“Windows 8タブレット”は企業利用に耐えるか【後編】
Windows 8タブレットの恩恵を受けるのは中堅・中小企業?
Windows 8タブレットに最適な端末は何か。企業にはどの程度浸透するのか。専門家の意見を基に、Windows 8タブレットの企業利用について考察する。
Microsoftの次期OS「Windows 8」を搭載したタブレット端末は、果たしてエンタープライズ市場に浸透するのだろうか。本稿は前編「コスト削減効果は数万ドル? Active DirectoryによるWindows 8タブレット管理」に引き続き、Windows 8タブレットの企業利用の可能性を探っていく。
Windows 8タブレットに最適な端末はどれか?
Windows 8タブレットを企業導入する際、どのハードウェアベンダーのどの機種を選ぶべきなのだろうか?
現時点で恐らくベストな端末といえるのは、現行OSのWindows 7を搭載するタブレット端末「Samsung Series 7 Slate」だろう。11.6インチのタッチスクリーン(解像度:1366×768)を備え、CPUに1.6GHzのCore i5、メモリに4GバイトのDDR3 RAM、ストレージとして64Gバイトまたは128GバイトのSSDを搭載する。本体裏面と表面にカメラ(画素数はそれぞれ300万画素と200万画素)を装備し、802.11b/g/nのWi-FiとBluetooth 2.1が利用できる。バッテリー駆動時間は7時間。
Series 7 Slateの特徴は、スタイラスペンを使った操作が可能なことだ。これはiOSなど他のモバイルプラットフォームに対する優位性として、多くのWindowsタブレットファンの支持を得ている。Androidはバージョン4.0(コードネーム:Ice Cream Sandwich)でスタイラスペン対応を強化した。ただし、Windows 8の新しいユーザーインタフェースである「Metro」に対して、スタイラスペン入力機能が具体的にどう組み込まれるかは明らかになっていない。
米カリフォルニア州ロサンゼルスで2011年9月に開催された開発者向けカンファレンスである「BUILD」の出席者には、Windows 8のDeveloper Preview版が稼働するSeries 7 Slateが配布された。このSeries 7 Slateはあくまでも「プロトタイプ端末」という位置付けで、市販されているWindows 7搭載のSeries 7 Slateには存在しない3G通信機能やNFC(近距離無線通信技術)を搭載していた。
ASUSやDell、Hewlett-Packard、富士通などのハードウェアベンダーの中には、Windows 8タブレットの開発を公言しているベンダーもあれば、「開発しているだろう」といううわさにとどまるベンダーもある。Windows 8タブレットはIntelチップだけでなくARMチップを搭載したモデルも登場するとみられるが、具体的なことはまだ分からないのが現状だ。
Windows 8タブレットの普及はゆっくりと、しかし確実に進む
エンタープライズ市場におけるWindows 8タブレットの未来は必ずしも約束されたものではなく、広大な沃野というわけでもない。Windows 8タブレットをどう捉えるかによって、企業利用の可能性に関する見方は異なる。
「ほとんどの企業は、社内のクライアントPCのOSを急いでWindows 8に切り替えることはないだろう」と語るのは、調査会社IDCのクライアント・ディスプレ―担当プログラム副社長であるボブ・オドネル氏だ。「Windows 7が発売されて2年になるが、いまだに導入の初期段階という企業は多い。そうした企業がタブレット端末のためだけにWindows 8に移行するかどうかは甚だ疑問だ」
「Windows 8はタッチ操作が可能なことから、Windows 7より優れたユーザーエクスペリエンスを実現するのは確か」とオドネル氏は認める。だが「企業がタブレット端末を利用するのは、一部のアプリケーションを使う場合だけというのが現状だ。Windows 8のリリース直後は企業向けのWindows 8アプリケーションは充実していないだろう。そのため、Windows 8タブレットを利用すべきケースはほとんどないかもしれない」(同氏)。
一方、「Windows 8タブレットは中堅・中小企業に大きなメリットをもたらす可能性がある」という見方を示すのは、米ITコンサルティング会社Fino Consultingのマネージングディレクターであるブライアン・フィノ氏である。中堅・中小企業にとって、AndroidやWindows Phone、iOSなど、さまざまなプラットフォームに幅広く対応できる技術者を見つけ出すのは容易ではない。「Windows 8はプラットフォームの標準となり得るポジションにある。タブレット端末を含む幅広い端末にWindows 8が浸透すれば、アプリケーションの開発や管理負荷を大幅に抑えられるだろう」(フィノ氏)
「Windowsタブレットは10年前から存在したが、これまでエンタープライズ市場で大きなブームを巻き起こすことはなかった」と、IDCのオドネル氏は指摘する。「Windowsタブレットの普及は非常にゆっくりしたものだった。年間出荷台数は160万台程度であり、その多くはキーボードが付属したコンバーチブル型だ」(オドネル氏)。だが同氏は、「Windows 8の登場により、今後Windowsタブレットの普及が進むことは間違いない」と強調する。
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