経団連、金融庁、自民党がプッシュ
「J-IFRS」契機に動き出す日本企業、任意適用は300社?
凍結していたプロジェクトが再開――金融庁の報告書を受けて日本企業のIFRSプロジェクトが再び動き出した。適用されるのは日本企業に合わせて開発するJ-IFRSが多くなりそうだ。今後を予測する。
金融庁企業会計審議会が2013年6月20日に公開した「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(当面の方針)を受けて企業のIFRS適用の流れが加速する見通しだ。だが、現行のIFRSを日本企業が適用しやすいように修正する日本版IFRS(エンドースメントIFRS、以下J-IFRS)の登場で企業の選択は難しくなっている。日本のIFRS適用の流れは今度どうなるのか。IFRS動向に詳しい公認会計士の中田清穂氏に聞いた(参考記事:IFRS適用に本気の企業はどこ? 833社から探る)。
「社内で凍結していたIFRSプロジェクトを再開した方がいいのかという質問が急に増えた」。中田氏はIFRS適用についての問い合わせが当面の方針の公開後に急激に増えたことを説明する。当面の方針はIFRS任意適用企業の増加を目指して、J-IFRSの創設などを提唱する内容。IFRSの強制適用が決まったわけではない。しかし企業の動きは迅速だ。
「当面の方針における一番の焦点は『IFRSの適用の方法』で4基準が挙げられているところ。米国基準を除くと企業の選択肢は日本基準と現行のピュアIFRS、J-IFRSの3つになる。いずれも任意適用で、日本基準を現在採用している企業は変える理由がない。しかしそれでも企業が動き出しているのは他社の状況が気になるからだ。業界の横並びともいえる」(中田氏)
企業会計審議会などでJ-IFRSを提案したのは日本経済団体連合会(経団連)だ。日本のIFRS適用企業が増えないと国際会計基準審議会(IASB)での発言力が低下し、日本に不利な会計基準ができてしまう可能性がある。「経団連は日本で任意適用が拡大しないと最終的には日本の国益を損なうと考えている」(中田氏)。これが、経団連がJ-IFRSという4つ目の基準まで提案してIFRS適用を進める理由と中田氏は見る。「経団連が加盟企業にどう働きかけるかを注目すべきだ」。特にさまざまな業界のリーディング企業の動きが注目されるという。
東証新指数の要件にIFRSか
IFRS適用企業の増大によって日本の地位を維持する考えは、金融庁とも共通する。日本はIFRS財団のモニタリング・ボードの議長(金融庁の河野正道国際政策統括官)を務めるが、モニタリング・ボードのメンバーは3年ごとに選ばれる。その際の要件の1つは「IFRSの適用を強制または許容し、実際にIFRSが顕著に適用されている状態となっている」ことだ。日本がモニタリング・ボードの一角を占め続けるためにはIFRS任意適用の急速な拡大が必要になる。モニタリング・ボードの新しいメンバーが決まるのは2016年だ。
自民党もIFRS任意適用を推進している。6月に公表された自民党 企業会計に関する小委員会の提言では、上記のモニタリング・ボードのメンバー要件を満たすために「2016年末までに、国際的に事業展開をする企業など、300社程度の企業がIFRSを適用する状態になるよう明確な中期目標」を立てるべきと提言する。さらに東証に対してはIFRSでの開示を要件の1つとする新指数「グローバル300社(仮称)」の創設を提案した。
2016年までに300社適用
経団連や金融庁、自民党のこれらの動きを見ていると2015年または2016年にIFRS任意適用企業を300社まで増やすという共通の目標が見えてくる。その際に適用されるのは日本企業が適用しやすいとされるJ-IFRSが有望だ。「私は300社のうち、大半がJ-IFRSを選ぶと考えている」(中田氏)
J-IFRSはASBJ(企業会計基準委員会)がピュアIFRSの個別の基準を検討、修正して開発する予定で、2014年秋に完成させる計画(参考記事:「日本版IFRS」は2014年秋に完成、ASBJが方針)。ただ、2015年3月期にJ-IFRSを任意適用することを考えると、2014年3月期が比較年度となり、2013年4月1日時点での開始財政状態計算書が必要になる。そのため「2013年中には少なくともJ-IFRSの草案が示されるのではないか」と中田氏は予測する。
J-IFRSの内容はある程度予測できる。日本がIASBの「アジェンダ協議2011」でIFRSの改善案として提案した内容がベースになり、その中でも「ノンリサイクリング」「のれんの非償却」「非上場株式の公正価値測定」「子会社、関連会社の報告日が異なる場合の取り扱い」などが特に議論されるとみられる(企業会計審議会2013年5月28日の資料「IFRSの適用の方法について」から)。経団連が取りまとめているように、これまでの企業のIFRS適用の実例から、従来の経理処理を変えずに対応できると判断される項目もあるだろう(有形固定資産の耐用年数、開発費の資産計上など。参考記事:IFRS任意適用拡大を目指す経団連、事例集を公表)。
IFRS適用の舞台は金融庁というハードローの世界から経団連や業界団体、証券取引所からの依頼というソフトローの世界に移りつつある。中田氏は「経団連の主要企業が動く可能性があり、この半年から1年で大きな動きがある」と予測する。
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