進化するRAID(後編)
「RAID後」の世界──ワイドストライピング/イレージャーコーディング
今日のRAIDシステムは、最新技術によってベーシックなミラードディスクよりも優れたパフォーマンスを提供する。
ワイドストライピング、ストレージ仮想化、イレージャーコーディング
前編「時代遅れのRAID認識を改めよう」に続き、RAID技術の進化を紹介していく。ストレージメーカー各社は、顧客のニーズに対応するためにRAIDレベルの修正・改良に熱心に取り組んできた。ワイドストライピング、ストレージ仮想化、イレージャーコーディング(※)といった技術がRAIDの基本前提を変えつつある。しかし、こういった取り組みの多くは、派手に宣伝されていないこともあってユーザーにはあまり知られていないため、従来のRAIDという呼称がそのまま残っているのだ。
訳注 Erasure Coding:定訳はないようだが、「消失符号」あるいは「消失訂正符号」という訳語も一部で使われている。
米EMCや米Hewlett-Packard(HP)などのメーカーは1990年代半ばに、ディスク全体を使用するという考え方を放棄し、複数のHDDに分散した容量スライスからRAID 1とRAID 5を構築した。2000年代には、米3PARや米Compellent Technologiesなどの企業がこの方式をさらに押し進めた「ワイドストライピング」技術を採用した。これは多数のHDDに少しずつデータを保存するという手法だ。データを多数のHDDに分散すれば、平均パフォーマンスが改善するのに加え、障害発生時にRAIDセットを再構築する時間も少なくて済むからだ。現在でも厳格に固定化されたHDD構成を採用しているディスクアレイは多いが、ほとんどのハイエンド製品はより広範なHDDにデータを分散している。
サーバベースのRAID技術であるストレージ仮想化では、物理システムとその論理表現との間の強固な結び付きが断ち切られる。仮想化されたディスクアレイは、特定のHDDセットに結び付いていないHDDとファイルシステムをサーバに提供する。これにより、サーバはこのデータを複数のRAIDセット、HDD、フラッシュメモリの間で、さらには複数のアレイの間で自由に移動できるようになる。最下位のレベルでは従来型のRAIDが今後も利用されるだろうが、ストレージ仮想化は従来型RAIDの硬直なレイアウトとパフォーマンスの制約を克服する。
イレージャーコーディングは、古典的なRAIDシステムで用いられる単純なパリティチェックよりもはるかに高度な新しいデータ保護演算方式だ。この方式は「デュアルパリティ」とも呼ばれているが、RAID 6のインプリメンテーションの多くは高度なリードソロモン符号を採用し、基本的なパリティ演算よりも多くのアドバンテージを提供する。これらのシステムは消失したデータを復活できるだけでなく、データの破損を検出することもできる。複数のHDD、ストレージノード、地理的場所にデータを広範に分散することで信頼性をさらに高めているシステムもある。こういった演算手法は1980年代から広く知られてはいたが、それをストレージアレイで利用できるほどまでにコンピューティング能力が進歩していなかったのだ。
RAID後の世界
これからのエンタープライズストレージシステムは、古典的なRAIDレベルを利用する一方で、上で紹介したような最先端のデータ保護方式を採用する可能性が高いと思われる。データストレージシステムを購入する企業にとっては、さまざまな新技術の組み合わせに向き合わなければならず、評価に苦労することになりそうだ。このため、RAIDに関しては時代遅れの固定観念にとらわれることなく、現実のパフォーマンスとシステム管理能力に目を向けることが大切だ。かつては、高いパフォーマンスを実現する唯一の方法は、RAID 1とデータストライピング(「RAID 0」とも呼ばれる)を組み合わせて「RAID 1+0」あるいは「RAID 10」セットを構成することだった。しかしDRAMキャッシュとフラッシュメモリキャッシュ、ワイドストライピングおよび自動階層化機能を備えた最新のシステムはさらに高いパフォーマンスを実現し、必要な容量もRAID 1と比べると50%にも満たない。一方、データベース管理者は、旧式な実装方式のためにパフォーマンスが制限されるRAID 5を使いたがらない。今日のシステムはこういった問題を克服し、多くのデータベース管理者が求めるベーシックなミラードディスクよりも優れたパフォーマンスを提供する。
技術の進歩によってRAIDが一般化したが、RAIDシステムにはさまざまなタイプが存在する。性能に大きく関係するのが、HDDの構成よりもむしろCPUの性能とキャッシュの容量だ。大容量のHDDを利用すれば小規模アレイで大規模システムを代替できそうなものだが、パフォーマンスが犠牲になるのは間違いない。簡単に言えば、そのシステムが期待される性能を提供できるという保証はないということだ。
ストレージシステムを購入する企業にとって最善の戦略は、RAIDレベルに基づく前提に立つのではなく、ストレージ装置の現実のパフォーマンスを検証することだ。ベンダーから資料を取り寄せ、そのシステムが自社のアプリケーションをサポートするか確認する必要がある。RAIDはまだ健在だが、エンタープライズストレージにおける重要問題はRAIDという枠を超えてしまったのだ。
本稿筆者のスティーブン・フォスケット氏はフリーのコンサルタント兼ライターで、エンタープライズストレージとクラウドコンピューティングを専門とする。独立系IT専門家集団Gestalt ITの責任者として「Tech Field Day」イベントの運営を担当。「GestaltIT.com」および「FoskettS.net」サイトを運営するほか、Twitterにも投稿している(@SFoskett)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
SNS認証や多要素認証も数分で実装、IDaaS基盤でデジタルビジネスはどう変わる? -
製品レビュー
「電子帳簿保存法対応」実践術:タイムスタンプ付与などの要件の手軽な実現方法 -
事例
「大企業のデジタル化」成功事例集【コクヨ、九州電力、ヨネックスなど21社】 -
製品資料
“顧客管理の課題”を簡単に解決する方法とは? -
製品資料
契約管理の“あるある課題”をノーコード開発で解決するためのポイント
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
多要素認証導入済みでもランサムウェア被害に 復旧費用は平均2億7000万円
-
5
脱VMwareの最適解 NTTデータと日立製作所が示す国産仮想化基盤
-
6
Synologyがエンタープライズ向けユニファイドストレージを投入 その実力は
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
「脱Excel」はなぜ現場に潰されるのか 反発を封じる“3つの論理”
-
9
ランサムウェア、暗号化の89%は深夜 情シスが備える「夜間の空白」対策
-
10
ランサムウェア「The Gentlemen」急拡大 21経路の「同時多発的」内部侵略を試みる
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー