中堅・中小企業向けプロダクトレビュー
カンタンBIをさらに導入しやすく――J-SaaS型経営分析ツール「集計SaaS」
「集計SaaS」はJ-SaaSプラットフォーム上で提供されるWeb型データ活用ソリューションだ。Dr.Sum EAの簡易版をSaaS化し、SMBにとって取っつきにくかったBIの導入を手ごろな料金で後押してくれる。
中小企業が簡単に利用できるBIをSaaSで提供
ウイングアーク テクノロジーズの「集計SaaS」は、経済産業省が推進する「J-SaaS」のプラットフォーム上で提供されるWeb型データ活用ソリューションである。
同社は、企業内に蓄積された膨大なデータを簡単に分析・活用できる経営分析・リポーティングソフト「Dr.Sum EA」を既に発売している。このソリューションはパッケージとして提供されているが、これまで2400社、4000本以上の採用実績があり、中堅・中小企業(以下、SMB)向けBI(Business Intelligence)市場においては現在、トップシェア(29.4%)を誇る(ノークリサーチ「2009年 中堅・中小企業 DWH/BIアプリケーション利用シェア」より)。
データ分析といえば、データベースサーバから専用の多次元データキューブを事前に設計して集計する必要があり、SMBのユーザーにはどうしても導入のハードルが高く感じられてしまう。しかしDr.Sum EAは、従来のようなキューブ設計が不要で、元データから動的に集計リクエストを処理できるという大きな特徴を持つ。加えて、導入・運用やコスト面でのアドバンテージを支持する企業ユーザーも多い。今回取り上げる集計SaaSは、このDr.Sum EAの機能を簡易的に提供するサービス製品だ。J-SaaSを利用するSMBにターゲットを絞っている。
現時点でデータ分析に対応しているJ-SaaSのソリューションは、財務会計分野では「勘定奉行 for J-SaaS」(オービックビジネスコンサルタント)、「会計ワークス」(スマイルワークス)、「ネットde会計」(ビジネスオンライン)があり、販売会計分野では「販売ワークス」(スマイルワークス)、「トラックメイトPro」(タイガー)が挙げられる。ただし、これは暫定的なもので、ユーザーのリクエストに応じて、いろいろなソリューションに対応していく方針だ(表1)。各ソリューションとの連携は、1日1回のバッチ処理によってデータを更新する仕組みになっている。そして、これらのデータを素早く集計し、ユーザーが分かりやすいグラフや表形式に整形することで「データの見える化」を支援する。
| 分類 | 製品 | 特徴 |
|---|---|---|
| 財務会計分野 | 勘定奉行 for J-SaaS(オービックビジネスコンサルタント) | 日々の仕訳データを入力するだけで、転記・集計をすべて自動処理。元帳・試算表・決算報告書はもとより管理資料も素早く出力できる |
| 会計ワークス(スマイルワークス) | 日次・月次・決算の3つのメニューで構成し、入力した仕訳から試算表などの集計表を自動作成したり、総勘定元帳や決算書も作成できる | |
| ネットde会計(ビジネスオンライン) | 中小企業だけでなく個人事業主でも利用できる会計ソリューション。「フセン機能」で税理士の確認作業もスムーズに行える | |
| 販売会計分野 | 販売ワークス(スマイルワークス) | 販売・仕入・在庫の3つのメニューで構成。見積書からボタン1つで受注伝票や売上伝票を作成できるほか、集計表から伝票へのドリルダウンも可能 |
| トラックメイトPro(タイガー) | トラック運送事業者向けに開発された総合管理システム。請求業務、傭車管理、車両管理、乗務員管理を行う。オプションで受注配車などにも対応。運用日報を連想させる入力画面は操作が簡単 |
ウイングアーク テクノロジーズ 事業統括本部 Dr.Sum事業部 事業部長の小島 薫氏は、Dr.Sum EAの機能をSaaS化してSMB市場に投入した経緯についてこう説明する。
「現在、中小企業でデータ分析のニーズが高まりつつある。実は企業規模によって蓄積データの内容に大差はなく、分析したいこともそれほど変わらない。ただし、中小企業では大企業のように分析ソフトを購入する予算や余裕がないのが現状。そこで、中小企業マーケットへ安くて手軽にデータ分析が行えるサービスを展開しようと考えた」
機能を絞って安価なパッケージソフトを提供するという手段も考えられたが、やはりデリバリーコストが掛かる。Webで提供した方がコスト効果も高いため、SaaS型での提供に踏み切ったという。
集計SaaSでは、Webによる提供形態である点のほか、従来にない2つの機能が追加されている。1つはテンプレートの提供だ(画面1)。同社 事業統括部SaaS推進室 室長の岩本幸男氏は「データを分析したくても、いざ分析する段になるとどうやればいいのか分からなくなるという声が、中小企業の経営者やユーザーからよく聞かれる。そこで、頻繁に使う分析項目をセットしたテンプレートを用意し、BIの知識がないユーザーでも簡単に扱えるようにした」と語る。
テンプレートは、「どのような項目を利用するのか、その項目に対してどのような条件でデータを抽出するのか、あらかじめ設定してある分析リポート」という位置付け。ただし、その設定は完全に固定されたものではなく、ユーザー側で選択できる自由度もある。小島氏は「サービスを利用している中で、提供されたテンプレートだけでなく、ユーザー独自の分析ニーズが生まれてくるかもしれない。そのため分析リポートの仕様をカスタマイズする支援サービスも用意している」と話す。専門スタッフによる支援のほか、既存システムへの連携や開発トレーニングなどのサービスも提供している。
もう1つ、特筆すべきは「データアップローダ」機能だ。集計SaaSは、前述のようなJ-SaaS対応サービスとともに利用することが前提となるものの、ユーザーの手元にあるローカルなデータを併せて利用したいという要望もある。そこでWeb上にデータをアップロードできるインタフェースをサポートすることで、データ送信の利便性を高めたという。これは、従来のパッケージであればEAI(Enterprise Application Integration)ツールなどで連携する必要がある。
簡易分析を支援するテンプレートとダッシュボード
ここからは、集計SaaSの基本機能について紹介する。具体的に利用するデータは、タイガーが提供する運送管理システムであるトラックメイトProからのものだ。トラックメイトProは、トラック運送事業者向けに開発された特殊な総合管理システムで、請求業務、傭車・車両・乗務員などの管理が行える。運用日報を連想させる入力画面によって簡単に操作できるという特徴がある。
とはいえ、専門性の高い業務であることから、中小企業ユーザー自らが分析画面を作るのは面倒だ。集計SaaSでは、トラックメイトPro用に「車両分析」「乗務員分析」「得意先分析」「営業所別売上」など、よく使われるテンプレートが標準で用意されている(画面2)。まずメニューのテンプレートから「車両分析」を選んで、その集計結果と分析例を見てみよう。
テンプレートには「集計情報調整項目」と「抽出条件」の項目があり、それらをユーザーが選択すると、集計表やチャートがビジュアルで表示され、さまざまな角度からデータを分析できるようになる。例えば集計情報調整項目では、表データの「列」と「行」に対し、どのように出力するといいのかが分かりやすいように各項目が表示される。「集計」では「売上」「経費」「利益」など、実際に表示したい結果を選択できる(画面3)。
この集計表では、列が「年度」、行が「営業所」になっており、選択した集計項目が表示されていることが分かるだろう。年度ごと、営業所ごとに売り上げや利益などを表示できる(この列と行は簡単に入れ替えられる)。さらに抽出条件を選択して必要なデータだけを表示させたり(画面4)、年度データをドリルダウンすることで月ベースの細かい分析も可能だ。ここでは、本社から各営業所にデータを分け、さらに車両ごとに情報を掘り下げて展開している(画面5)。
このような集計結果からデータをふかんすると、あるデータが突出して大きかったり、小さかったりするケースに遭遇するかもしれない。そこで、例えば一定期間あるいはある月の売り上げが落ちていることが結果から判明したとすれば、そのデータから伝票レベルの明細まで下りて調査することができる。従来のデータと比較すると、入力ミスや発注先の減少など具体的な落ち込みの原因も容易に追究できるだろう。
また、これらのリポート結果は、Microsoft Office Excel、PDF、CSVといったファイル形式で出力されるため、集計リポートを組織内で広く共有・活用することも可能になる。データ変換の出力は、アイコンをクリックするだけで済む。PDF形式ではデータの変更や改ざんができないため、同社によると特に保存用や出力用として頻繁に使われるという。
このほか集計SaaSでは、Dr.Sum EAで利用されるダッシュボード機能も提供されている。個別の明細などは現場サイドが使うデータとして出力すればよいが、経営層が意思決定する際に必要なデータは、さらに見やすいようにビジュアル化されていた方が、現場の状況を把握しやすくて便利だろう。集計表だけではなくグラフィカルなチャートでも、図をクリックしてドリルダウンするとデータを細部にわたって確認できる。これにより経営者は、瞬時にKPI(重要業績評価指標)などを確認して問題点を把握し、ビジネスの変化に素早く対応できるようになる(画面6、7)。
企業経営をサポートするBIやデータ分析はこれまで、インフラを用意するのが面倒でコストも掛かるという印象が強かった。実際にBIを導入したいと考えている経営者でも、費用対効果を考えると本当に投資した分の見返りが得られるという確証はなく、導入に二の足を踏んでしまうことが少なくない。その点集計SaaSは、初期費3万円、月額利用料3150円(税込み、1人当たりの利用料)からと、かなりリーズナブルな費用で導入できる。J-SaaSを利用しており、さらにデータの有効活用を考えているユーザーにとって、集計SaaSは一度試してみる価値のあるサービスといえるだろう。
Salesforce.com上に集計機能を連携する事例も
最近は中小企業だけでなく、大企業でもSaaS型の集計ソリューションを採用する機会が増えている。大企業は多くの販売代理店を抱えていたり、倉庫などの物流系を外部に委託している。このような場合、企業内でERPシステムを導入していたとしても、実際にはバッチ処理で外部データを集めることが多く、リアルタイムでの集計は難しい。そこで企業内のERPシステムと販売代理店・委託先の間でデータを素早く集計し、情報を共有できるような仕組みを作る際に、SaaS型の集計ソリューションが活躍する。
例えば、某企業ではSalesforce.com上にDr.Sumの集計機能を連携させるシステムを導入した。これにより、外部の代理店や委託先からSalesforce.comを利用してデータを入力し、企業システム側のフロントエンドに集計結果を迅速に反映できるようになったという。従来の手法であれば、外部の関連会社にもERPを導入し、データ連携の仕組みを構築することになるため、インフラ構築に膨大なコストが掛かる。しかしこの方法であれば、月々わずか数万円程度の出費でリアタイムのデータ連携と集計作業が可能になる。今後もこのような事例が増えてくると予想される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー