ERP製品カタログ【第6回】日本インフォア
「Infor ERP」が製造業に受け入れられた歴史的理由
Infor ERPは製造業向けERPとして長い歴史を持ち、日本でのユーザー企業も多い。製造業企業で広く使われる理由、特に厳しい要件を持つグローバル企業に使われる理由を説明しよう。
「Baan」の名でもなじみ深い「Infor ERP LN」
多分野にわたる業務アプリケーションのポートフォリオを数多くそろえ、SAP、オラクルに次ぐ業務アプリケーションベンダーとしてワールドワイドにビジネスを展開する米インフォア。ERP分野だけを見ても、同社では複数のパッケージ製品を提供しているが、その中でも「Infor ERP LN」と「Infor ERP LX」は製造業向けERPとして長い歴史を持ち、同社の代表的な製品として位置付けられている。
Infor ERP LNは、かつては「Baan」、さらにそれ以前には「Triton」という名前で提供されていたERPパッケージ製品である。読者の中には、Infor ERP LNという名前にはなじみがなくても、「BaanやTritonなら知っている」という方も多いかもしれない。
同製品は1980年代に、Tritonとして初めて世に出た。その後、1990年代にはBaanと名前を変え、ワールドワイドはもとより、日本の製造業においても中堅から大手まで、幅広い規模の企業で導入された。同製品がなぜ早くから日本の製造業で受け入れられてきたのか、その理由を日本インフォア・グローバル・ソリューションズ マーケティング本部 執行役員 本部長の笹 俊文氏は次のように説明する。
「Infor ERP LNはもともと、ヨーロッパで家具などの受注生産を行っていた企業の生産管理システムが発祥となっている。従って、当初から製番管理の機能が非常に充実していた。この点が、日本の製造企業に高く評価された。会計システムが発祥の他社製ERPパッケージでは、どうしても製番管理機能が不足しがちだった」
グローバル企業に求められる機能
また、プロジェクト管理の機能も、製造業にとって非常に使い勝手がよくなっているという。生産工程を親子関係に分けることができ、それぞれで原価管理や予実管理を行うことができる。さらには、生産だけでなく完成品の設置作業までをもプロジェクトの中に含め、管理することができるという。
「会計システムが起源のERPパッケージの場合、プロジェクト管理というとどうしてもお金の管理が主となるプロジェクト会計機能に限定されてしまうが、Infor ERP LNでは製造業の生産工程に沿ったきめ細かいプロジェクト管理が可能だ」(笹氏)
「マルチ・サイト」と呼ばれる機能も、製造業での使い勝手を考慮した非常に特徴的な機能だ。製造業、特にグローバルに事業を展開している企業では、製造と販売を別々の法人で行うことは珍しくない。その場合、一般的なERPパッケージの機能では、異なる法人間で在庫情報を共有することができないため、販売側の在庫情報を確認することなく製造側でモノを作ってしまい、結果として在庫がだぶつくようなことが起こりがちだ。その点Infor ERP LNでは、法人格の管理とサプライチェーンの管理を完全に切り離し、互いの在庫情報を参照できるようになっている。
また、グローバル企業で重宝されているもう1つの機能に、「Dynamic Enterprise Modeler(DEM)」がある。これはInfor ERP LNにあらかじめ備わっている業務モデリングツールで、Infor ERP LNの業務フローがすべて業務モデルとして定義されているほか、オリジナルの業務モデルを定義することも可能になっている。本社でDEMを使って業務モデルを定義し、それをそのまま海外拠点にも適用すれば、自動的に全拠点で適切な業務フローを展開できるというわけだ。
System i上で稼働する「Infor ERP LX」
これまで説明したInfor ERP LNは製造業の中でも、特に組み立て製造業の業態に特化したソリューションとなっている。一方のInfor ERP LXは、組み立て製造業だけでなく、プロセス製造業にも対応するERPパッケージ製品だ。
Infor ERP LXは、かつては「BPCS」と呼ばれていた製品である。こちらもInfor ERP LNと同様、旧名のBPCSの方がなじみ深いユーザーも多いことだろう。Infor ERP LNがUNIX、Windows、Linuxなどオープンプラットフォーム上で動作する製品であるのに対して、Infor ERP LXはIBMのSystem i(IBM i、旧AS/400)上で稼働する。
同製品は、製薬業界や消費財業界などでの導入が多いこともあり、プロセス製造業向けの機能が充実している。例えば、連産品や副産品への対応や原材料在庫の使い切り管理、FDA(米国食品医薬品局)が定める電子記録・電子署名への対応機能などを備える。しかし一方で、自動車業界や電気・電子業界を中心に組み立て製造業の分野でも数多くの企業に導入されているという。2010年3月には三菱重工が海外新工場にInfor ERP LXを導入したことが発表された(日本インフォアのWebサイト)。
近年ではERPパッケージというと、オープンプラットフォーム向け製品がほとんどであり、System i用のERPパッケージと聞いてもあまりイメージがわかない読者も多いだろう。しかし笹氏によれば、製造業ではSystem iのニーズは依然として高いという。
「System i自体の技術は非常に進んでいるので、高いパフォーマンスを得やすい。また、論理パーティションを設定しやすいのもメリットの1つだ。例えば、本社にSystem iを1台置いて、その中で海外拠点ごとに論理パーティションを設定して運用するようなケースも多い。また、System iは極めて安定稼働なので、海外拠点に直接設置しても心配なく運用できる」(笹氏)
グリーンスクリーンを装備
また、Infor ERP LXは他社製ERPパッケージと同様にWebのインタフェースを提供しているが、同時に昔ながらのグリーンスクリーン画面のインタフェースも提供している。「今どきグリーンスクリーンなんて……」と思う読者も多いかもしれないが、これもグローバルに事業を展開する製造業にとっては重宝される機能なのだという。
「海外拠点、特にアジアの拠点では、現地従業員がWebインタフェースを使いこなせないケースがあり、グリーンスクリーン画面とテンキーだけですべての入力を行いたいというニーズがある。そのため、『グリーンスクリーン以外はNG!』という条件で提案を依頼してくる企業もあるぐらいだ。このように、System iで動作して、グリーンスクリーン、さらにグローバルビジネスに対応したERPパッケージとなると、現在では事実上Infor ERP LX以外に選択肢はないだろう」(笹氏)
現場レベルで必要なIFRS対応は実装済み
Infor ERP LN、Infor ERP LX共に、これまで説明してきたような生産管理システムとしての機能だけでなく、統合ERPパッケージとしての会計管理や販売管理、在庫管理などの機能も当然のことながら備えている。特に会計管理の機能は、海外のグローバル企業における導入実績からも分かるように、IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)との親和性が高いという。例えば、ローカル会計基準用とIFRS用の総勘定元帳を別々に管理するための「複数元帳」機能にも、当初から対応している。
「グローバルに事業を展開している製造業の海外拠点では、現地の会計基準で会計を管理しつつ、本社に対しては通貨の換算や会計基準の付け替えを行って本国の会計基準で報告を行う。そのためInfor ERP LNもInfor ERP LXも、複数の元帳を管理する機能はもともと持っている。IFRSに対応する際も、IFRS用の元帳をこれに付け加えることで対応できる」(笹氏)
また、欧米の飛行機メーカーや造船業など、製品開発プロジェクトのスパンが長期になる業態での導入実績も多いため、プロジェクト管理機能は工事進行基準に既に対応している。そのほかにも、個別会計レベルでIFRSに対応するための機能は、すべて実装されているという。
ただし、Infor ERP LNとInfor ERP LXは製造業企業の“生産現場寄り”で運用されるERPであるため、本社の財務部門が必要とする連結決算機能などには対応していない。笹氏によれば、製造業の本社と現場では、IFRS対応に大きな温度差があるという。
「既にIFRSを適用しているヨーロッパの経緯を振り返ると、現場レベルではさほど大きな混乱は生じていない。例えば収益認識の『出荷基準』と『着荷基準』の違いなども、システムで無理に自動仕訳するまでもなく、現場で個々の事情に合わせて柔軟に対応できている。ただし、本社の財務・経理部門はやはりそれなりに大変だと思う。例えば、セグメント開示への対応にしても、現状では海外拠点、特にアジアの拠点からセグメントごとの詳細情報を引っ張ってくるのは極めて難しい」(笹氏)
例えば中国の拠点では、現地のERPパッケージが導入されることも多いが、本社の管理会計で必要とする管理会計コードの実装は期待できない。そのような場合、インフォアでは同社の会計管理パッケージ「SunSystems」を各海外拠点に導入し、管理会計データを収集するソリューションを提案することもあるという。
あるいは、システムを本社側ですべて集約して、強制的にすべての会計データが本社に集まるような仕組みを計画している企業も少なくないという。ただしその場合には、すべての拠点分のERPパッケージライセンスが必要となり、膨大なコストが掛かることになる。
「管理セグメントコードでひも付けた上で、会計データをすべての海外拠点から一気に収集するような大規模な仕組みは、グローバルでの売り上げが2000億円以上の一部の大企業でしか計画できていない。すべてを一気通貫で連携させるようなシステムが実現するには、まだもう少し時間がかかるのではないかと思う」(笹氏)
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