ブラックリストが対応不可能?
IPv6への移行でスパムボット活発化の恐れ――専門家が警告
スパム対策に有効なIPアドレスのブラックリストが、IPv6の規模に対応しきれない可能性がある。
世界のスパム流通量はIPアドレスのブラックリスト化の成功のおかげで減っている。しかし、あるマルウェア専門家によると、IPv6への移行はスパム対策にIPアドレスのブラックリストを利用しているインターネットサービスプロバイダー(ISP)に問題を引き起こすかもしれないという。
「こうしたスパムボットをその場で阻止する方法の1つにブラックリスト化がある。私が懸念しているのは、ISPがIPアドレスの循環利用を続ければ、ブラックリストがIPv6の規模に対応しきれなくなる可能性があるということだ」と米Dellのセキュリティ対策部門SecureWorksに所属するジョー・スチュワート氏は指摘している。
スチュワート氏によると、IPアドレスのブラックリスト化はスパムボットを排除する方法として一般的ではあるが、限定されたアプローチでもあるという。なぜなら、サイバー犯罪者はIPアドレスを数時間で新しいものに循環できるからだ。またサイバー犯罪者は、正当なIPアドレス(盗んだWebメールアカウントなど)をハイジャックしてブラックリストを回避し、Webメールのプロバイダーに問題を引き起こすこともできる。
インターネット技術標準化団体のInternet Engineering Task Force(IETF)はIPv6への移行を支持しているが、それはインターネットで従来の短いIPアドレスが枯渇しつつあるからだ。IPv6に移行すれば、IPアドレスは32ビットから128ビットに拡張される。「IPv6を導入すれば、ISPはユーザーに静的アドレスを割り当てるよりも、IPv6アドレスを循環させるという簡単なアプローチをとることができる」とスチュワート氏は指摘する。「本当なら、静的IPアドレスを使うのが理想的だ。そうすれば、実際のスパム発信者をより永続的にブラックリスト化できるからだ。だが、静的IPアドレスをユーザーに割り当てるとなると、ISPにとってはコストがかさみ、事務処理の負担を増やすことになるかもしれない」と同氏は言う。
さらにスチュワート氏によると、この問題はユーザー企業側の負担増にもつながる可能性がある。RSA Conference 2011において同氏が発表したDell SecureWorksの新しい報告書では、IPv6への移行に伴う潜在的な問題が概略されているほか、スパムやマルウェアをPCに拡散する役割を果たしているボットネットの詳細が説明されている。「問題は企業にスパムが送られているということだけではない。企業がスパムボットに感染させられている点も問題だ」と同氏は言う。
「企業はスパムボットの感染が予算にそれほど大きな影響を及ぼすとは考えていないかもしれないが、実際、そうした感染はコストの掛かるその他の問題につながりかねない」とさらにスチュワート氏は続ける。同氏によると、企業は感染したマシンを入念に検査し、再イメージ化を行うべきかどうかを慎重に判断する必要があるという。
「スパムボットは氷山の一角にすぎないことが多い。最近ではペイパーインストール方式のマルウェアが使われており、スパムボットを1つ見つければ、大概、それと一緒に3つ以上のマルウェアがインストールされているものだ」とスチュワート氏。
スパムボットの中では、依然としてRustockの存在は大きく、推定25万台のマシンがスパムやマルウェアを拡散させているとみられている。Rustockの強みは、ユーザーに気付かれずにWindows PCに感染できるステルス性にある。Dell SecureWorksの報告書によると、Rustockはルートキットとして設計されており、ファイルをWindowsマシンの深部に埋め込むという。「Rustockは最も革新的なボットネットであり、実際、Rustockに匹敵する威力を持つスパムボットは存在していない」とスチュワート氏は語っている。
Rustockの背後にいるサイバー犯罪者はステルス戦術と回避戦術を駆使し、ユーザーに気付かれないよう行動している。Rustockは暗号化技術を使って指揮統制命令を隠し、ネットワーク管理者に接続を遮断されないためのテクニックを使っているのだ。
「Rustockの背後にいる1人または複数の人物は、この最大規模のボットネットを維持してそこから最大限の利益を上げられるよう、できる限りの手を尽くしているようだ」とスチュワート氏は語っている。
その他の主要なボットネットの1つには、Cutwailがある。Cutwailは、Cutwailコードの繰返しを使用した多様なボットネットの大本となっている。
その他、あまり目立たずに活動しているスパムボットには、Lethic、Grum、Festi、Maazbenなどがある。ただしスチュワート氏によると、スパムボットの規模が小さいからといって、その脅威が少ないとは限らないという。
「目立たずに活動している分、ある一定レベルの成功は確実に収められる。『あまり注目が集まらないようにしていれば、わざわざ研究者が時間をかけて、たかだか5000個から2万個程度のボットを持つボットネットを追跡したりしないだろう。なにしろ、もっと大規模なものが他にもたくさんあるのだから』という考えだろう」とスチュワート氏は指摘している。
また同氏は、2010年に米セキュリティベンダーFireEyeの研究者らによって壊滅に追い込まれた悪名高いスパムボットネット「Mega-D」が再び活発化の兆しを見せていないことに言及している。Mega-Dの作成者とされているモスクワ生まれの男性は、このボットネットの運営に関与したとして米ウィスコンシン州で刑事告発されている。Mega-Dは1日に1000万件以上のスパムペッセージを送信したとみられている。
「このことは、もし企業が無制限にリソースを注げるのであれば、ドメイン名を探し出してそのソースまでさかのぼることが可能であることを示している。結局のところ、逮捕はボットネット増殖の問題を解決する唯一の方法だ」とスチュワート氏は語っている。
ただし同氏は報告書において、「Mega-Dのソースコードを誰かが持っていないとも限らないため、将来、再び活発化する可能性は否定できない」とも指摘している。
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