事例で学ぶBI活用のアイデア【第5回】
BIによる年間2億件のアクセスログ分析で顧客ニーズを可視化した総合建築業
Webサイトが企業活動に欠かせなくなった現在、そこで収集しているデータをビジネスへと生かさなければもったいない。Webサイトのデータ分析結果をリアルビジネスに活用している事例を紹介する。
Webサイトのアクセスログ分析をリアルビジネスに活用
本連載の第2回「BIによるPOS分析でタイムリーな売れ筋把握を実現した小売業事例」では、小売業でのPOSデータ活用事例を紹介した。その中では、ビジネスインテリジェンス(BI)の活用事例に小売、流通業の販売分析が比較的多い理由として、小売業ではPOSレジを利用した販売が一般的になっており、そのPOSレジに入力されたデータを本部に集約する仕組みを業務インフラとして構築することで、データを容易に取得、蓄積できるようになっていることを挙げた。
そのPOSデータと同様に、比較的容易に取得、蓄積できるデータとして、Webサイトのアクセスログがある。ECサイトでは、そのアクセスログを分析して売り上げ向上に利用するというのは一般的だが、今回の事例はWebのアクセスログをBIツールで分析し、その分析結果をリアルビジネスにも積極的に活用している事例だ。
賃貸物件検索サイトのアクセスログは年間2億件
事例企業プロファイル
業種
- アパート、賃貸マンション、貸店舗の企画、設計、施工、仲介、管理、経営代行まで手掛ける総合建築事業
企業規模・業種内容の参考データ
- 直営・フランチャイズ・提携企業を含めた1500店舗の不動産ネットワークを要する
- 年間2億件程度のWebサイトのアクセスデータを取得
- 分析システムの想定利用者数は1000ユーザー以上
この企業では創業以来、建築業務と仲介・管理業務を総合的に支援するリース建築事業を推進している。アパート、賃貸マンション、ワンイヤー(家具・家電付き1年賃貸)マンション、貸店舗などの企画、設計、施工、仲介、管理、経営代行までの総合建築事業を展開している。
また、事業のより一層の効率化を目的に、早い時期からインターネット対応を含めたIT投資にも積極的に取り組んでおり、顧客に新サービスなどの情報提供を実現するためのIT基盤の確立を目指している。その取り組みの一環として、仲介事業の中核である賃貸物件検索サイトの利用状況を分析する仕組みをBIツールで再構築した。
同社では、賃貸物件の検索サイトを利用する入居希望者のさまざまなニーズを迅速に把握するために、年間2億件程度のアクセスデータの分析結果を可視化。直営店やフランチャイズ店を含めた全国1500店舗以上にその分析結果を提供するなど、入居希望者と賃貸物件情報供給元の双方のメリットとなるさまざまなサービスを構築している。
その取り組みの1つとして、独自に開発したログ分析の仕組みを使用して入居希望者のニーズを分析し、賃貸物件情報の供給元に提供していた。しかしこの仕組みでは、「地域」と「家賃帯」などの限定的な検索条件でしか集計できなかったため、店舗が登録した物件ごとにどれだけアクセスされているのかを把握することができなかった。賃貸物件情報の供給元からは「もう少し詳しい状況を知りたい」という要望が多く挙がり、この問題をいかに解決するかが大きな課題の1つだった。
物件ごとの詳細なログ情報を集計して入居希望者のニーズを把握
そこで同社は、賃貸物件供給元が入居希望者のニーズをきめ細かく把握できると同時に、入居希望者に満足度の高いサービスを提供するために、どのようなアクセスで物件が検索されたかなど可視化する新しいログ解析システムを開発することを決定。そのための分析エンジンとしてBIツールを採用した。
この仕組みでは、賃貸物件検索システムのアクセスログをベースに関連データを夜間バッチで取り込み、翌朝には前日のアクセス状況を分析できるようにしている。先述したように、賃貸物件検索サイトのアクセスログのデータ件数は年間2億件と膨大だ。また、外部向けに広く公開する仕組みということで、分析システムの想定ユーザー数は1000以上と大規模なものとなっている。
BIツールで構築したWebサイト分析システムでは、以下のような情報を物件ごとに集計できるようにしている。
- どれだけアクセスされたのか
- どれだけ問い合わせがあったのか
- どれだけお気に入りに登録されたのか
- どれだけ印刷されたのか
- どの画像が最もアクセスされたのか
また、必要な情報をCSVデータで出力することで、例えば家賃を上げる前と後でどれくらいアクセス数に変化があったかなど、より詳しい情報の分析も可能となっている。
賃貸物件情報の供給元は、Webサイトからの問い合わせ後に顧客が店舗を訪れた際にもその分析データを利用することで、顧客に対してきめ細かいサービスが可能になる。また、入居希望者にとっては、自分の好みに合った情報提供をタイムリーに受けることができ、Webサイト利用の満足度向上にも貢献している。
POSデータ以上の価値が眠るWebサイトのアクセスログ
今回紹介した事例の他にも、Webサイトのデータ分析事例はたくさんある。例えば、あるECサイトでは、以前は売り上げの振るわない商品は値引き販売していたが、ページデザインと売り上げの関係を分析した結果、商品のサイトデザインを変更することで歴然とした売り上げ効果があったという。
冒頭でPOSデータの話をしたが、実はWebサイトのアクセスログにはPOSデータよりも多くの価値が眠っている。POSデータには結果として買ってもらった事実しか入っていないが、Webのアクセスログには、ユーザーの行動のほぼ全てが入っている。あれやこれや迷っていろいろなものにアクセスした行動や、買った人だけでなく買わなかった人の行動も含まれている。それだけにWebのアクセスログは膨大なデータ量となってしまうが、うまく活用することで無限の価値を生み出す可能性を秘めているのだ。
小島 薫
ウイングアーク テクノロジーズ株式会社 BIサポート本部 本部長
1stホールディングス株式会社 BI事業部 事業部長
石川県出身 1959年生まれ。製造業でのシステム構築、経営企画などに従事した後に、独立系パッケージベンダーに入社。汎用機からオープンシステムまでの基幹系データベースを中心に、データウェアハウス(DWH)、XML関連のサポート、プリセールス、コンサルティング、マーケティングを経験。2005年にウイングアーク テクノロジーズに入社し、技術部門、マーケティング部門、製品戦略部門の部門長を経て、国内外を含めた製品戦略に携り、現職に至る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
事例で学ぶBI活用のアイデア
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー