壊れる前に直してトラブルを未然に防ぐ
ビッグデータで車の故障を予測 アナリティクスで変わる製造業
ビッグデータのビジネス活用が注目されているが、製造業など、ものづくりの分野での活用事例が増えてきている。SAS Institute Japanが開催したイベントの講演を基にデータ活用とアナリティクスの先進事例を紹介する。
ビッグデータのビジネス活用が叫ばれて久しい。先進的な企業は、業務データやソーシャルデータ、オープンデータといったさまざまなデータを駆使することで、収益向上やコスト削減、リスク管理、プロセスの改善など、ビジネス価値を高めようしている。
製造業など、ものづくりの分野においても、ビッグデータの活用事例が増えてきている。製品や部品に取り付けたセンサーから集めたデータを分析・解析することで、出荷後の製品の稼働状況を把握し、不良検知や予防保全に役立てている。
また、大規模設備や装置などの故障の予兆を分析し、故障前に把握・予測できれば、予期せぬトラブルの発生を未然に防ぐことができる。
本稿では、SAS Institute Japanが開催したイベントの講演を基に、ビッグデータおよびアナリティクスの先進事例を紹介する。
顧客の行動をセグメント分けして売り上げにつなげる
講演で事例の1つとして紹介された大手電機メーカーは、スマートフォンやスマートテレビ、デジタルカメラ、PC、ネットワーク機器など、ハイテク製品を幅広く展開する他、アプリの提供・販売や電子書籍、ソーシャルメディア、決済、映画/テレビといった各種サービスも提供している。
スマートフォン、テレビなどの利用者にアプリ、コンテンツのリコメンドキャンペーンを行ってきたが、十分な効果を得ることができていなかったという。また、スマートフォンはアプリ利用の移り変わりが激しく、週次レベルでのキャンペーン展開では顧客のニーズを的確に把握することができなかった。
そこで同社では、アプリの利用ログと顧客情報、課金情報を組み合わせて分析することで、アプリやコンテンツの購買行動が似ている顧客層を予測し、顧客行動を複数のセグメントに分類した。その上で、顧客層別に最適なプロモーションキャンペーンを実施。これによって有料アプリとコンテンツの売り上げを伸ばした。
莫大なアプリ利用データの分析可能な環境を構築することで、現在は週3回のペースで顧客セグメントの移動を把握しているという。
“顧客の声”を分析して製品トラブルやクレームに対処
この大手電機メーカーではさらに、“顧客の声”を分析することでブランドリスク管理を実践している。
従来は、製品トラブルやクレームが発生した際、発見が遅れ大きな問題となる恐れがあった。また昨今では、SNSやブログの普及により情報拡散のスピードが速くなっており、対応をますます難しくしていた。
これに対し、同社では、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)やブログ、コンタクトセンター情報、修理サービス情報などから利用データを収集、それを話題とクレームごとに分類し、リスクスコアリングを実施した。ブランドの価値を損ないかねない事象を予測し、スコアの高いものから個別に対応するように業務を変更した。
これにより、「電池が高温になる」や「電源端子が緩い」「液晶が暗い」「ボタンが不能」といったリスクの高い製品トラブルやクレームに対し、適切なPR活動や顧客対応をプロアクティブに行えるようになった。
生産機器のデータから製品の不良原因を予測する自動車メーカー
次の事例は、製品の不良原因を予測する自動車メーカーの取り組みが紹介された。
この自動車メーカーでは従来、完成検査でNGとなった製品に対して、勘と経験に従い担当者が不良原因の特定、手直しを行ってきた。この作業は非常に属人的で、効率が悪かった。
そこで同社は、生産工程機器から得られる機器情報に基づき、製品の不良原因を予測する仕組みを構築し、不良原因を特定するまでのリードタイムを短縮した。また、暗黙知である熟練担当者の持つノウハウや技能を形式化し、新人担当者でも不良原因の特定を可能にした。その結果、業務レベルの底上げにもつながった。
さらに、不良原因とテスト項目結果の関連性を発見することで、生産/開発行程へのフィードバックも可能となったという。
故障しそうなパーツを予測する部品メーカー
自動車の部品メーカーも、テレマティクスデータやこれまでのパーツ故障情報を活用することで、自動車パーツの故障を予測する取り組みを進めている。
通常、自動車を修理する際はディーラーに車両を預け、故障したパーツを修理するが、その時点で異常な箇所しか直せなかった。故障しそうなパーツも予測し、プロアクティブに交換できれば、顧客の手間を省くことができる。
この部品メーカーでは、故障予測モデルを作成し、ディーラーでのメンテナンス時に故障しそうなパーツを診断し、整備士を支援する。故障前にその予兆を把握することで、車両トラブルを未然に防ぎ、顧客満足度を向上させている。
掘削装置の予防保全で事故を未然に防ぐ石油会社
最後に、石油プラットフォームの故障をリアルタイムで予測する石油会社の事例が紹介された。石油プラットフォームは生産装置であり、万が一、緊急停止などで生産が止まってしまうと収益に大きな影響を及ぼしかねない。
また、自然を相手にしており、機器の故障や事故につながる事象をリアルタイムに検知し、対応する必要もあった。いったん事故が発生すると大事故に発展する恐れがあるためだ。
同社では、掘削装置の機器データを収集し、装置の故障予測モデルを構築。それにストリーミング技術を利用し、掘削装置の異常や故障をリアルタイムで予測している。これにより、石油プラットフォームの緊急停止や事故を未然に防止する予防保全を実現している。
SAS Institute Japan ソリューションコンサルティング第一本部 エンタプライズアナリティクス推進グループ 部長の山下克之氏は講演の最後、アナリティクスを浸透させる要素として、「アナリティクススキルの獲得と継続的な向上」「ITシステム、適切な分析ツールの選択」「業務プロセスへの組み込み」「事実ベースで意思決定する企業文化の醸成」が重要であると語った。
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