「5G」の期待と現実【後編】
「5G」の性能を“前評判”通りに信じてはいけない納得の理由
「5G」は「4G」と大きく違うが、しばらくはその違いを実感できない可能性がある。両者の違いと、企業が知っておくべき“現実”を解説する。
「4G」(第4世代移動体通信システム)と「5G」(第5世代移動体通信システム)の最大の違いはレイテンシ(遅延)だ。5Gの遅延時間は1ミリ秒未満を目標に設定されており、4Gと比較すると少なくとも10分の1以下まで低減する。
5Gはファイルのダウンロード速度を大幅に向上させる仕組みを備えている点も特徴だ。これはデータを複数の搬送波(サブキャリア)に分割して伝送する「直交周波数分割多重」(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)の採用によって実現している。
信号の伝送に必要な基地局の設計も異なる。4Gはそれ以前の規格と同様の基地局で信号を伝送する。5Gはミリ波の周波数帯を使用するため、4G以前とは異なる基地局の設計が必要だ。ミリ波は電波の直進性が高く、広い範囲へは電波が届きくいため、電波を必要なエリアまで到達させるためにスモールセル(小型基地局)を使用する場合がある。5Gサービスを提供する事業者は、従来の大型の基地局に加えて、スモールセルを数多く設置しなければならない可能性がある。
スモールセルを採用することで、5Gはセル密度(1つの基地局に収容するデバイス数)を高め、ネットワーク容量を拡大できる。セル密度を高めることは4Gの目標でもあった。5Gは4Gでは達成できなかったレベルのセル密度を目指している。
こうした特徴を持つ5Gに期待が集まるのは当然だが、ネットワークエンジニアのリー・バッドマン氏は「サービス開始当初から5Gの目標が全て実現するわけではなく、しばらく待つことになるだろう」と忠告する。通信事業者が5Gの目標を実現するために必要な課題を解消するまでに時間がかかると考えられるからだ。5Gの最大限の性能をすぐに利用できると期待すべきではない。
5Gの「期待と現実」
ITの世界では、当初設定している目標が必ず実現するとは限らない。自社のネットワークとして5Gを導入したい企業は、4Gと5Gの違いを評価したいと考えているだろう。だが、一歩引いて4Gが登場したときのことを思い出してもらいたい。4Gへの期待に対して、通信事業者は実際にどこまで達成したかを振り返り、5Gについても同様のことが起こる可能性があると冷静に考えなければならない。バッドマン氏は「通信事業者の目標が必ずしも実現するとは限らない」と注意を促す。
4Gのデータ伝送速度の目標は100Mbps~1Gbpsだったが、実現したのは平均7Mbps~43Mbps程度だ。だからといって、4Gを批判しているわけでも、数値が虚偽だったと主張しているわけでもない。4Gのこうした目標と現実を、5Gを考える際にも参考にした方がよいということだ。5Gの目標が実現するまでには何年かかかる可能性があるし、最後まで実現しない可能性もある。
5Gは業務を改善できる可能性を秘めているが、すぐに企業の期待に応えてくれるとは限らない。それでも5Gは4Gでは解決できなかった問題を解決できる可能性がある。5Gがどこまで進歩するかが分かるのはこれからだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「5G」の期待と現実
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
3
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
6
AI導入が失敗する“真犯人”は現場のマニュアル 7割が陥る「標準化」のわな
-
7
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
8
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
9
被害額は過去最高額 それでも「サイバー犯罪者が捕まらない」3つの理由
-
10
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー