【連載コラム】医療ITの現場から
診療所における電子カルテ導入の真の目的とは?
診療所では電子カルテの導入が着実に増えている。具体的にはどのような導入メリットがあるのだろうか。その導入効果をあらためて考察してみよう。
診療所における電子カルテの普及率はいよいよ3割に達しようとしています。現在では新規開業する場合、電子カルテ導入は当たり前ともいわれるようになりました。また、既に開業している診療所でも導入が進みつつあります。今回は、電子カルテの導入効果をあらためて考えてみたいと思います。
1. 待ち時間の短縮
診療所を訪れる患者の不満の上位に挙げられるのが「待ち時間」です。この待ち時間を短縮できれば、患者満足度は向上すると考えられます。電子カルテの導入により、「カルテを探す」「カルテを運ぶ」「カルテを見ながらレセプトコンピュータ(レセコン)に入力する」といった業務が削減されます。この3つの業務をなくすことで、診療所での滞在時間は大幅に短くなることが期待できます。
さらに、診察までの待ち時間を短縮するためには、予約システムを電子カルテと併せて導入するとより効果が得られます。時間予約制を導入していない診療所でも「順番予約」という仕組みを活用しています。この仕組みは、自宅にいながら携帯電話やWebサイトから診察順の予約ができ、順番が近づいてきたら、携帯電話などにお知らせが届くというものです。待合室にいる時間が少なくなりますので、患者の「待たされる」という感覚が軽減されます。
2. レセプト請求事務の効率化
医療機関では、月末月初にレセプト(診療報酬明細書)点検とその請求事務が発生します。レセコンを導入していても電子カルテがない場合、月末にレセプトを全件打ち出し、その1枚1枚をカルテの内容と突合していました。
レセプト点検時に確認する項目としては、主に以下の4点があります。
- 病名と薬(検査・処置など)の適合チェック
- 薬の用量・日数・禁忌のチェック
- 算定月・算定回数のチェック
- 管理料の算定漏れチェック
2012年からレセプト審査機関の点検強化として、突合点検・縦覧点検が開始されて以来、この点検業務はさらに緻密さが増しています。電子カルテは医師が自ら入力することが多いため、カルテの内容とレセプトの内容を一致させることが容易になります。しかし、電子カルテを導入しても「月に1回まとめてレセプト点検をする」という業務が残っているのが現状です。
「請求事務は受付スタッフが担当し、カルテの内容をレセプトの請求ロジックに従って補足する」というレセコン時代の考え方が根強くあります。そのため、電子カルテに記載された内容とレセプトを完全に合わせる作業が発生しており、それほど効率化が図れていない医療機関もあります。このワークフロー自体を見直さない限り、「月末月初の点検作業が憂鬱だ」という状況をなくすことはできません。
そこで、レセプト請求事務に長けた事務員を医師の横にクラークとして配置し、医師のカルテ入力を代行することで点検作業の効率化を図る医療機関が増えています。
3. 地域連携ネットワーク参加の準備として
最近、地域連携ネットワークに参加する際に、電子カルテを導入するケースが注目されています(関連記事:【市場動向】地域医療の再生の鍵を握る医療ITの理想像とは?)。インターネットにつながるクライアントPCがあれば、地域連携ネットワークへの参加は可能です。しかし、診療所側から病院の診療情報を見ることしかできず、一方通行になってしまいます。双方向の情報連携という点を考えると、診療所側からも診療情報が連携可能な電子カルテが必要になる場合もあります。
当面は紹介状のデジタル化から情報連携が進むことが予想されますので、まずは電子カルテを導入して、紹介状の作成を効率化してはいかがでしょうか。電子カルテでは、カルテの内容を簡単に「コピー&ペースト」したり、定型句を登録することで入力を簡素化したりできます。また、紹介状をはじめとする文書作成に便利な機能が搭載されています。
今後は、在宅医療の推進が国家政策にもなっていることから、医療機関だけでなく、介護施設との連携が増加しています。在宅医療での多職種間の情報連携が重要になっていくことからも、電子カルテ導入の重要性は高まっていくことが予想されます。
著者紹介
大西大輔(おおにし だいすけ) メディキャスト株式会社 メディプラザ統括マネージャー
2001年一橋大学大学院MBAコース卒業後、同年日本経営入社。2002年に医療機関の“選ぶ”を支援する展示場「メディプラザ」の1号店を東京(神田)に立ち上げ、その後2003年にメディプラザ大阪、2005年にメディプラザ福岡を順次開設。2007年より東京・大阪・福岡の3拠点を統括する統括マネージャーに就任。専門の医療IT分野については、医師会、保険医協会などの公的団体を中心にセミナー講師を多数実施。
【関連サイト】
ITを活用した経営改善・業務効率化が実現できるショールーム「メディプラザ」
医師の右腕を育成する「電子カルテ+クラーク養成講座」
医療機関のための製品導入事例紹介サイト「事例Plaza」
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