「Amazon Zocalo」は暗号化キーに課題か
Amazonの新ファイル共有サービスが「Dropbox」にどうしても勝てない理由
米Amazon Web Servicesは企業向けのファイル同期/共有の市場に参入すること表明している。だが、セキュリティと暗号化に関する懸念により、その地位を確立できない可能性がある。
企業向けファイル同期/共有サービスの市場に米Amazon Web Services(以下、Amazon)が投入したサービスの名前は「Amazon Zocalo」(以下、Zocalo)だ。Zocaloは、IT部門による管理統制機能、フィードバック機能、任意のデバイスからデータにアクセスする機能が用意されている共有ストレージサービスだ。ZocaloのリリースによりAmazonは、競合が増加の一途をたどるファイルの同期/共有、企業向けコンテンツ管理/連係、ストレージ関連製品市場における一番新しい参入企業となった。
米Dropboxの「Dropbox」、米Boxの「Box」、米Googleの「Googleドライブ」は、こぞって企業向け機能の増強を図っている。また、米Microsoftは「OneDrive for Business」を強力に売り込んでいる。米VMwareの「Secure Content Locker」を採用した米AirWatchの「AirWatch」と米Citrix Systemsの「Citrix ShareFile」は規模の大きなモビリティ製品/サービスだ。さらに米Appleは「iCloud Drive」をリリースして、この戦いに最近参入したばかりだ。
Zocaloでは、管理者に監査ログと共有/ストレージの場所に対する制御権が提供される。また、既存の企業ディレクトリとの統合機能を使用することもできる。ファイルは複数のデバイス間で同期される。そのため、ユーザーはドキュメントに対するフィードバックを依頼して管理することが可能だ。
だが、Zocaloの暗号化キーを誰が所有するのかという事実はIT部門がZocaloの使用に対する興味を失わせる可能性がある。
Amazonのゼネラルマネジャー、ノア・アイスナー氏は「Zocaloの暗号化キーはサーバ側に保存され、『Amazon Web Services』(以下、AWS)が暗号化キーを所有する」と述べている。この事実によりZocaloが市場で成功する見込みがなくなる可能性もある。現状では、悪意のあるユーザーが暗号化を解除すれば企業のデータにアクセスできるようになるからだ。
サーバ側で暗号化が行われるという事実は多くの中小企業にとって問題ないことだろう。だが、コンプライアンス上の理由から、大企業は暗号化キーを保持していなければならない。ある情報筋によると、いずれAWSではクライアント側で暗号化キーが提供されるようになるという。ただし、クライアント側で暗号化を行う必要があるIT担当者は、それまで待たなければならない。
米コネティカット州を拠点とする金融サービス企業でIT部門のマネジャーを務めるマイケル・アルド氏は次のように話す。「暗号化キーを保持できないのなら、製品を検討することすらできない。当社にとって暗号化キーを保持できないことは致命的な問題だ」
暗号化キーの所有者が不明瞭だと大企業でZocaloが検討対象から外れる要因となる可能性がある。その一例は英メディア企業News UKだ。「政府機関からデータの要請があった場合、自分たちが暗号化キーを所有していなければアクセスを阻止することはできない」と同社のIT部門でマネジャーを務めるマイケル・クルセジャ氏はいう。
ZocaloはDropboxとGoogle Appsのハイブリッドか
暗号化に関する懸念はさておき、Zocaloのエンタープライズ機能は魅力的だ。Dropboxよりも検討の価値がある。
米ニュージャージー州のプリンストンにあるEducational Testing Services(ETS)でリードソフトウェア開発者を務めるダニエル・サドリー氏によると、Zocaloには同社が現在コンテンツとドキュメントの管理に使用している「Microsoft SharePoint」に太刀打ちできるだけの価値があるという。
「Zocaloには冗長性とバックアップ機能がある。当社では、このような機能を備えたサービスを探していた」(サドリー氏)
米ミシガン州アン・アーバーを拠点とするライブラリテクノロジプロバイダーのProQuestでも、SharePointからZocaloへの移行を検討している。その理由は同社の環境でSharePointの実装がひどい状況にあるからだ。「うまくいけばZocaloでは統合が改善される」とProQuestのクラウド/仮想化システムのエンジニア、ティモシー・J・パタスン氏は話す。
そして次のように続ける。「当社は『Amazon Workspaces』の調査に多大なる投資を行ってきた。そのため、Zocaloは魅力的な選択肢だ」
他のIT担当者も、ZocaloがDropboxと「Google Apps」の両方の特性を兼ね備えていることに感銘を受けている。Zocaloはひっきりなしに行われる添付ファイル付きのメールの送受信によって発生しているメールサーバの障害を回避するのに役立つ。
要求水準を上げるZocalo
カナダのトロントにあるConstellation Researchでバイスプレジデントと主席アナリストを兼任するアラン・レポフスキー氏は次のように述べている。「ファイル同期/共有の市場では多数のベンダーが差別化に躍起になっている。その中で、Amazonは同社のAWSプラットフォームのストレージとセキュリティという大きな強みを持っている」
「ZocaloのAPIが公開されたら、Zocaloは開発者がファイルの同期/共有機能をアプリケーションに追加する強力なプラットフォームになり得る」とレポフスキー氏はいう。
「規制が厳しい業界では、Zocaloの監査機能がZocaloの使用を検討する理由となる可能性がある」と米マサチューセッツ州フラミンガムにあるIDCでアナリストを務めるラリー・カルバリョ氏は指摘する。
同氏によると、Amazon WorkSpacesユーザーには50GバイトのZocaloのストレージが無料で提供される。これはAWSが新しい機能を使用して既存の製品/サービスを拡張できることを示している。
Zocaloでは、1ユーザー当たり月額5ドルで200Gバイトのストレージが使用できる。また、Amazon WorkSpacesで提供される50Gバイトの無料ストレージより大きなストレージが必要な場合、Zocaloでは1ユーザー当たり月額2ドルで最大200Gバイトのストレージを使用することが可能だ。
他のサービスと比較してみよう。「ビジネス向けDropbox」のストレージは1Tバイトからで、最小ユーザー数は5ユーザー、1ユーザー当たり月額使用料は15ドル(1500円)だ。5ユーザーのチームの場合は年間使用料が795ドル(7万5000円)となる。追加1ユーザーにつき年間125ドル(1万5000円)のコストが発生する。BoxのBusiness版でも1Tバイトのストレージが1ユーザー月額15ドル(1800円)で提供されている。最小ユーザー数は5人だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー