PC向け「バックアップ」「ファイル同期」ツールは一緒になる運命か境界は既に曖昧だが、それぞれ機能不足

データ保護製品とファイル同期/共有製品の境界は曖昧になってきている。その原因の1つは、データ保護製品がPC以外のさまざまなデバイスからも保護されたデータにアクセスできるようにしていることにある。

2014年10月22日 12時00分 公開
[George Crump,TechTarget]

 クライアントPC向けのデータ保護製品(バックアップなど)とファイル同期/共有製品の境界は曖昧になっている。その原因の1つは、データ保護製品がPC以外のさまざまなデバイスからも保護されたデータにアクセスできるようにしていることにある。だが、どちらの製品も両分野の全ての要件は満たしていないのが現状だ。

クライアントPCのデータ保護要件

 データ保護製品では、クライアントPCを特定の時点に復元するバックアップ機能が必須である。大半のデータ保護製品は、データをブロックレベルでバックアップする処理方法を取っている。データのバックアップ時に必要な帯域幅を最小限に抑えることが可能で、エンドポイントに対するデータ保護には最適な仕組みといえる。

 通常、データ保護製品は、バックアップ処理を開始する前にバックアップ先ストレージのスナップショットを作成する。それにより、複数時点のバックアップと複数バージョンのファイルが保管されることになる。

 クライアントPCのデータ保護にはもう1つ重要な要件がある。それは端末にある全てのデータが適切に保護されていることだ。それにはシステム状態ファイルも含まれる。システム状態ファイルがなければ、不具合が発生したり紛失/盗難に遭ったりした際に、クライアントPCの復旧が非常に困難になる。多くの場合、一から再インストールしなければならないだろう。つまり、業務で利用するアプリケーションや会社固有の設定を再度読み込んだり、個人設定を構成する手作業が必要になる。

 理論的には、ファイル同期/共有製品の同期機能でも、データ保護機能が提供されるのが望ましいだろう。実際、上述した基本的な要件の一部は満たしている。例えば、ファイル同期/共有製品は、クラウドにデータをコピーできる。また、特定ファイルの複数バージョンを管理することも可能だ。ただし、この機能が使えるのは大抵の場合、その製品が作成した特殊な単一ディレクトリに限られる。また、システム状態ファイルを取り込むことができる製品はごく少数である。

 データ保護製品は、システムの置き換えなどをした後に、システム全体の「ベアメタル復旧」を容易に実行できることが望ましい。ベアメタル復旧用の起動ディスクやサムドライブの作成が必要になることが多い。これにより、保護されたデータにアクセスできるクリーンな状態のPC環境を構築できる。一方で、多くのファイル同期/共有製品には、こうした復旧機能が備わっていない。そのため、複数のディレクトリをバックアップするように製品の構成を変更できても、ベアメタル復旧を実行する機能は提供されない。

ファイルの同期と共有に関する要件

 ファイル同期/共有製品を導入すれば、ユーザーはどのデバイスからでも同じデータにアクセスできるようになる。スマートフォンやタブレットからのアクセスも可能だ。また、データにはどこからでもアクセスできる。企業のVPNやファイアウォールを経由する必要はない。また、データを他ユーザーと共有する機能も用意されている。社内だけでなく社外のユーザーと共有することも可能だ。企業向けのファイル同期/共有製品では、セキュリティと管理機能が備わっている。

 ファイル同期/共有製品は、ユーザーがそのシステムを意識せず、シームレスに使える必要がある。データ保護製品に追加された大半のファイルの同期/共有機能では、この点が欠落している。データ保護製品の中には、どこからでも、どのデバイスからでも保護されたデータにアクセスできるようにするものもある。だが、ファイル同期と称している処理の実態はバックアップ処理であることがほとんどだ。どのデバイスからでもアクセス/共有できる機能は、このようなバックアップされたファイルがベースとなっている。困ったときには、この機能が重宝するかもしれない。だが、この機能はシームレスに提供されていないことが多い。また、ファイルの同期/共有にバックアップを活用することで生じる追加の手順に抵抗を示しているユーザーも少なくない。

類似性がもたらすメリットとデメリット

 データ保護製品とファイル同期/共有製品はいずれ衝突することになるだろう。だが、前述の短所を踏まえて、IT部門には両方のテクノロジーを導入することをお勧めする。

 ただし、両方の製品を導入するというアプローチには問題がある。この2つのプロセスでは、間違いなく同様のデータセットを保護し、処理したデータを2つの異なる領域に保管することになる。そのため、コストが掛かり、複雑さが増すことは避けられない。IT管理者が同期/共有しているファイルデータをバックアップ対象から除外することは可能だ。しかし、それで節約できる1ユーザー当たりの領域は微々たるものだ。また、ベアメタル復旧を実行するときには、2段階の手順を踏む必要が生じるというデメリットもある。まずクライアントPCを復旧してから、ファイル同期/共有製品と同期しなければならなくなる。

まとめ

 現時点では、データ保護とファイル同期/共有は個別のプロセスとして扱うべきだろう。この2つのテクノロジーには明らかな重複があるが、冗長性は必要だ。最終的に、この2つのプロセスは1つのプロセスに融合されるだろう。だが、その実現には年単位の時間を要するかもしれない。

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