機密データを公にさらす
バックアップが役に立たない? 新型ランサムウェア「ドキシウェア」の脅威(1/2 ページ)
新型のランサムウェアだといわれる「ドキシウェア」は、従来のランサムウェアと何が違うのか。専門家の声を基に、その実態を探る。
身代金要求型マルウェア「ランサムウェア」の脅威が広がり続けている。脅迫型ランサムウェアの「エクストーションウェア」(Extortionware:脅迫やゆすりを意味する「エクストーション」から派生)に加え、そのエクストーションウェアにひねりを加えた「ドキシウェア」(Doxware:他人の個人情報のさらし行為を意味する「ドキシング」から派生)が登場している。ドキシウェアは、被害者が所有する機密データを漏えいさせる恐れがある。
近頃では、企業を震え上がらせる最も簡単な方法は、ランサムウェアの脅威を発表することだ。ドキシウェアは、憂慮すべき新たなランサムウェアなのか、エクストーションウェアの分類が再定義されただけなのか、専門家も確信を持てずにいる。
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ランサムウェアにどう対処すべきか
「ドキシウェア」とは何か
ドキシウェアとエクストーションウェアは、表面的には同じものに見える。一般的なランサムウェアは、身代金が支払われなかった場合にデータを公開するのではなく、永久に暗号化する。一方でドキシウェアやエクストーションウェアは、データを人質に取る一般的なランサムウェアの性質に、身代金を支払わなかった場合にデータを公開するという“脅し”の要素を加える点で共通している。そのためドキシウェアとエクストーションウェアという2つの用語は区別なく使用できると考えられており、実際そのように使用されてきた。
「これまでエクストーションウェアと呼んできたものと、ドキシウェアの間に差はないと考えられる。エクストーションウェアにもっと良い名前を付けただけという印象だ」。米サンフランシスコの脆弱(ぜいじゃく)性対策ベンダー、BugcrowdでCEOを務めるケーシ・エリス氏はこう述べる。
米メリーランド州ベゼスタの不正侵入防止システム(IPS)ベンダーFidelis Cybersecurityで脅威システムマネジャーとして働くジョン・バンベネク氏は、セキュリティの脅威に適切な分類名を付けることには意義があると話す。「脅威の呼び方は数年単位で変わってきた。セキュリティコミュニティーが犯罪性の高まっている脅威への関心を高めようとしていることが要因の1つだろう」(バンベネク氏)
ドキシウェアが、エクストーションウェアをはじめとする従来のランサムウェアと大きく異なる点は何か。米カリフォルニア州サンマテオを拠点とするセキュリティベンダーExabeamで脅威研究部門のディレクターを務めるバリー・シュタイマン氏は「ドキシウェアの場合、ランサムウェアへの対策として従来使われていたバックアップの作成が意味を成さないことだ」と指摘する。
ほとんどのランサムウェア攻撃では、企業が適切なバックアップによる対策を取っていればデータを復旧できる。一方でドキシウェアの場合は、早期発見と軽減策が重要になる。シュタイマン氏は「攻撃者が実際にデータを手中に収めていて、それを悪用することをいとわない場合、バックアップからデータを復旧しても役に立たない」と語る。同氏はドキシウェア対策として「Data Loss Prevention」(DLP)を挙げる。「DLPにより、持ち出されたデータの有無を把握できる」(同)
米カリフォルニア州アーバインにあるマルウェア対策ベンダーCylanceの上級研究者ジム・ウォルター氏によると、エクストーションウェアとドキシウェアに大した違いはないという。ウォルター氏は「ドキシウェアは、特定のデータを広く公開するといった点で多少ターゲットを絞っている可能性があるが、その点を除けば仕組みも根本的な部分も同じだ。コードに関して目新しいことは何もない」と同氏は語る。
バンベネク氏は、このターゲットの微妙な差がランサムウェアの進化では重要だと主張する。「従来のランサムウェアでは一面を“焼け野原”にするようなスパムが広がる傾向にあり、特定のターゲットを引き付ける特別な作り方はされていない」(同氏)
ドキシウェアは従来のランサムウェアよりも高額な身代金を要求する傾向がある。データの公開を盾にして被害者を脅すエクストーションウェアとは異なり、ドキシウェアは機密データを保有する個人または企業をターゲットにしたり、機密データを見つけた場合に標的に対する身代金をつり上げたりする。
Dellの顧客向けセキュリティソフトウェア部門で統括責任者を務めるクリス・バーチェット氏は「ドキシウェアは、広範囲に感染が広がる恐れのあるエクストーションウェアの新しいアプローチだ」と語る。バーチェット氏によると、以前ならドキシング(さらし行為)は標的型攻撃の一要素として実行されることが一般的だった。一方でドキシウェアは、大勢をターゲットにするフィッシング攻撃の性質を持ったランサムウェアモデルを使用する。
ドキシウェアによる攻撃は、データを暗号化して、暗号化を解除する鍵を入手するための支払いを強要するだけではない。攻撃者はターゲットのデータを持ち出して調べて、ドキシングの標的にできるかどうかも確認する。攻撃者がこのようなことをするのは、バックアップ製品の導入によって、ターゲットが身代金の支払いを拒否するようになってきたからだという。「悪意のある攻撃者は、大勢にフィッシング攻撃を仕掛けることで、効率的にドキシングのターゲットと攻撃材料を得るための土壌を作っている」(バーチェット氏)
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