SMBのためのサーバ仮想化導入のポイント【第1回】
クラウド時代に中堅・中小企業がサーバを仮想化する7つのメリット
クラウド時代といわれる中、企業はITを一足飛びにクラウド化できていないのが現状である。そこでクラウド移行への準備として検討されるのがサーバ仮想化だ。本稿ではSMBのIT事情とサーバ仮想化のメリットを解説する。
今回から3回にわたり、中堅・中小企業(SMB)を対象に、サーバ仮想化のメリットと導入のポイントを解説する。サーバ仮想化をする目的、導入までのステップ、P2V(Physical to Virtual)移行のポイント、仮想環境での運用の変化などを、IT部門の方が具体的にイメージできることを目指す。第1回のテーマは、「クラウド時代になぜ今さら仮想化が企業にとって必要なのか?」。本稿の前段では仮想化のメリットを語る前に、企業ITのトレンド、大企業とは異なるSMBの現状に触れる。後段では、SMBにとってまずはIT基盤を仮想化することの重要性を解説する。
企業ITのトレンド ~クラウド移行が進まない背景
クラウドコンピューティングはバズワードとしての役割を終え、ビジネスの拡大・縮小に柔軟に対応し経済性、迅速性、弾力性のあるサービス、すなわち“ビジネスを加速するIT”として、市場に定着してきている。また、時節柄、災害・計画停電による緊急時の自宅待機・在宅勤務などにも対応できるサービスとして、事業継続性の観点で急激に伸びている。
だが、企業のITが全て(パブリック)クラウドに取って替えられるかというとまだそうではない。2011年4月にIDC Japanが公表した資料によれば、2010年の国内クラウドサービス市場規模は前年比45.3%増の454億円であり、国内のITサービス市場が約4.5兆(『日経ソリューションビジネス』2009年10月30日発売号)といわれる中、その割合はまだ少ない。また、国内のクラウド導入はようやく2割超との調査結果も出ている(『日経パソコン』7月25日号)。さらに、クラウドの用途は電子メールやグループウェアがほぼ半数となっている。つまり、用途を限定したクラウドが徐々に企業に導入され始めた“クラウド成長期”の段階といえる。
クラウド導入が爆発的でない理由は幾つかあるが、その1つに電子メールやグループウェア以外のサービスラインアップが十分に出そろっておらず、選択できないことも背景にある。また、データが所有者である企業の管理下から離れることに対するセキュリティや運用に対する不安もその要因である。よって、企業はITを一足飛びにクラウドへ移行しないのが現状である。
そこで企業は、社内にクラウドの恩恵を享受できるIT基盤を構築し始めた。これがプライベートクラウドである。また、社内ITのプライベートクラウド化で需要に拍車が掛かっているのがサーバ仮想化である。サーバ仮想化によりアプリケーションとハードウェアは分離され、ハードウェアはリソースプール化される。サーバ仮想化はプライベートクラウドのコアの役割を担う。外部のIaaS(Infrastructure as a Service)に移行することも将来的に容易になる。
ハイパーバイザーのリーディングカンパニーであるヴイエムウェアの代表取締役社長 三木泰雄氏によると、仮想化は、大企業を中心に「Enterprise License Agreement(ELA)」の需要が相当増えているという。ELAとは企業向けの包括ライセンスであり、これが増えているということは、仮想化の全社的な採用が増えていることになる(参考:ヴイエムウェアの2011年、既存顧客支援をどう進めるか)。
SMBのITの現状、大企業とのギャップ
しかしこれは大企業の傾向である。大企業は、サーバのリースアップなどのタイミングで、プロジェクト単位でサーバ仮想化への移行が進んでおり、既にサーバ仮想化の恩恵を受けている企業が多い。
一方、SMB市場はどうか。弊社、日商エレクトロニクスで2010年8月に従業員1000人未満企業へ聞き取り調査を行った。SMBに勤務されている読者の皆さんと課題を確認する目的で以下にポイントを述べたい。
システム統合では、部門ごとに設置されているファイルサーバの統合は進んでいるように見受けられるが、サーバ仮想化による統合率は低い。相変わらず付け焼き刃的にシステムごとにサーバが乱立し、ネットワーク機材を含めるとラック総数は約10本、データセンターへのハウジング費用は月額300万円程度と、ITコストが逼迫している現状が分かる。IT基盤担当者の数も、基幹システムとアプリケーション開発のスタッフを除くと、IT基盤担当者は平均1、2人と、少ない人数でシステム数=台数のサーバをメンテナンスしていることになる。
また、システムごとにアカウントメンテナンスが必要で、LDAPとの連携がなされていなかったり、グループウェアなどの汎用アプリケーションはパッケージを使っている傾向が強いが、情報ポータル、電話帳、会議室予約など 企業独自の組織、事業形態、社風などが色濃く反映されるシステムは個別アプリケーションを自社開発しているといったケースが多いようだ。さらに、アプリケーションとハードウェア、OSの電子発注システム(EOS:Electronic Ordering System)がバラバラで、互換性の問題でアプリケーションのバージョンアップがなされず、古いバージョンで何とか利用している企業が多かった。
もちろん多くの場合、システム変更やメンテナンスの際は平日夜間もしくは休日作業を余儀なくされている。システムが冗長化されており SLA(Service Level Agreement)が定義され、RTO(Recovery Time Objective)、RPO(Recovery Point Objective)が施されているシステムはごく一部の基幹システムのみにとどまっているようだ。
SMBがIT基盤を仮想化するメリット
このような状況にあるSMBのIT基盤を仮想化することで、先に挙げた課題を解決でき、企業は大きな恩恵を受けることができる。仮想化によりアプリケーション単位でハードウェアやOSを構成する必要がなくなる。CPU、メモリはリソースプール化し、守るべきデータは共有ストレージに集約できる。いわゆるIT基盤の水平統合、社内プライベートクラウド化を実現できる。サーバの調達も時々で安価に調達できるところから購入することで、コスト削減を図れる(図1)。
以下にサーバ仮想化によるメリットを7点にまとめた。
(1)サーバ統合によるコスト削減
仮想化することによってリソースがプール化され、ハードウェアやOS、アプリケーションの購入、ラッキングやケーブル結線を削減できる。CPUの高速化で集積密度が向上し、システムとサーバが1対1の関係でなくてもよくなった。
(2)サーバのリードタイム短縮
仮想マシンをテンプレート化すればOSやアプリケーションのセットアップも不要なため、IT基盤担当者が生産的な活動に使える時間が増える。
(3)検証・開発プロセスの効率化
本番環境のIT基盤がそのまま検証・開発環境に割り当てられ、環境を容易にプロビジョニングできる。
(4)システムのマイグレーション、リプレースが容易
起動ディスクを含む仮想マシンの全ての情報はファイルとして格納しカプセル化できる。これによって、ファイル特性を生かし、仮想マシンはハードウェアに依存せず、別のハードウェアに移動、コピーしても動作可能。
(5)ストレージ移行やI/O負荷分散が容易
仮想マシンに格納されているデータ領域をオンラインのまま移動できるため、アプリケーションやユーザーのアクセスを停止せず、ストレージの移行やI/Oの分散を容易に実行することができる。
(6)サーバの消費電力削減
リソースプール全体の使用率を継続的に監視し、負荷に合わせて仮想マシンを自動的にロードバランスすることができるため、サーバの消費電力を削減する。平日夜間もしくは休日といった企業活動が落ちる時間帯に、リソースプールの中の仮想マシンを一部のサーバに片寄せし、他のサーバの消費電源を自動的に絞る。就業時刻になって仮想マシンのワークロードが高くなると、絞っていたサーバの消費電源を復活してリソースプール全体を元の状態に戻せる。
(7)可用性の向上
HA(High Availability)構成、FT(Fault Tolerance)構成も容易に実装が可能となり、SPOF(Single Point of Failure)の排除も仮想化で実現できる。同時に、IT基盤担当者が平日夜間もしくは休日のシステムメンテナンス作業から開放される。
上記のメリットは、IT基盤担当者数が1、2人のSMBにとって非常に有益である。サーバを仮想化することで今までの運用が劇的に変わる。IT基盤担当者の作業工数がサーバ仮想化のIT基盤にオフロードされるからだ。
また、サーバ仮想化の適用範囲は、10年前はアプリケーションの延命、開発環境の統合が主だったが、その後、移行可能なアプリケーション(トランザクションがライトなもの)を統合し、最近ではSAPをはじめビジネスクリティカルなアプリケーションへとカバレッジが広がっている。
次回予告
今回は連載の序章として、大企業と比較したSMBのIT事情、SMBがサーバ仮想化をするメリットを解説した。次回からは、具体的にサーバ仮想化を導入する際に、現状分析や仮想化基盤への移行をどうすべきかについて解説する。追加投資コストを発生させずにサーバ仮想化ソフトウェアの機能で行えるバックアップ、監視機能に関して技術的な観点を交えて説明する。
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SMBのためのサーバ仮想化導入のポイント
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