前回の「これからのユニファイドコミュニケーションに必要な『業務改善』の視点」では、「業務改善型ユニファイドコミュニケーション(UC)」導入前の課題の洗い出しや解決策の整理などについて解説した。今後は、業務改善型UCを導入するに当たり、企業内コミュニケーションの業務上の課題を挙げ、「UCソリューションを導入すると、どのような改善効果が得られるのか」を解説していく。
今回はまず、多くの企業で抱えているであろう、電話取り次ぎの課題を取り上げる。
外出している社員と連絡が取りにくい
どの企業においても、外出している営業担当者や移動が多い社員とは連絡が取りづらい状況があるのではないだろうか? 連絡したい相手が自席にいないと、内線電話では連絡が取れない。伝えたい内容を電子メールで送信したが、期待するスピードで返答をもらえなかった。こういったコミュニケーションロスが、日々の業務で発生していると思われる。
なお、以下のようなケースはこの課題に含まれる。
業務課題1をUCで解決する改善策は幾つか考えられる。以降、それぞれの長所・短所を交えて挙げていく。

外出または社内での移動が多いといったワークスタイルの社員には、内線電話をかけても連絡はつきにくい。そこで考えられるのが、個人ダイヤルイン、携帯電話、ボイスメールを組み合わせた電話の取り次ぎである(図1)。この方法は、社員の業務生産性の向上や顧客への応対速度も向上し、十分な改善効果を得ることができる。
しかしこの解決策には、ボイスメールに伝言を残さない相手への対応、着信履歴を確認する手間、外出先の社員から社内に連絡する際の携帯電話料金といった問題点もある。
次は、無線LAN対応携帯電話端末(以下、携帯デュアルフォン)を導入し、企業内の無線LANを介して既存のPBXと接続、内線化する方法だ。企業内で携帯電話を内線電話としてそのまま利用できるメリットがある。
ただし携帯デュアルフォンでは、内線化による通信コスト削減は可能だが、無線LAN圏外から企業内に通信する際に発生する携帯電話料金を削減することができない。またこのシステムでは、無線LAN設備の構築や増設、ワイヤレス上での音声品質を維持しなければならないといった負担を考えなければならない。
さらに、端末の電池容量によって待ち受けや連続通話時間に制限があり、携帯キャリアや端末の選択肢が限定されているなどの課題もある。企業の音声インフラから見ると、導入コストや運用時の負荷・トラブルを含めて対応が必要となるシステムといえる。
最近の傾向として、業務利用における携帯電話の普及率が向上するに伴い、前述の解決策(1)(2)のような電話取り次ぎ業務の生産性を向上させる方法ではなく、相手に確実に直接電話連絡ができる仕組みを検討している企業が増えてきている。この背景にあるのが、「携帯内線サービス」または「FMC(Fixed Mobile Convergence)サービス」と呼ばれるソリューションである(図2)。
企業での携帯電話の業務利用は、ビジネスの重要な連絡手段として年々増えている。しかし、企業内には固定電話と携帯電話の2つの電話インフラが混在することになり、社員に対する連絡手段として複数の番号が存在するという煩雑さがあった。また相手に連絡する際、固定電話の内線番号でつかまらない場合は、携帯電話番号を調べて連絡を取り直す必要があるなど、運用面での課題や連絡時に発生する携帯電話通信コストの課題を抱えていた。
携帯内線サービスは、企業の内線電話と携帯電話を融合させることより、こうした運用の複雑さを解消する。具体的な効果としては、携帯電話では企業内外で「内線番号」による通話が可能となるなど、ユーザーの利便性が向上する。端末は従来利用している携帯電話を流用できるため、解決策(2)の携帯デュアルフォンに比べて初期導入コストや新規のシステム構築も少ない。加えて、これまでの社内の内線電話から携帯電話への通話、および社外から内線電話への通話に掛かる料金は従量から定額となるため、通信コストの削減というメリットもある。
このように、携帯内線サービスを導入すると、電話取り次ぎの課題解決や電話インフラの最適化だけではなく、コスト削減や利便性向上、ないしは業務効率の向上といった効果が期待できる(表1)。
| 効果 | 業務に寄与する項目 |
|---|---|
| 社内外を問わず電話を受けられる | 電話取り次ぎの削減 業務効率 ユーザーの利便性 |
| 従業員同士はかける相手の内線番号だけを知れば済む(ワンナンバー) ・固定−携帯間/携帯−携帯間 |
|
| 電話端末配布の適正化 (携帯電話の配布者に対する固定電話廃止) |
固定電話資産 固定電話に掛かっていた保守運用費 |
| 社内固定電話から携帯電話への外線コスト削減 | 通信コスト |
| 電話運用におけるコスト削減 (内線番号の変更や電話帳の更新) |
間接事務経費 |
ただし携帯内線サービスは、「社内固定電話とそのユーザー企業の携帯電話」をつなぐサービスである。当該携帯電話から社外への発信は一般の携帯電話と同じ扱いのため、通話料金および発信者番号が通常の携帯電話サービスに準じることになる点に注意したい。
近年は顧客への迅速な応対を可能にするため、名刺に業務で利用している携帯番号を印刷して顧客応対の向上を図っている企業もある。このように携帯番号を開示すると、すぐに連絡を取ることはできるようになる半面、時間の制約なく業務連絡を受けざるを得ない状況を招きかねない。実際、いつでも連絡が可能なため、業務時間外に案件の対応を余儀なくされるといったケースも少なからず発生している。そこで、IP-PBXの付加機能などを組み合わせることにより、携帯番号を開示せずに電話連絡を受けられるようにするソリューションが考えられた。
IP-PBXの付加機能を利用して、携帯電話番号を開示しない仕組みを示したのが図3である。外出している営業マンは、企業内にあるWeb電話帳サーバに接続し、電話をかけたい相手の電話番号をクリックする。そして、IP-PBXから連絡したい相手と営業マンの双方に着信し、電話の接続呼が確立されるという流れだ。これなら、外出している営業マンは、自分の携帯番号を開示することなく相手と連絡が可能になる。
この仕組みでは、IP-PBXからの発信を行うので電話料金を固定電話からの発信分にすることが可能になるほか、発信者側の番号通知に会社の電話番号を使えるため、利用している社員の携帯番号の通知を防ぐこともできる。また、携帯電話に顧客の電話番号を残すことがないため、セキュリティ面でもメリットがある。
特に外出の機会が多く、顧客やパートナーなどと携帯電話で連絡を取る必要がある社員への電話取り次ぎには有効な解決策といえる。
上記の業務課題解決策を講じた際に生じるメリットおよびデメリットをまとめてみよう。解決策によっては、同様なメリットが得られるものの、デメリットを補うために新たな課題解決の仕組みが必要になるケースもある。ただしデメリットについては、企業の置かれた状況によりそれが課題とならない場合や、電話の運用ルールなどによって解消される場合もあるので、1つの指標として見る必要がある。
また当然ながら、対策を講じることにより新たなシステムが必要になるなど、投資やその後の運用面の考慮も必要となってくる。これらを踏まえた上で、業務課題解決の検討材料としていただきたい。
| 解決策 | メリット | デメリット(課題) |
|---|---|---|
| 解決策(1) ・携帯電話+ボイスメール |
電話取り次ぎの削減 電話応対不可時にはシステムが応答 業務時間外はシステム対応が可能 |
伝言メモを残さない相手への対応 着信履歴の確認の手間が発生 伝言メモを確認する手間が発生する |
| 解決策(2) ・無線LAN+携帯デュアルフォン |
固定電話機の削減 電話取り次ぎの削減 携帯電話の通信コスト削減 |
無線LANの構築が必須 利用できる携帯端末が限定される 携帯端末の待ち受け・連続通話時間 無線LANでの音声品質への配慮 |
| 解決策(3) ・携帯内線サービス |
携帯電話の内線化(社内外) 固定電話機の削減 電話取り次ぎの削減 携帯電話の通信コスト削減 |
携帯内線サービス利用に定額料金が発生 携帯電話発信時の発信者番号が表示される |
| 解決策(4) ・IP-PBXによる携帯電話の制御 |
携帯電話の内線化(社内外) 固定電話機の削減 電話取り次ぎの削減 携帯電話の通信コスト削減 会社の番号で発信可能 携帯電話への顧客の電話番号登録が不要(セキュリティ向上) |
携帯内線サービス利用時に定額料金が発生 電話帳システムの利用が前提となる |
次に、前回紹介した「ワークスタイル別コミュニケーション課題の解決例」を基に、今回の業務課題(電話取り次ぎ)について、ワークスタイルごとの解決策の適合度を表3に示す。ワークスタイル別に見ると、選択する解決策が複数存在し、その働き方に応じた解決策が選択可能なことが分かる。
| ワークスタイル | 適合度 | 適用可能な解決策 |
|---|---|---|
| 在席型(自席での執務) | × | − |
| 社内モバイル系(社内での移動型) | ○ | (2)、(3) |
| モバイル系(外出が多い) | ◎ | (1)〜(4) |
| 在宅勤務 | △ | (1)、(3)、(4) |
最後に、今回紹介した業務課題例を解決する上で必要な製品・サービスおよび製品導入時に必要な作業を表4にまとめた。
| 必要な製品やサービス | 製品導入時に必要な作業(システム変更など) | |
|---|---|---|
| 解決策(1) | ・IP-PBX ・携帯電話 ・ボイスメールシステム ・ダイヤルインサービス |
・IP-PBXダイヤルイン番号の付与 ・IP-PBXの転送設定 ・ボイスメールシステムの設定 |
| 解決策(2) | ・IP-PBX ・無線LAN ・携帯電話(携帯デュアルフォン ・ボイスメールシステム |
・無線LANの音声設計 ・無線LAN上のQoS(Quality of Service)設定作業 ・携帯デュアルフォンの端末設定 |
| 解決策(3) | ・IP-PBX ・携帯電話 ・携帯内線サービス ・ダイヤルインサービス |
・携帯内線サービス用機器導入 ・IP-PBXの設定変更 ・内線番号体系の見直し |
| 解決策(4) | ・IP-PBX ・IP-PBXコールバック機能 ・携帯電話用Web電話帳システム |
・IP-PBXの設定変更 ・電話帳サーバ導入・設定 ・携帯電話への電話帳サーバアクセス先登録 |
次回も引き続き、「地理的に離れた社員間のコミュニケーションを改善したい」「電子メール以外で情報共有を図りたい」といった社内コミュニケーションの課題例を取り上げ、改善型UCによる具体的な解決策を紹介する。
国内システムイングレーター、外資系ネットワークインテグレーターを経てネットマークスに入社。2007年よりUCの技術評価および営業支援業務を担当。Cisco Systems、Microsoft、TANDBERGなどのマルチベンダーUC連携ソリューションの開発および技術支援業務にも従事している。