“業務改善型”ユニファイドコミュニケーションを導入する【第3回】
距離の離れた社員・外部企業をUCでつなぐ
業務上の問題をユニファイドコミュニケーション(UC)で改善していく本連載。フロアが離れた社員同士、あるいは外部の協力会社との情報伝達をUCでどこまで円滑にできるか解説しよう。
前回の「連絡が取りづらい社員をUCでつかまえる」では、電話取り次ぎの問題をユニファイドコミュニケーション(UC)で解決する方法を紹介した。そこで今回は、フロアが離れた社員同士の連絡や外部パートナー企業との情報共有など、自分の働く場所を越える場合のコミュニケーション課題を挙げ、UCでの改善策を解説していく。
離れた社員間のコミュニケーション基盤を作る
業務課題1:
フロアや事業所が離れた社員とのコミュニケーションを何とかしたい
フロアが離れた社員間のコミュニケーションの問題は、どの企業においても発生し得る。同じフロア内なら、少し席を離れれば連絡を取りたい相手が席にいるのか、あるいは会議中や外出中なのか目視で簡単に確認できるが、フロアが違えばそうもいかない。
それならグループウェアを使って、相手の予定を確認してから電話連絡を取るという方法もある。しかし、スケジュール情報が入力されていなければ、相手の状況を知る手段はない。電話をかけても確実に相手と連絡が取れる保証はなく、結果としてほかの社員に不在時の電話取り次ぎが発生することにもなる。
なお、社員同士が以下のような状況にある場合もこの課題に当てはまる。
- 同じ部署に所属しているが、フロア(事業所)が違う
- 同じ敷地内であるが、ビルが違う
- 同じ部署の社員がビルのどこで仕事をしているのか分からない
業務課題1をUCで解決する方策は幾つか考えられる。以降、それぞれの長所・短所を交えながら挙げていく。
解決策(1)-1:ボイスメール+電話転送による電話取り次ぎ削減
業務課題1の解決策として最も着手しやすいのは、電話取り次ぎの改善である。電話取り次ぎを削減する、もしくは廃止する形でボイスメールを導入するケースだ。このような取り組みは進んでいるが、転送先となる携帯電話をユーザーが持たなかったり、相手がボイスメールを確認するまでは連絡が伝えられないなど、運用上の課題も残る。
解決策(1)-2:PHSまたは携帯電話を内線電話として利用
業務連絡手段として電話を中心に考えた場合、有効なのは固定内線電話を携帯電話(PHSまたは携帯電話)にすることである。ユーザーに提供するデバイスを変更するという、簡易な課題解決策である。しかしこの方法では、電話で連絡が取れない場合の対応策やシステム投資(携帯電話料金やインフラ)などを考慮しなければならない。
解決策(1)-3:プレゼンス+統合コミュニケーションツールの活用
解決策(1)-1、(1)-2で挙げたコミュニケーション改善策は、従来多くの企業で用いられてきたが、いずれも電話が中心となっているために必ずしも課題を解決できていたわけではない。例えば相手が電話中、あるいは連絡が取れない状況にある場合は、別の連絡手段に切り替えなければならない。
そこで、ユーザーが連絡したい相手の状況を確認し、必要なコミュニケーション手段を選択できる仕組みが必要となる。それがプレゼンスとインスタントメッセージングだ。両者を組み合わせることにより、相手の状況(プレゼンス)を確認した後、在席であればインスタントメッセージ、急ぎであれば電話、外出中ならば電子メールというように、必要なコミュニケーション手段を選択できる(図1)。これらを可能にする製品が、プレゼンスを中心に統合されたコミュニケーションツールである。代表的なものに「IBM Lotus Sametime」「Microsoft Office Communicator」「Cisco Personal Communicator」などがある。
ユーザーは、電話や電子メール、ビデオ会議などを、それぞれ独立した環境の中で使い分けてきた。統合コミュニケーションツールは、これらの独立したツールを統合する、効率的なコミュニケーションポータル的な役割を果たす。ユーザーは、このツールを通して必要なコミュニケーション手段を選択し、操作する。
統合コミュニケーションツールの導入により、社内での意思決定の迅速化、組織やチームで連携して業務対応する場合の時間短縮が可能となる。具体的な導入効果は、主に表1のようなものだ。
| 効果 | 業務に寄与する項目 |
|---|---|
| 無駄な電話取り次ぎがなくなる | 業務改善 生産性向上 |
| インスタントメッセージにより迅速な連絡が可能 | |
| プレゼンスにより相手の状況が分かる | |
| 相手の状況に応じて必要な連絡手段を選択可能 | 利便性 |
| インスタントメッセージで電話とメールの中間的な使い方が可能 | |
| ユーザーインタフェースの向上 |
このような統合コミュニケーションツールは、システム機能、ほかのコミュニケーションツールやアプリケーションとの連携、管理面などにより導入する製品が変わってくる(表2)。
| 項目 | 選択ポイント |
|---|---|
| プレゼンス | ・プレゼンスはPC連動か手動なのか ・ほかのコミュニケーションデバイスと連動は可能か ・プレゼンス情報のカスタマイズには対応しているか |
| インスタントメッセージ | ・メッセージのログ機能の有無 ・添付ファイル送信制御の有無 |
| コミュニケーションツール連携 | ・IP電話/ビデオ会議システムとの連携は可能か ・ボイスメールシステムなどの連携は可能か |
| アプリケーション連携は可能か | ・グループウェアとの連携は可能か ・Office系アプリケーションとの連携は可能か |
| クライアント管理 | ・クライアントの統合管理は可能か ・ユーザーに提供する機能の制限は可能か |
社外との迅速な情報共有のためのUC
業務課題2:
社外のパートナーと情報を共有できない
近年はどの企業でも、ビジネス活動を進めるに当たって自社のみで活動が完結することはまれである。各種パートナー(業務委託先や販売店、代理店、製造委託先など)との関係なくしては、ビジネス活動が成立しないといっても過言ではない。従って、ビジネスを進める上でパートナーとの情報共有は不可欠であり、そのスピードを向上させることが企業の競争力となってきている。そしてその情報共有の多くは、対面または電話・電子メールによって行われている。
社外との情報共有の場において、多くの関係者に対して確実かつ同時に伝えたいというユーザーの要求は多い。例えば社内外のセミナーや説明会、パートナー企業との連絡会議などだ。特定の場所で会議が行われることが多いため、参加可能な人数に制限があったり、日程や地理的な事情で出席できないなど、確実、効率的に情報共有を行う上では課題も生じている。電子メールで資料の共有はできても、資料の意図する内容や背景までを多くの人に伝えることは難しい。
このようなコミュニケーション問題の改善に利用されるのが、移動を伴わずに情報共有が行えるビデオ会議システムやWeb会議システムである。
解決策(2)-1:ビデオ会議システムによる情報共有
企業内に導入されているビデオ会議システム(タンバーグ、ポリコム、ソニーなど)を利用して、外部のパートナー企業との情報共有が可能である。同システムを導入している企業は多く、既存の情報基盤を有効活用して音声や映像のみならず、作成した電子文書の共有も行える。接続できるネットワーク(電話回線やインターネットなど)さえあれば、外部企業のビデオ会議システムとの相互接続が可能となる。
ただし、外部企業と接続するためのインフラには当然投資が必要になるため、現状、容易に外部の企業と接続できる企業は限られている。また、接続したい自社の取引先や外部のパートナー企業の事業所にビデオ会議システムが導入されていない、外部企業とのビデオ会議システムの接続が認められないなど、設備上の制約や企業ポリシーによって、内外の情報共有基盤としては限定的な利用状況だ。
解決策(2)-2:Web会議を利用した情報共有
Web会議は、Webブラウザなどを利用して資料共有を行う会議システムであり、多くの企業で使われている。通常は社内での事業所間の情報共有、説明会やセミナーでの利用が一般的である。(図2)。
例えば筆者が所属するネットマークスでも、Web会議システムをメーカーとの情報共有で活用し、コミュニケーション改善や自社の業務改善に役立てている。複数のメーカーから定期的に技術セミナーの提供を受けているが、従来は施設の物理的な問題から会場や参加人数に制約があった。そこでメーカーからの提案により、技術セミナーを順次インターネット経由のWeb会議を利用したセミナーに移行した。一見、このような対応はセミナーの提供者側のみに恩恵があるような印象を受けるが、受講者側においても生産性向上のメリットや副次的な効果が生まれる(表3)。
| 対象者 | 効果 |
|---|---|
| 情報提供者側 | 情報伝達の頻度向上 開催場所の収容人員にとらわれないセミナー開催が可能 セミナーや説明会などの開催コスト削減(場所・印刷費・運営コストなど) 電子化によるセミナー内容の二次利用が可能 顧客サービスの向上 |
| 受講者側 | 情報伝達の頻度向上 移動時間および交通費の削減 参加者枠の増員による受講者拡大 地方拠点への情報提供の時差改善 |
表3を見ると、情報提供者側だけではなく、受講者側も「情報伝達の改善」「業務効率・生産性向上」「コスト削減」といった具体的な効果が出ている。自社とパートナー企業の情報共有にWeb会議システムを利用すれば、結果的に双方のビジネスプロセスが改善されることが分かる。
Web会議は、同時に多くの情報伝達が行える点以外にも、会議内容を記録できるというメリットがある。録画された会議内容を、会議に出席できなかった人も見ることが可能だ。また会議主催者も、同様の会議の開催回数を減らすなど、業務時間の削減が図れる。録画されたデータは、会議後の業務改善にも活用できるわけである。
次に、Web会議で外部と情報共有を行う際の製品の選択ポイントを挙げてみよう(表4)。
| 項目 | 選択ポイント |
|---|---|
| Web会議システムのクライアント仕様 | Webブラウザのみか専用クライアントもあるのか |
| Web会議システムプロトコル | HTTP/HTTPSかそれ以外のポートも利用するのか |
| 利用アカウントの発行 | アカウント発行が必要かアカウントがなくても利用可能か |
| 会議記録 | 記録機能と記録内容の閲覧フォーマット形式など |
| ユーザーへの利便性 | ・会議招致通知機能 ・会議URLのメール通知機能 ・PC以外での会議参加機能(スマートフォンなど) |
| セキュリティ | ・共有資料データの閲覧制御、配布機能の有無 ・ASPサービスの場合、資料データの共有方法 |
このように、外部企業とWeb会議で情報共有する場合、情報を共有する側のIT環境や情報共有方法、会議記録方法など幾つか考慮しなければならないポイントがある。上記を考慮した上で製品を選択することが重要だ。
ビデオ会議かWeb会議か 最適なUCを見極める
最後に、上記で紹介した課題解決策を実施した際のメリットおよびデメリットを表5にまとめてみる。また表6には、各解決策に必要な製品・サービスおよび製品導入時に必要な作業を記した。
| 業務課題 | 解決策 | メリット | デメリット(課題) |
|---|---|---|---|
| 1 | 解決策(1)-1 ・ボイスメール+電話転送 |
・電話取り次ぎの削減 ・電話応対不可時にはシステムが応答 ・業務時間外はシステム対応が可能 |
・携帯電話・PHSや携帯内線が必須 ・伝言メモを残さない相手への対応 ・伝言メモを確認する手間が発生する |
| 解決策(1)-2 ・内線電話のPHSまたは携帯電話導入 |
・電話取り次ぎの削減 ・電話システムのみで対応が可能 |
・電話に出られない場合の検討が必須 ・携帯電話料金の発生 ・携帯を持たない・用意されないユーザーは対象外 |
|
| 解決策(1)-3 ・プレゼンス+統合コミュニケーションツール |
・プレゼンス把握による連絡手段の選択が可能となる ・電話を持たないユーザーでも連絡手段を提供可能 |
・連携するシステムとの相互接続性 ・インスタントメッセージ利用におけるセキュリティ対策検討など |
|
| 2 | 解決策(2)-1 ・ビデオ会議システムによる情報共有 |
・ソフトウェアなどの習熟度が高くなくても情報共有が可能 ・既存ビデオ会議システムが利用可能 |
・双方にビデオ会議システムが必須 ・外部と行う場合には、相互接続するインフラが必須 |
| 解決策(2)-2 ・Web会議を利用した情報共有 |
・システムの投資コストを抑えられる | ・外部と容易に情報共有が行える ・PCへの閲覧ソフト導入などが必要となる場合がある ・情報セキュリティ対策の検討が必要 |
| 課題 | 解決策 | 必要な製品やサービス | 製品導入時に必要な作業(システム変更など) |
|---|---|---|---|
| 1 | 解決策(1)-1 | ・IP-PBX ・携帯電話 ・ボイスメールシステム ・ダイヤルインサービス |
・IP-PBXダイヤルイン番号の付与 ・IP-PBX転送設定 ・ボイスメールシステムの設定 |
| 解決策(1)-2 | ・IP-PBX ・携帯電話・PHS |
・IP-PBXダイヤルイン番号の付与 ・IP-PBXの転送変更 |
|
| 解決策(1)-3 | ・統合コミュニケーションツール | ・クライアントソフトのインストール ・IP電話・ビデオ会議システムとの連携設定など |
|
| 2 | 解決策(2)-1 | ・ビデオ会議システム(多地点接続装置など) ・外部接続ゲートウェイ ・電話回線・インターネット |
・外部ゲートウェイ接続装置の設定 ・IP-PBXの設定変更 ・ファイアウォール設定変更 |
| 解決策(2)-2 | ・Web会議システム(ASPサービス利用を含む) | ・Webブラウザ設定および専用クライアントのインストール ・アカウント発行作業 ・ファイアウォール設定変更 |
次回は、「ワークスタイルの多様化によるコミュニケーション課題」「効率的なオフィスコミュニケーション」というテーマで、改善型UCによる具体的な解決策を紹介する。
<筆者紹介>
矢萩陽一(やはぎよういち)
ネットマークス 商品企画部
国内システムイングレーター、外資系ネットワークインテグレーターを経てネットマークスに入社。2007年よりUCの技術評価および営業支援業務を担当。Cisco Systems、Microsoft、TANDBERGなどのマルチベンダーUC連携ソリューションの開発および技術支援業務にも従事している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
9
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー