データ保護の最適解「バックアップアプライアンス」の選定と比較【第2回】
既存環境を変えない、「ターゲット型バックアップアプライアンス」の製品選定ポイント
重複排除機能、レプリケーション機能を持ったバックアップ保存先ストレージ「ターゲット型バックアップアプライアンス」の製品選定ポイントを解説する。
前回の「クラウド全盛期でも注目を集める、2種類のバックアップアプライアンスとは?」では、バックアップ保存先ストレージの「ターゲット型バックアップアプライアンス」と、バックアップ保存先ストレージとバックアップサーバを組み合わせた「統合型バックアップアプライアンス」の違いについて解説した。製品選定に当たり、まずは、2種類のバックアップアプライアンスのどちらを採用するかを決定する必要がある。その後、具体的にベンダーの製品を選定する流れとなる。
第2回の今回は、2種類のバックアップアプライアンスのうち、ターゲット型の製品選定ポイントを解説する。今回の内容は下記の通りだ。
- ターゲット型バックアップアプライアンスが適する要件
- ターゲット型バックアップアプライアンスの製品選定ポイント
連載インデックス
ターゲット型バックアップアプライアンスが適する要件
ターゲット型バックアップアプライアンスは、重複排除機能、レプリケーション機能を持ったバックアップ保存先ストレージである。CIFS(Common Internet File System)、NFS(Network File System)などのファイル共有プロトコルを使ってネットワーク経由でアクセスできる製品が多く、NAS(Network Attached Storage)のように動作する。ただし同時接続数の上限がそれほど多くなく、小さなサイズのファイルを多数書き込むことを苦手とする製品が多い。そのためファイルサーバとして使用することはお勧めしない。
企業がターゲット型バックアップアプライアンスを選択する際は、前提として「既存環境の複数の異なるバックアップソフトを変更したくない」という要件があることが多い。具体的な要件としては下記のケースが考えられる。
- 複数のバックアップソフトのデータ間で重複排除を効かせ、バックアップ保存先ストレージの容量を削減したい
- バックアップデータのレプリケーションによる災害対策をしたい
- テープの外地保管をレプリケーションに変更し、テープ運用を廃止したい
- バックアップソフト以外(OSコマンドなど)から書き込みたい
バックアップソフトが複数種類ある場合、それぞれのソフトの復旧手順を維持したりメンテナンスをしたりする必要がある。バックアップ保存先ストレージを統合できても、バックアップソフトを統合できなければ、シンプルな運用にはならない。ましてサイト(情報処理施設)を切り替えたい場合は、本番サイトから離れたバックアップサイト(リモートサイト)にも、それぞれのバックアップサーバを設置する必要があり、有事の際の復旧が複雑になる。
上記より、災害対策をシンプルに構成するためには、統合型バックアップアプライアンスをお勧めする。ただし災害対策を検討する際に、バックアップ製品の変更が困難なシステムもあるだろう。その場合はターゲット型バックアップアプライアンスを採用することもやむを得ない。だが全てのシステムをターゲット型バックアップアプライアンスで災害対策することはお勧めしない。一度に全てのシステムをバックアップ統合することが難しくても、ターゲット型バックアップアプライアンスの使用は最小限にとどめ、順次、統合型バックアップアプライアンスへ移行していくことをお勧めする。
ターゲット型バックアップアプライアンスの製品選定ポイント
ターゲット型バックアップアプライアンスを使用することが決まったら、製品選定ポイントを基に製品を選定する。その際の具体的なポイントを見ていこう。
製品選定では、アプライアンス単体の機能と、バックアップソフトとの接続性や連係機能に関するポイントがある。バックアップの機能は、併用するバックアップソフトに大きく依存する。盲点となるのが、同じアプライアンスでも、組み合わせるバックアップソフトによって、レプリケーション動作が変わるという点だ。実際にレプリケーションを実施するのはアプライアンスだが、バックアップソフトからレプリケーション処理を制御できる製品を選ぶと運用がシンプルになる。下記が製品選定ポイントである。それぞれについて詳しく説明していく。
- 提供形態
- 接続プロトコル
- 重複排除の範囲
- バックアップソフトとの接続性、連係機能
- アプリケーション用エージェント
- ストレージと連係したバックアップ
提供形態
物理アプライアンスに加え、仮想アプライアンスが提供されていると、小規模拠点に低コストでアプライアンスを導入可能だ。ROBO(リモートオフィス/ブランチオフィス)環境に仮想アプライアンスを導入し、データセンターにバックアップデータをレプリケーションすることで、各拠点に物理アプライアンスを導入するのに加えて、低コストで災害対策を実現できる。物理アプライアンスのエントリーモデルでもオーバースペックな場合は、仮想アプライアンスが適するケースといえるだろう。
接続プロトコル
バックアップサーバやバックアップクライアント(バックアップ対象の物理/仮想サーバ)からの接続方式に着目する。CIFSやNFSを使いネットワーク接続で書き込みをする製品、FC(Fibre Channel)やiSCSIといったデータ転送方式で接続しVTL(仮想テープライブラリ)として使用できる製品がある。バックアップサーバから接続してバックアップデータを書き込むのに加えて、バックアップクライアントから直接書き込むことができる製品もある。またバックアップソフトと連係するための独自プロトコルを用意している製品も多い。
重複排除の範囲
バックアップサーバが複数ある場合、バックアップ保存先のディレクトリ(「シェア」もしくは「共有」とも言う)をアプライアンス筐体内に複数作ることができる。その際、重複排除の効果範囲として、それらのディレクトリをまたぎアプライアンス筐体全体で重複排除が効く製品と、各ディレクトリ内でのみ重複排除が効く製品がある。
バックアップソフトとの接続性、連係機能
バックアップソフトとの接続性については、アプライアンス製品、バックアップソフトの双方のサポート状況を確認すると安心である。アプライアンス製品側で、バックアップソフトや使用方法を限定している場合がある。CIFS、NFS接続をサポートしているアプライアンス製品でも、全てのバックアップソフトをサポートしているわけでない。
またアプライアンスが、バックアップソフトと連係するための独自プロトコルを用意している場合、使用するバックアップソフトとアプライアンスの組み合わせによっては、永久増分バックアップ(継続的な増分バックアップ)ができたり、バックアップソフトからレプリケーションを制御できたりするようになる。
アプリケーション用エージェント
データベースサーバなどから直接アプライアンスにバックアップデータを保存するためのエージェント(もしくは、プラグイン)を提供している製品がある。エージェントのライセンス体系は大きく分けて2つある。1つは「バックアップ対象容量で課金」する製品、もう1つは「アプライアンスの機種モデルに課金」し、容量に依存しない製品だ。
ストレージと連係したバックアップ機能
データベースや仮想マシンの整合性を確保した上で、ストレージのスナップショット機能と連係し、アプライアンスにバックアップデータを取得できる製品もある。ハードウェアベンダーがリリースしているストレージとアプライアンスは、そのように連係することが多い。
【コラム】ターゲット型アプライアンスのVTL構成は推奨しない
ターゲット型アプライアンスのVTL構成は推奨しない。理由は下記の通りである。
1.製品によってはFCのインフラが必要になる
2.永久増分バックアップができず、日次の増分バックアップに加え、定期的なフルバックアップが必要になる
3.バックアップサーバから、バックアップデータのレプリケーションが制御できない
4.運用開始後に、アプライアンスの使用容量を確認しながら、仮想テープを追加していく必要がある
2と3について、VTL構成はバックアップソフトからはテープ装置に見えるので、永久増分バックアップ、レプリケーション制御ができない。
4について説明を補足すると、例えば10TBの容量のアプライアンスに、500GBの仮想テープを20本作ったとする。バックアップサーバが500GBのデータを書き込むと、バックアップサーバは1本目の仮想テープがフルになったと認識する。しかし、アプライアンス内には重複排除されて500GBより小さくなったデータが書き込まれる。その後、バックアップサーバから10TB書き込むと、20本全ての仮想テープがフルとなり、それ以上は書き込めない。だが、アプライアンス内では、10TBより小さくなっているので、容量が余っている。すなわち、アプライアンスの容量以上の仮想テープを作成しないとアプライアンスの容量を使いきれないのである。運用開始時点では重複排除率が明確ではないので、アプライアンス容量程度の仮想テープを作り、運用開始後、使用容量を確認しながら、仮想テープを追加する必要が出てくる。
次回は統合型バックアップアプライアンスの製品選定ポイントを解説する。
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