オンデマンド型データウェアハウジング登場
クラウドベースのBIは受け入れられるか?
AmazonのEC2などのクラウドコンピューティングモデルでは、BIやデータウェアハウスシステムを社内で運用するよりも安価で、かつ迅速にデータにアクセスし、分析することが可能だ。
創業して1年余りのデジタルコンテンツアーカイブベンダーのSonianのインフラは、ほぼ完全にクラウドベースである。社内ではサーバやデータセンター、ストレージを運用していないのだ。同社が利用しているデータウェアハウスプロバイダーのVertica Systemsが5月に分析データベースをオンデマンドで利用できるようにしたとき、Sonianの幹部はためらうことなく、社内のVerticaデータウェアハウスをクラウドベースのバージョンに置き換えたという。
「当社はクラウドベースのアーカイビングソリューションを提供している」とSonianの創業者のグレッグ・アーネットCTO(最高技術責任者)は話す。「Verticaのクラウド版は、コンピューティングやストレージサービスと同じようにサブスクライブできる管理サービスであり、当社のビジネスモデルには最適だ」
Sonianでは、ホスティング型電子メール/IM(インスタントメッセージング)アーカイブサービスを顧客に提供している。ユーザーのメタデータがVerticaのオンデマンドデータウェアハウスにロードされると、SonianはWebベースのサービスを通じて、そのデータをユーザーが分析できるようにする。Verticaのデータウェアハウスは、AmazonのElastic Compute Cloud(EC2)によってホスティングされている。EC2はAmazonのWebサービス事業の一部であり、Verticaのような顧客は、社内のサーバを使用する代わりにAmazonの(言い換えればクラウド内の)サーバキャパシティーをレンタルするのだ。顧客は需要の変動に応じて、レンタルするサーバのキャパシティーを増減することができる。
オンデマンド型ビジネスインテリジェンス(BI)やデータウェアハウジングの支持者によると、クラウドコンピューティングモデルでは、企業がBIやデータウェアハウスシステムを社内で運用するよりも安価で、かつ迅速にデータにアクセスし、分析することが可能だという。加えて、クラウドベースの分析データベースのメンテナンスやアップグレードはホストベンダーが行うため、顧客はITリソースをほかの業務に振り向けることができる。
例えば、「Vertica Analytic Database for the Cloud」では、ユーザーはわずか30分でインターネット上に分析データウェアハウスを作成し、アクセスできるようになる、とVerticaでは説明している。しかも、データセンターのコストが不要になり、分析データベースを社内に配備するのに伴う時間的ロスも避けられるという。SQLベースのデータベースはカラム指向のアーキテクチャを採用しており、Verticaおよび業界専門家によると、これはローベースのデータベースよりも分析機能に適している。
顧客は利用量に応じて料金を支払い、ワークロード需要の増加に応じて追加のサーバ能力を購入できる。「ハードウェアのプロビジョニングや構成を行う必要はない。そしてシステムを利用する必要がなくなったら、シャットダウンして料金の支払いを停止すればいい」とVerticaのフィールドエンジニアリング担当ディレクターのオーマー・トラジマン氏はデモンストレーションWebセミナーで語った。
Verticaのオンデマンド分析データベースの価格は、最大500Gバイトのデータで月額2100ドルから。
オンデマンドデータ分析の市場は小さい
しかしアナリストらによると、オンデマンドデータ分析の市場規模は限られているようだ。Forrester Researchの主席アナリスト、ボリス・エベルソン氏によると、社内のBIアプリケーションとデータウェアハウジングを配備、維持するための資金、インフラおよび社内の人材を持っている大企業は、オンデマンドモデルを採用しない可能性が高いという。
「一方、NetSuiteやQuickBooksなどの単一のアプリケーションスイートだけを運用している中小企業の場合は、必要なBI機能やデータ分析機能はすべて、こういったアプリケーションスイートから得られるだろう」とエベルソン氏は語る。結局、オンデマンド型BIとデータウェアハウスの潜在顧客として残るのは、中堅企業だけということになる。「これらは、単一のIT環境では対応できない規模ではあるが、BIを導入する方法を心得ている高度な専門性を持ったITスタッフを抱えているほど大きな規模ではない企業だ」(同氏)
中堅企業といえども、社内運用型であれオンデマンド型であれ、BIやデータウェアハウスの運用は大きな負担になるため、クラウドベースのデータ分析の魅力はさらに減少する。
「BIは今でも非常に高度な知識を必要とする」とエベルソン氏は話す。「運用するには多数のコンサルタントが必要であり、クラウド内のどこかにホスティングしてもらうにせよ社内で運用するにせよ、まったく同じ困難を味わうことになる。そうだとしたら、BI環境のコントロールをサードパーティーベンダーに委ねる意味があるのだろうか」
同氏によると、大企業における例外の1つは、社内のBIシステムがサポートしていない方法で素早くデータを分析する必要がある“パワーユーザー”だという。このような分析用のオンデマンドデータウェアハウスは、迅速かつ安価に導入することができ、長期的なコミットが求められず、不要になれば簡単に利用を停止できるため、こういったユーザーの目的に適しているかもしれない。IT部門を通じて社内のデータウェアハウスを配備するには時間もかかるし、社内的な調整も必要だ。
全面的にクラウド内でシステムを運用し、ホスティング型コンピューティングに満足しているSonianのような企業も、潜在的な顧客ベースだといえる。Bloor Researchの調査ディレクター、フィリップ・ハワード氏によると、こういった企業は、従来型のITインフラを配備している企業よりも、オンデマンド型BI/データウェアハウジングを受け入れる可能性が高いという。もちろん、クラウドベースのアーキテクチャに全面的に依存している企業はまだ少ない。
クラウドベースのデータウェアハウジングの泣き所
クラウドベースのデータ分析が抱える2つの潜在的欠点がスピードとセキュリティである。エベルソン氏とハワード氏によると、どのようなオンデマンド型BIシステムあるいはデータウェアハウスであろうとも、それにアクセスするのに使用するインターネットコネクションで可能なスピードよりも速くデータをロード、分析することはできないという。
「Verticaは高速ローダーがあると言っていたが、それでもインターネット経由でロードするわけだから、速くなるといっても高が知れている。インターネットが制約要因になる可能性がある」とハワード氏は指摘する。
エベルソン氏とハワード氏はさらに、「企業は平気で社内のデータを自社のファイアウォールで囲まれた安全地帯の外に出し、クラウドの中に漂わせようとするだろうか」と疑問を投げ掛ける。BIの目的に利用されるデータは、企業が保有するデータの中でも特に秘匿性が高いデータである。
「今日、BIは主要なミッションクリティカルアプリケーションの1つだ。一般に企業がSaaS(Software as a Service)クラウドに入れるのは、コモディティとなったアプリケーションだ。BIはコモディティではない。それは非常にプロプライエタリ性の高いデータだ。企業はそれを絶対に誰にも見せたくないため、他人の手にゆだねようとはしないだろう」とエベルソン氏は語る。
「しかしBIシステムやデータウェアハウスを社内でサポートするリソースを持たない中堅企業にとっては、リスクを冒してもクラウドベースのモデルを試す価値があるかもしれない」と同氏。それ以外にはデータベースの中でデータを眠らせておくしか選択肢がない企業の場合は、なおさらそうだという。
Verticaや、ホスティングサービスを提供しているそのほかのBI/データウェアハウジングベンダー(1010dataやKognitioなど)の狙い目もそこにあるのは間違いない。もちろん、これらのベンダーは、従来型のデータウェアハウジング配備モデルを放棄するつもりはないようだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー