落とし穴もあり
今日のコールセンターにおけるSIPのメリットとは
通信制御プロトコルSession Initiation Protocolのメリットと課題、導入に際して考慮すべきポイントについて説明する。
SIP(Session Initiation Protocol)は、VoIPベースのコールセンタープラットフォームで用いられる技術であり、2つの重要かつ非常に実用的なメリットを提供する。第1のメリットは、システムに接続しているユーザーあるいはデバイスの位置と状態を特定できること。2番目のメリットは、異なるコールセンターツールまたはPBX(内線交換機)との間の相互運用性を実現できることだ。この2つのメリットは、企業にとって大きな経費節減につながる可能性がある。複数のACD(Automatic Call Distribution:自動着信呼分配装置)やPBXを配備する必要が少なくなるのに加え、電話料金も節約できるからだ。
SIPの用途とメリット
SIPは優れたコンセプトをベースとする技術であり、SIPを効果的に使うことで、以下に示す素晴らしい可能性を実現できる。
- 世界中に配備されたさまざまなコールセンター技術を容易に、かつ費用効果の高い方法で連携することが可能になる
- 必要なACDの台数を減らすことができるので、技術、メンテナンス、ITスタッフに掛かるコストを大幅に削減できる
- 企業が購入・サポートしなけばならない「エンドポイント」(電話機、PCベースのIP電話、PDA、携帯電話などのテレフォニー対応デバイス)を大幅に減らすことができる(現在では、ビジネスパーソンが高価なデバイスを4台も使っているケースもある)
- リモート(在宅)のオペレーターの配備と管理が容易になる
- エンタープライズルーティングソリューションの必要性が減少するため、電話料金を大幅に削減できる
- 大規模な追加投資なしにディザスタリカバリの強固な基礎を築くことができる
要するに、SIPは素晴らしい柔軟性を備え、今日の多くのTDM(時分割多重方式)ベースのコールセンターの物理的境界と制約を取り払う。
コールセンター業界におけるSIPの課題
SIPベースのコールセンター製品に投資した企業は、上記のメリットの多くを手にしている。しかし、コールセンター業界にとって1つの大きな課題が残されている。しかも、ほとんどのベンダーは、SIPベースのコールセンターソリューションのメリットを語る際に、この課題のことは伏せているのだ。問題は、SIPが真の相互運用性やそのほかのメリットを実現できるのは、単一ベンダーの環境内に限定されているということだ(SIPベースのソリューションの中には、ほかのメーカーの電話機をサポートするものもあるが、その相互運用性のレベルはまだ低い。例えば、PolycomとGrand StreamのSIP電話は、2つのSIPベースのACDで使用できる)。どの製品の間にも相互運用性がないのが、セキュリティ、管理、高度な機能のサポート、コールアカウンティングだ。例えば、あるメーカーのACDからほかのメーカーのACDにコールを送信することができても、その通信をどう扱うかに関する情報は伝わらない。このため、異なるメーカーの複数のACDとPBXを保有している企業は、SIPのメリットを実現することができない。しかしACDを初めて購入する企業や、テレフォニーインフラ全体をリプレースする企業の多くがSIPベースの製品を選んでいるのは、SIPのすべてのメリットを実現できるからだ。
SIPのすべてのメリットを実現したい企業は、テレフォニーインフラ全体を単一ベンダー環境に変換する必要がある。カットオーバーでは、すべてのコールセンターシステム、コールをACDに転送するのに使用するすべてのPBX、そしてすべてのエンドポイント(電話機)がそろっていなればならない。また、音声自動応答システムおよび録音アプリケーションも同時にIP化するのが望ましい。複雑で大規模な運用環境の場合、SIPは技術、キャリア、運用、スタッフに掛かる経費を何百万ドルも削減できる可能性があるものの、初期コストが莫大になることもある。
この問題を明確にするために、例を挙げて説明しよう。今日の多くの金融サービス会社は合併を通じて形成された。金融機関の合併に際しては、Avaya、Nortel、Cisco、InterTel/Mitelなどのメーカーのコールセンター技術やPBXなど、多種多様な技術やシステムが統合された。以前は、これらの金融サービス会社の多くは、既存技術の廃棄・入れ替えをせずに多様なコールセンターシステムを連携するために、エンタープライズルーティング製品を購入した。そしてキャリアやネットワークサービス業者は、異種ACDの間でコールを転送するのに重要な役割を果たした。これは高いコストが掛かる方法だった(現在もそうだ)が、企業は既存技術の大幅な減価償却やサービス中断のリスクを避けることができた。また、キャリアベースのルーティングツールにより、企業は合併に伴う大幅なコスト節減を迅速に実現できた。
SIPの評価プロセス
SIPベースのコールセンターベンダー各社は、SIPベースのプラットフォームに移行することにより、通信システムを簡素化し、ハードウェア投資を削減できると口をそろえる。確かにその通りだが、各社の宣伝文句を注意深く吟味する必要がある。企業のSIP導入戦略の最初のステップは、各種のSIPベースの選択肢と自社の現状を比較するための総合的な分析だ。この分析では、TCO(総所有コスト)、ROI(投資対効果)、ディザスタリカバリプランなどに注目する必要がある。さらに、SIPのメリットの短期・長期的価値、およびSIPによるコスト節約と、この強力な新技術を活用するのに必要な投資との間のトレードオフを数値化する必要もある。
コールセンターにおけるSIPの将来
SIPは、企業がテレフォニーバックボーンを構築する方法を変革する大きな可能性を秘めているが、その最大限のメリットを実現するためには、コール処理、セキュリティ、管理、コールアカウンティングの相互運用性を保証しなければならない。さまざまなフォーラムや委員会がベンダー間の協力を促進するために活動しているが、残された課題は多い。すべての企業がSIPの恩恵を享受できるようにするために、企業はベンダーに対してオープンな標準をベースとするSIP製品を開発するようプレッシャーをかける必要がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
9
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー