「国際モダンホスピタルショウ2011」イベントリポート
国際モダンホスピタルショウで見た、ITが変える医療の未来像
2011年7月13日から15日までの3日間、東京ビッグサイトで「国際モダンホスピタルショウ2011」が開催された。本稿では、医療情報システムに関する出展ブースの内容を紹介する。
「いのちの輝きを! 未来を創る健康・医療・福祉 ~さらなる連携を目指して~」をテーマに掲げた国際モダンホスピタルショウ2011(以下、ホスピタルショウ)。今回の出展企業数は303社、総来場者数は7万7130人となった。展示会場は「医療機器、環境設備ゾーン」「医療情報システムゾーン」「看護ゾーン」「介護・リハビリゾーン」「健診・ヘルスケアゾーン」「施設運営サポート・サービスゾーン」の6つに分かれており、その中でも出展企業数が最も多かったのが医療情報システムゾーン(112社)だった。
患者状態を軸とするクリニカルパスの策定を支援
入院患者の病気を治す上で必要な治療や検査、ケアなどの診療プロセスを時間軸(日付)に沿ってスケジュール表にした「クリニカルパス」。クリニカルパスは、患者ケアの質的向上と効率化、医療の標準化を目的としてさまざまな医療機関で策定されている。京セラコミュニケーションシステム(以下、KCCS)と京セラ丸善システムインテグレーション(以下、KMSI)は、そうしたクリ二カルパスの策定を支援する診療プロセス管理システム「PCAPS-Administrator」を出展していた。
PCAPS-Administratorは、KCCSとKMSIが東京大学大学院工学系研究科「医療社会システム工学寄付講座」(飯塚悦功特任教授、水流聡子特任教授)と共同で開発したシステム。その特徴は、「PCAPS(Patient Condition Adaptive Path System:患者状態適応型パス)」で管理する点だ。
2004年に飯塚教授が提唱したPCAPSは「品質工学の手法を医療に応用し、患者の状態に沿った多様な診療を可能にする手法」。KCCSによると、時間を軸とする従来のクリニカルパスでは患者状態の変化への対応が難しく、策定したクリニカルパスが最後まで利用されず途中で離脱してしまう確率が高いという。一方、PCAPSでは患者状態の変化に応じた計画変更や合併症への対応なども柔軟に実施可能で、より適切な患者ごとの診療プロセスを策定できるとしている。
現在、PCAPS-Administratorは麻生 飯塚病院の脳外科分野などを中心に複数の医療機関での実証実験が行われている。
広域災害対策のための情報基盤
NTTデータは広域災害救急医療情報システム「EMIS(Emergency Medical Information System」を展示していた。このシステムは2011年3月の東日本大震災における救援活動にも利用された(関連記事:物言えぬ患者の代理人となる医療情報カード「MEDICA」)。
EMISは全国共通の災害医療情報を収集・共有する災害救急医療のポータルサイト。救急災害時、医療機関からの被災状況や受け入れ人数などの情報を集約・共有する「災害医療情報管理」、災害派遣医療チーム(DMAT)の派遣要請や稼働状況の管理などを行う「DMAT管理」、広域医療搬送の対象となる患者情報や搬送用ヘリコプターなどの管理、情報共有を行う「広域医療搬送患者管理」などの機能を持つ。
EMISでは、都道府県のシステムが災害時における障害などで利用できなくなる場合に備え、NTTデータがシステムデータをバックアップする2つの広域災害バックアップセンターを構築、運用している。
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モバイル端末を利用したクラウドサービス
調査会社シード・プランニングの調査によると、2010年の医療分野におけるクラウドサービス市場は19億3000万円の規模だが、2015年には1164億円、2020年には1928億円まで成長するという(関連記事:なぜ、医療クラウド市場は急速に拡大しているのか?)。特に、「クラウド型電子カルテ」市場の伸びが加速するとしている。また、医療分野ではiPadやAndroidなどのスマートフォンを利用するシステムの活用が進んでいる(関連記事:孫社長も驚いた「医療現場のiPad/iPhone活用」最前線)。今回のホスピタルショウでは、モバイル端末を利用するクラウド型サービスが多く出展されていた。
グローバルソフトウェアは、診療所向けクラウド型電子カルテ「イージーカルテWeb2.0」、iPad専用電子カルテビュワー「イージーカルテViewer for iPad」、iPad専用問診支援システム「iMonshin」などを出展。イージーカルテWeb2.0は、診察業務や受付会計、予約、請求書発行などの院内業務の機能をネットワーク経由で利用できるレセコン一体型の電子カルテだ。
ユー・アイ・エスはiPad専用問診システム「Medical TQ」を出展。問診結果をPDF形式で保存したり、XML形式で出力することなどでレセコンや電子カルテと連携する。現在、Medical TQの問診結果データはシイ・エム・エスの電子カルテ「Doctor's Desktop」に直接反映できる。
遠隔医療支援ソリューション
ITを利用した情報連携基盤によって医用画像などの遠隔画像診断が可能になった(関連記事:フィルムレス化を促進する医用画像管理システム(PACS))。
ユーロプロダクションは遠隔医療システム「F2F 遠隔医療キズナビジョン」を出展。医師と患者との対面診察、静止画や動画などの診察医用画像の共有が可能で、画面上にタッチペンで文字や線を書き込んで説明することもできる。
診療所における停電対策
東日本大震災に伴い、2011年3月に関東で実施された計画停電。その対象地域では、自家発電装置を持たなかったために休診や診療制限などを余儀なくされた診療所もあったという。
三洋電機は2011年6月、電子カルテシステム「Medical-HR II」に停電などの不測の事態に備える機能を追加した(関連記事:電子点数表チェック機能を活用できる電子カルテ「Medicom-HR II」)。具体的にはバックアップデータの移行対象にノートPCを追加することで、停電が起きた場合でもノートPCによって診察が継続できる。
今後の医療提供体制は、病院・診療所、介護施設、行政機関などの“地域医療連携”、医師や看護師、医療スタッフなどの“チーム医療連携”、スマートフォン端末を活用した在宅・遠隔医療などを実現することが求められる。今回のモダンホスピタルショウのテーマに掲げられた「さらなる連携」を実現する鍵となるのは、IT基盤であることをあらためて感じさせられた。
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