ビジネス向け機能を全力で強化
密かに激化するオンラインストレージ戦争 「Dropbox」の負けられない戦いとは
コンシューマー向けのイメージがなかなか拭えないDropboxが、エンタープライズ市場を狙い、ビジネス向けバージョンに重要な管理機能を追加した。
米Dropboxは、一般ユーザー向けというイメージをなかなか拭えず、企業向けファイル同期/共有サービス市場で苦戦しているが、最近、企業のIT担当者にアピールすべく同社の「ビジネス向けDropbox」(英語名:Dropbox for Business)に重要な管理機能を追加した。
ユーザー(同社発表では世界全体で2億7500万人)にとって最も大きな変更は、どの端末からも個人用とビジネス用の両方のDropboxにアクセスできるようになった点だ。これまでより統一感のある方法で、それぞれのDropboxにつないでファイルを閲覧できる。
「これを実現するために、ビジネス向けDropboxばかりでなくDropboxそのものも再構築することになった」と、Dropboxのドリュー・ヒューストンCEOは2014年4月9日(米国時間)に開催された新機能発表プレスイベントで語った。
管理者は、従業員が退職した場合にビジネス向けDropboxのユーザーファイルを削除したり割り当てをし直したりできるようになった。データが危険にさらされた場合は、ビジネス向けDropboxのフォルダーを遠隔消去でき、共有監査ログでデータのアクセス履歴を確認できる。
同社は、“Project Harmony”と呼ばれるコラボレーション機能の計画についても発表した。この機能では、同じファイルを異なるネイティブアプリケーションで編集したり、ユーザー間で話し合いをしたり、またどこからでもファイルを同期することができる。2014年のうちにこの機能の提供を開始するという。
Project Harmonyは、「Microsoft Office」製品の互換性から着手する予定だ。先のイベントでは、「Microsoft PowerPoint」を使うProject Harmonyのデモが披露された。同社によれば、将来は他のアプリケーションにも対応していく予定だという。
Dropboxの進撃は製品アップデートにとどまらない。同社は2014年4月17日(米国時間)、文書編集とコラボレーションのサービスを提供する新興企業の米Hackpadの買収で合意したと発表した。Hackpadの専門は、メモやファイル共有、文書への同期コメントのコラボレーションサービスで、DropboxのProject Harmony機能に近い。
Dropboxには何年も前からセキュリティ上の懸念が持たれており、これらの新機能が企業のIT担当者に魅力として映るかどうかは分からない。しかも、クラウドストレージやファイル同期/共有サービスの市場は激戦区だ。とはいうものの、ユーザー数2億7500万人を誇る企業ともなれば、IT管理者が好むと好まざるとにかかわらず、エンタープライズ市場に一石を投じることになるだろう。
IT管理サービスプロバイダー米Tech Superpowersの創業者マイケル・オー社長によると、Dropboxが与える影響は、米Appleの「iOS」端末が数年前からビジネスに与え始めた影響と比べることができるという。
iOS端末で業務データを扱うことが増え、IT管理者はモバイル端末の管理を迫られた。それと同じように、管理者はDropboxのようなサービスを行き来するデータも管理しなければならなくなる。
「大企業のように大勢の従業員がDropboxのアカウントを持っている場合には、ビジネス向けDropboxや同等のサービスの導入を真剣に検討する必要がある」(オー氏)
Dropboxは、エンタープライズ分野への注力を人事面でも示している。2013年に米Salesforce.comの元上級副社長ロス・パイパー氏を迎え、最近では、米VMwareの製品管理担当上級ディレクターだったロバート・ベースマン氏を起用している。
Dropboxの残された課題
いずれにせよ、Dropboxが企業を対象にサービスを提供しようとするなら、IT担当者のお眼鏡にかなうものでなければならない。米国の公益事業会社でIT管理者を務めるマット・コシュト氏によると、Dropboxはエンタープライズビジネスを重視してこなかったため、米Boxの「Box」や米Citrix Systemsの「ShareFile」などの競合製品と比べ、後れを取っているという。
IT管理者にとっては、クラウドに置くデータをしっかり管理できることが重要であり、それが確実にできないものは、なかなか選ぶ気にはなれない、とコシュト氏は述べた。
「機密情報をクラウドに保管するなら、自分の鍵で暗号化したい」(コシュト氏)
Dropboxは、保管するファイルの暗号化に256ビットAES(Advanced Encryption Standard)暗号化方式を採用し、データ転送にSSL(Secure Sockets Layer)プロトコルを使用している。だが、Dropboxも、「Heartbleed」バグ問題の影響を受けた多数の会社の1つであり、アップデートをブログに投稿しただけで、ユーザーに対して即座に直接警告しなかったことで批判を浴びた。
今日のIT環境では、Dropboxのような会社は、セキュリティと脆弱性についてどれほど気を配っても足りないくらいだ、とオー氏は言っている。
「1つの間違いで大量のユーザー名が盗まれるようなことがあれば、企業に相手にされない」(オー氏)
Dropboxの最大の競争相手とみられているBoxは、最近エンタープライズ向け機能を幾つか追加した。その1つである「Box View」では、クラウドベースでPDFやMicrosoft Officeドキュメントを閲覧でき、ファイルをWebやモバイルで閲覧できるようにHTMLに変換する。コシュト氏によれば、Boxはここ数年をかけて、企業にアピールする機能を開発してきたという。
「(新しいビジネス向けDropboxは)監査証跡や遠隔消去ができるものの、それを除けば個人向けDropboxとほとんど変わらない」(コシュト氏)
この分野では、VMwareに買収された米AirWatchの「Secure Content Locker」、米MobileIronの「Docs@Work」など競合製品がひしめいている。他にも、米Accellion、米Acronis、米AppSense、米Soonr、米WatchDox、米FilesAnywhere、米Biscom、米Novellなども、Dropboxと類似の機能を提供している。米Microsoftも最近、同様の製品「OneDrive」をアップデートした。
ビジネス向けDropboxは、トライアル版を14日間無料で試用できる。購入時の価格モデルは2種類あり、1ユーザー当たり月額15ドル(5ユーザーから)、あるいは5ユーザー当たり年額795ドルで、1ユーザー追加するごとに年額125ドルずつ追加される。容量プランは1000Gバイトからだ。
Dropboxからのコメントはなかった。
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