「人格を備えたチャットbot」への期待と不安【前編】
“不気味の谷”よりも深刻な「人格を備えたチャットbot」が引き起こす問題
チャットbotに人格を加えると“不気味の谷”現象を引き起こすだけではなく、倫理上の疑問が持ち上がる恐れもある。こうした障害を避けながら、チャットbotの魅力を高めるためにはどうすれがよいのだろうか。
チャットbotの影響力が増している。開発者はチャットbotのパフォーマンスを高めるために、AI(人工知能)技術を応用してその人格に深みを持たせ、より真に迫ったものにするようになっている。ただし、こうした動きは人に近づくことで不気味さや嫌悪感が高まる「不気味の谷」と呼ばれる現象だけではなく、幾つかの深刻な問題を引き起こす。
“不気味の谷”よりも深刻なチャットbotの倫理問題
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いまだにチャットbotの受け入れさえ課題となっている。さらに悪いことに、人格を備えるチャットbotを構築しようとする取り組みは非常に否定的に捉えられている。例えば人を模したGoogleの予約代行機能「Google Duplex」には倫理上の疑問が持ち上がった。ビジネスや倫理に関する課題に加え、教師データを管理するという技術的問題もある。これはMicrosoftのチャットbot「Tay」が人種差別や女性蔑視、反ユダヤ主義を短期間で学んだという典型的な例からも分かる。
チャットbotを活用する機会そのものは広がっている。ただし技術と倫理を調和させる方法についての問題は残ったままだ。
技術の歴史を振り返ると、社会への影響やそれにまつわる倫理が常に議論の対象になってきた。車輪の発明者さえ「運搬人の仕事をなくす」と責められていたという。現在ではAI技術と倫理との関係性が、さまざまな形で議論されている。実社会の偏見、データのプライバシー、視覚識別などがその例だ。実社会の偏見は統計上のバイアス(先入観)と対比して語られる。個人と直接コミュニケーションを取る技術は、その倫理的な側面が世間の注目を浴びることになる。その一部には、人々の技術に対する見方が根底にある。
AI技術の倫理問題は「他の技術が直面するものと根本的には変わらない」と話すのは、マサチューセッツ工科大学(MIT:Massachusetts Institute of Technology)で化学工学部の教授を務めるベルナール・トラウト氏だ。トラウト教授は工学部の学生に倫理学を教えており、最近、AI技術を巡る倫理を講義する「MIT Professional Education」講座を開設した。
トラウト氏は「新しい技術に対する不安は絶えることがない」と言い切る。AI技術を活用する組織が認識しなければならないのは、倫理上適切なアプローチだけではない。AI技術を取り巻く人々の期待や倫理感も知る必要がある」
こうした点は、チャットbotに対する人々の反応に関する問題にそのまま当てはまる。疑問を呈するユーザーを置き去りにしないで、チャットbotの潜在的メリットを引き出すには、チャットbotをどのように活用すればよいのだろうか。
重要なのは用途だ。懸念に対処できる大きさで、かつ集中的に有効性と倫理を導入できる場面が求められる。これにはスポーツが適している。
プロスポーツについて話すとき、そのフィールド外で非常に明確なことが1つある。スポーツファンは熱狂的で、過激ともいえる場合さえあることだ。ファンはそれぞれに意見を持ち、互いに共有したいと考えている。
ソーシャルメディアは、ファン、選手、チームの声が届く範囲を大きく広げている。スポーツ界に携わる全てのビジネスは、ソーシャルメディアを上手に利用してブランドイメージを広げ、それを高める方法に目を向けている。
欧州版「ESPN」ともいえるスポーツ専門チャンネル「Sky Sports」を運営するSky UKは、ソーシャルメディア内でサッカーファンとの関わりを深めたいと考えていた。だがコメントの発信源全てに目を配るために数千人もの人員を雇うことは望んでいなかった。コメントの発信源としては、Facebookの「Messenger」、Microsoftの「Skype」、Slack Technologiesの「Slack」、それに加えて自社が所有するインターネット資産もある。
Sky Sportsは、監視ツールの導入を検討した。その結果、GameOn(GameOn Technologyの名称で事業展開)の「ChatOS」を利用することになった。ChatOSはAI技術を使ってチャットを改善する。ChatOSはソーシャルメディアの大量の投稿をスキャンする機能を備えている。また自然言語処理(NLP)技術を使用した感情分析やインテントマッピング(意図の関連付け)もできる。
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