検討事項を整理する
SSDの性能と寿命を劇的に変える重要指標、注目すべきは?
SSDのパフォーマンスと寿命の判断基準はIOPSとレイテンシだけではない。ドライブのアーキテクチャやストレージコントローラー、書き込み増幅についても確認しておく必要がある。
ベンダー各社が企業向けソリッドステートドライブ(SSD)のパフォーマンスを宣伝するとき、スループット、レイテンシ、IOPSを主な指標としている。だが、パフォーマンスと寿命を左右するのはそれだけではない。SSDの構成要素のアーキテクチャや書き込み増幅への対策なども同じくらい重要だ。
現在データセンターで利用しているSSDの多くはフラッシュテクノロジーを採用している。こうしたフラッシュドライブには、データを保存するNANDセルの他、ストレージコントローラー、インタフェース、キャッシュバッファーなどの構成要素があり、それぞれがパフォーマンスに関わる重要な役割を果たしている。
NANDセルテクノロジーの進化はフラッシュドライブの大容量化と低価格化をもたらした。1セル当たり1ビットの情報を記録するシングルレベルセル(SLC)から、1セル当たり2ビットのマルチレベルセル(MLC)、1セル当たり3ビットのトリプルレベルセル(TLC)へと進化した。
TLCのフラッシュドライブはHDDをしのぐほどの大容量を提供する。ただし、SLCドライブと比べるとパフォーマンスが低くなる。新しい3D NANDテクノロジーの製造コストが従来のNANDテクノロジー並みに下がれば、容量とパフォーマンスの両方を提供可能になるだろう。
ストレージコントローラー
SSDのパフォーマンスを考える上ではストレージコントローラーも重要な要素だ。これはファームウェアを実行するドライブ専用プロセッサで、ウェアレベリングやガベージコレクション、暗号化、不良ブロックマッピング、誤り訂正などの処理を制御する。その役割は重要であり、ドライブのI/Oワークロードが増加し、フルキャパシティーで実行する場合でも、全てのストレージ関連処理を適切に実行できなければならない。いずれかがうまく機能しないとSSDのパフォーマンス低下につながる。
サーバとドライブをつなぐインタフェースもSSDの重要な構成要素だ。「Serial Attached SCSI」(SAS)と「Serial Advanced Technology Attachment」(SATA)が広く使われている。一般にSASの方が企業向けの特性を備え、パフォーマンスが高い。
ただし、どちらのインタフェースもストレージのボトルネックになる。そこで、SASやSATAより高いパフォーマンスを実現する「Nonvolatile Memory Express」(NVMe)対応の「PCI Express」(PCIe)接続型SSDが登場している。
企業向けSSDには、ストレージメディアとインタフェースの間にダイナミックRAMインラインバッファーも必要だ。このバッファーの高速キャッシュメカニズムで一時的なデータのステージングとコレクションの領域を提供する。データアクセスと書き換えを効率化して書き込み処理の負荷を抑えるには十分なサイズのバッファーが必要になる。適切なバッファーは高性能SSDに不可欠の構成要素だ。
書き込み増幅
フラッシュドライブのSSDでは、要求された書き込みの数より実際の書き込みの数が多くなる書き込み増幅という現象が発生する。単純にデータを追加したり上書きしたりできるHDDとは違い、SSDにデータを書き込むには他のデータを消去して書き込み直さなければならない。その結果、書き込み数が増幅する。これによってIOPSが増えると、書き込みパフォーマンスが大きく低下する原因になる。
フラッシュドライブでは、データを書き込むための各ページをブロックという単位にまとめている。1つのセルにデータを書き込むには、書き込み先のブロックが空でない限り、ブロック全体を消去しなければならない。その場合、古いデータを退避して元の場所から削除し、新しいデータとともに書き戻す。このプロセスによって書き込み数が増幅すると、SSDのパフォーマンス低下や寿命の短縮につながることになる。
また、SSDでは一般に、書き込みのパフォーマンスを向上させるためにガベージコレクションというプロセスを採用している。これは、データが書き込まれているブロックを前もって解放しておく。そうすることによって、書き込みが発生するたびにブロック全体を消去する必要性が減る。だが、ガベージコレクションプロセスも書き込み増幅の要因となり、適切に行われないと本来の書き込みのパフォーマンスが低下する。
多くのSSDは、セルの早期劣化を防ぐウェアレベリングプロセスも導入している。書き込みを空きブロックに均等に分散して、特定のブロックばかりに書き込みと消去が集中しないようにする機能だ。これもガベージコレクションと同様、書き込み増幅を引き起こすことがあり、実装方式によってはパフォーマンスに影響する可能性がある。
これ以外に不良ブロック管理も書き込み増幅の要因になる。これはデータを保存できないような信頼性の低いセルが含まれるブロックを検出する。また、SSDにデフラグを実行しても効果はないが、読み取り/書き込みのオーバーヘッドにつながる可能性がある。
書き込み増幅を減らし、ガベージコレクションやウェアレベリング、その他のプロセスの影響を抑える方法としてよく使われているのが、使用可能な容量を制限するオーバープロビジョニングという技法だ。例えば、使用可能な容量を75~80%、またはそれ以下に制限する。空き容量の一部を確保することによって書き込み処理の効率が上がり、SSDのパフォーマンスも向上する。
また、インタフェースにも書き込み増幅の抑制に役立つ機能がある。例えば、SATAのTRIMコマンドや、SASのUNMAPコマンドは、既に使用していない、内部的にデータを消去してもいいブロックを特定する。これを利用するとガベージコレクションの処理が減り、使用可能な領域が増えるので、SSDのパフォーマンスが向上する。
データセンターに採用するSSDの選定には、使用可能なサーバやネットワークのリソースと、それらのサーバで実行するオペレーティングシステムも考慮に入れなければならない。それでもやはり、最大の検討事項はSSDの構成要素と書き込み増幅対策だろう。購入するSSDが必要なパフォーマンスを提供できるかどうかを確認するには、こうした項目を押さえておく必要がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[LRM株式会社] 「標的型攻撃メール」事例・サンプル集 -
製品資料
[LRM株式会社] セキュリティ教育はなぜ「年間計画」を立てる必要があるのか? -
製品資料
[LRM株式会社] セキュリティの重要性が伝わらない…… 効果がない社員教育から脱却する方法 -
製品資料
[LRM株式会社] 「標的型攻撃メール訓練」導入ガイド 社員の意識を確実に高める仕組みの作り方 -
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
3
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
4
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
5
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
6
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
7
なぜOpenAIやAnthropicのAIは「脱走」したのか 情シスが迫られるエージェント統制
-
8
Netflixのバックエンドは「ほぼJava」 3000超のアプリを支える開発基盤の裏側
-
9
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
10
「Windows派」「Linux派」を分ける決定的な違い
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー