Iron FoundryのようにCloud Foundryをベースとした.NET PaaSを提供することで、.NET開発者にも第2、第3の選択肢を提供できる。
後編では、Cloud Foundryの詳細な仕組み、開発者、事業者がCloud Foundryを選ぶべき理由と今後の課題について解説する。
植村優一(うえむら ゆういち)
NTTコミュニケーションズ勤務
2009年からクラウドサービスの基盤技術開発を担当。
現在はNTTコミュニケーションズ内部のPaaS導入推進をしながら、社外ではCloud Foundry記事を主にして以下のblogで執筆中。
ブログ⇒http://blog.udcp.net/
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Cloud Foundryとは何か
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