欧米小売業に学ぶ「自社の強みを生かすIT活用」ガートナーに聞く「国内小売業が取るべきIT戦略」【前編】

厳しい経済環境の中、国内小売・卸売業が危機に追い込まれている。この状況を乗り切る経営戦略、IT戦略とは何か。米ガートナーのジェフ・ウッズ氏が、米国の状況を踏まえて取るべき戦略を語る。

2009年12月14日 08時00分 公開
[岩崎史絵,トレッフェ]

二極化する小売・卸売業界、突破の鍵は「需要予測」

 2009年、未曾有の経済危機の中、国内小売・卸売業界の二極化が進んでいる。消費が抑制される中、大手百貨店は言うに及ばず、生活に密着したGMS(General Merchandise Store)の落ち込みも激しい。

 イトーヨーカ堂を擁するセブン&アイ・ホールディングスは、2010年2月期第2四半期(2009年3月1日〜8月31日)でイトーヨーカ堂が上場以来初となる43億円の営業赤字を記録。連結決算で営業利益1181億3800万円(前年同期比22.2%減)、経常利益1184億6400万円(同19.9%減)、純利益436億8700万円(同35.3%減)となった。イオンも同期決算では自社プライベートブランド(PB)の売り上げでまき直ししたものの、営業利益354億9700万円(前年同期比39.5%減)、経常利益320億7700万円(同46.3%減)、純利益はマイナス146億8100万円となった。

 その一方で好調な企業もある。ユニクロを擁するファーストリテイリングは、2009年8月期(2008年9月1日〜2009年8月31日)で、営業利益1086億3900万円(前年同期比16.8%増)、経常利益1013億800万円(同18.2%増)、当期純利益497億9700億円(同14.4%増)を記録しているし、同じくカジュアルファッションのしまむら、格安家具のニトリも好調だ。ネット小売では、最大手の楽天が2009年第3四半期(2009年1月1日〜9月30日)で純利益474億3600万円(前年同期比252.2%増)を記録している。世界的に厳しい経済状況の中、大きく成長している企業もあることが国内小売・卸売業界の特徴といえるだろう。

 こうした状況下で、業界全体の課題は3つある。第1に、業界全体として成長していくこと。第2に、勝ち組企業の成功戦略を知ること。第3に、今後の時流を知り、次の一手を早急に打つことだ。そんな国内の小売・卸売業界に対し、米調査会社ガートナー リサーチ バイスプレジデント ジェフ・ウッズ氏は次のように語る。

 「日本の小売・卸売業の中には確かに成功している企業もありますが、まだ製造業ほど世界的に成功している事例は多くありません。まずは業界全体で市場を拡大しなくてはならないと思います。そこで有効な手段がITです」(ウッズ氏)

 具体的に、ITをどのように適用するべきか。ウッズ氏は、「第1に、CRM(顧客関係管理)システムを使って顧客の理解をより深め、需要予測の精度を上げること。顧客の志向やビジネス環境に合わせて、自分たちのビジネスを俊敏に変えられるようにすることが重要です。そのため第2として、サプライチェーンを構成するサプライヤー全員とのコラボレーション環境を整えなくてはなりません」と指摘する。つまり、顧客理解という第1のフェーズ、サプライチェーンという第2のフェーズの間を取り持つのが需要予測であり、需要予測ができなければ成長はないということだ。

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