マクロで捉える OpenStackソリューション選定【第2回】
OpenStackの主要ベンダーを3つに分類、長く付き合えるのはどこ?
OpenStackに関するベンダーを3つのグループに分け、各グループの特徴を深堀りする。重視すべきはビジョンとバリューチェーン。選定に当たっては、長期的な関係を築けるか否かを意識しよう。
第1回「“マルバツ表”だけでは分からない、OpenStackディストリビューション選びのコツ」では、OpenStackの導入を検討する際、安易に製品の比較表を作るのではなく、長期的な視野でベンダーを含めて評価すべきだという理由を説明した。加えて、OpenStackのディストリビューション、アプライアンス、バンドル製品を提供するベンダーは3つのグループに分けることができ、そして、重視すべきはビジョンとバリューチェーンであることを述べた。
ビジョンとは「どのように利益を上げようとしているか」、バリューチェーンとは「製品を顧客に届け、その運用を支える体制、価値連鎖ができているか」である。変化が激しく、ベンダーにとって投資分野であるOpenStack、ひいては“クラウド+オープンソース”の世界では、この2つの特徴はベンダーと長期的な関係を築く上で評価すべきポイントだ。これを受け、今回は各グループの特徴を深堀りする。
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ベンダーは3グループに分類できる
まずは3つのグループをおさらいしよう。
1.オープンソースディストリビュータ型
従来、オープンソースを商用サポート付きで販売しているベンダー群。Linuxのディストリビュータが多いが、OpenStackに特化したディストリビュータも現れている。
2.総合ベンダー型
ハードウェア、ソフトウェア、サービスをトータルで提供できるベンダー。ディストリビューションだけでなく、ハードウェアとパッケージしたアプライアンス製品を提供するベンダーもある。
3.オーバーレイ型
OpenStackと同様の機能を有する製品を持ち、パッと見競合にも見えるが、OpenStackとも組み合わせて提供できるベンダー。例えば仮想化基盤が主力製品であり、それを制御するインタフェース部分にOpenStackを選ぶ、かぶせることができるなど。
この3グループのビジョン、バリューチェーンの概要は以下のようになる。
| グループ | ビジョン | バリューチェーン |
|---|---|---|
| オープンソース ディストリビュータ型 |
・OpenStackディストリビューションの販売 ・他OSS製品とのバンドル、付加価値向上 |
パートナー中心 |
| 総合ベンダー型 | ・OpenStackディストリビューションの販売 ・自社開発製品とのバンドル、付加価値向上 ・サービス、インテグレーション案件の獲得 |
自社提供 |
| オーバーレイ型 | ・自社開発製品とのバンドル、付加価値向上 | パートナー中心 |
では、各グループについて具体的に説明したい。
1.オープンソースディストリビュータ型
米Red Hat、独SUSE、英Canonical(Ubuntuの開発をリード)など著名なLinuxディストリビュータがこのグループに入る。オープンソースを看板にするベンダー群であり、ビジョンは一見分かりやすい。
このグループがOpenStackに取り組む背景に、主力ビジネスであるOSへの期待の低下が挙げられる。筆者は、OSが解決すべき課題はまだ多く、革新の必要性を感じている。しかし、ユーザーの声を聞くと、PaaS(Platform as a Service)/SaaS(Software as a Service)によるOSのブラックボックス化や無償OS活用への期待は想像以上であり、ユーザーの既存OSへの投資の優先度が下がっている感は否めない。また、以前から続くハードウェア規模と連動した値付けにも不安がある。ハードウェア性能の向上によって、OSの市場規模は小さくなっていくからだ。
従って、OSビジネス依存からの脱却が、このグループのビジョンと言っていいだろう。OpenStack自体の販売、OSとのバンドル、他オープンソースミドルウェア、アプリケーションを組み合わせた提案によって、ビジネスを伸ばす狙いがある。
このグループの大きな強みは、オープンソースビジネスの経験だ。オープンソースを製品として回していくサイクルを熟知している。開発コミュニティーとの付き合い方、バージョンアップやサポート終了対応など、これまでOSビジネスで何度もそのサイクルを回している経験は大きい。
一方でこのグループは、日本において販売と高付加価値サポートを中心にビジネスをしているため、バリューチェーンの中でユーザーに深く関与する設計、構築、保守フェーズをパートナーに頼るケースが多い。選定段階で優秀なプリセールスエンジニアが対応することもあるが、その後のデリバリー体制を確立できるか、製品ベンダーが示したアイデアをパートナーが実現できるか、確認が必要だ。
なお、OpenStackに特化したディストリビュータも存在する。その例が米Mirantisだ。構築サービスで得たノウハウを製品にフィードバックする取り組みが特徴で、簡単に使えるインストーラの評価が高い。主戦場である北米ではその構築サービスが強みであるが、日本市場には2015年に参入したばかりである。今後どのようなバリューチェーンを作っていくか、注目したい。
2.総合ベンダー型
米Hewlett Packard Enterprise(HPE)、NECなどがこのグループに入る。OpenStackディストリビューション製品、OpenStackと自社製品を組み合わせたアプライアンス、パッケージ製品などを持ち、それをデリバリーするサービスを提供できるベンダー群である。
このグループのビジョンは、やや分かりにくい。
総合ベンダーは大きく分けてハードウェア、ソフトウェア、サービスの事業を有している。そのうち、どの事業がOpenStackとの相乗効果を狙っているかがポイントになる。対外的には、“全社的な取り組み”と表現されることが多いが、実態をつかむ必要がある。社内競合がある可能性も否めない。
実態をつかむ1つの方法として、OpenStack製品を担当している部署がどの事業部に属しているかを確認するのがよい。ハードウェア事業系であれば、ハードウェアビジネスとの相乗効果を期待しているだろう。長期的なWin-Winの関係を築くために、ベンダーの狙いは確認しておいた方がいい。
一方、総合ベンダーの強みはバリューチェーンにある。平たく言えば、人に投資をしており、デリバリーフェーズで頼りになる技術者が多い。
日本では、日本ヒューレット・パッカードがOpenStackのエキスパート部隊を組織化している。また他では、NECがOpenStackの開発コミュニティーで活躍しているメンバーを多く有している。アップストリームへの貢献を行う開発者であり、個別案件のデリバリーをミッションとはしていないようだが、横のつながりでデリバリー案件へ好影響を与えている印象がある。
3.オーバーレイ型
代表例は米VMwareだ。実績ある主力製品とOpenStackを組み合わせて提供するグループである。VMwareであれば、仮想化基盤である「VMware vSphere」にOpenStackをかぶせ、OpenStackをインタフェースとしてvSphereを利用するイメージだ。
このグループのビジョンは、主力製品の付加価値向上である。オープンなインタフェースを備えることで、主力製品のユーザー層、活用法に広がりを持たせることが狙いだ。例えば、営業のアプローチ先をインフラ担当ユーザーだけでなく、オープンソースの活用を好むアプリケーションデベロッパーに広げたいなどだ。
オープンソースディストリビュータ型と狙いは似ているが、大きな相違点は主力製品がオープンソースではないことである。また、OpenStackにこだわる必要がないこともポイントだ。OpenStackが顧客要望に沿わない案件では、従来の主力製品に絞った提案に切り替えればよく、柔軟だ。半面、OpenStackへのコミットメントは弱い。OpenStackのコア機能をカバーできているか、サポートできる技術者が十分かを確認したい。
そして、このグループの製品をデリバリーするのは、これまで主力製品で関係を築いてきたパートナーが中心となる。
システムインテグレーター(SIer)を中心としたデリバリーパートナーにとっては、これまで説明した他グループの製品も加えた選択肢がある。新しい市場であるため、製品ベンダーの本気度、コミットメントは評価したい点だろう。市場が本格化していく中、デリバリーパートナーがこのグループをOpenStack製品ベンダーとしてどう位置付けるか、注視したい。
良しあしではなく、合うかどうか
それぞれのグループに特徴があり、その価値を決めるのは選定者および選定者のおかれた状況次第である。ベンダーとコミュニケーションする際、背景知識としてこのグループ分けと特徴が役に立てば幸いである。繰り返しになるが、製品の細部にこだわり過ぎず、長期的なパートナーシップを作れるか否かを意識してほしい。
次回は、選定の進め方、ベンダーの巻き込み方を、実際にあったエピソードを交え紹介したい。
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マクロで捉える OpenStackソリューション選定
当連載はエンタープライズ、中でもベンダーの協力を得てOpenStack環境を構築しようと検討しているユーザー企業を対象に、「どのような観点でベンダーを選定し、協力関係を作り上げ、活用するか」をテーマに、実践的な情報をお伝えしたい。主な対象は、OpenStackそのものを提供するディストリビューションやアプライアンスである。
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