地域医療連携ソリューション紹介:デル
「医療機関のIT化の相談役」から地域医療連携に切り込むデル
ヘルスケア/ライフサイエンス市場における世界有数のサービスプロバイダーであるデル。そのノウハウを日本国内にも展開し、既存の医療システムの高度化と合わせて地域医療連携を支援する。
3つの切り口で医療分野の開拓を目指す
ハードウェア販売からコンサルティング、サポートまでを含めたシステムの提供を目指し、業種・業態ごとのソリューション拡充に注力しているデル。同社は創業者のマイケル・デル氏が2007年にCEOへ復帰して以降、医療機関向けITサービスで実績のある米Perot Systems(2009年)などを相次ぎ買収してきた。一連の買収攻勢により、デルは現時点でヘルスケア/ライフサイエンス市場における世界有数のサービスプロバイダーとなった。また、特定の地域や組織で医療機関を共有するHIE(Health Information Exchange)のシステム整備でも米国で多くの実績を上げるなど、医療業界での存在感を増している。
同社は現在、日本国内において以下の3つの切り口で医療機関への提案活動を推進している。
- エンドユーザーコンピューティング
- ITによる医療情報の管理
- 地域医療連携
エンドユーザーコンピューティングは、医療現場のIT環境の整備を目的としている。具体的にはシンクライアントや仮想化技術、スレート端末などを用いてクライアント環境を整備するとともに、マイクロソフトのコミュニケーション基盤「Microsoft Lync」などを利用して医療機関における情報共有の仕組みも提案する。
医療情報の管理では、iSCSIストレージの「Dell EqualLogic」や統合型ストレージの「Dell Compellent」など、同社のストレージ製品をデータ基盤として提供する。また、データ圧縮技術や統合管理アプリケーションなどを活用することで、増加する医療データを効率的に管理可能なシステムを提示する。加えて、クラウドや暗号化技術を通じてBCP(事業継続計画)やディザスタリカバリ(DR)などの要望にも対応する。
地域医療連携システムの提案における同社の戦略の特徴は「電子カルテやオーダリングなどのアプリケーションベンダーを巻き込み、標準化技術で構成される同社のハードウェアを用いて、オープンなプラットフォームを提示する」点にある。
デルの公共・法人マーケティング本部 市場開発部でシニア マネージャーを務める井村英三氏は「デル自体は医療系アプリケーションを持っていない。製品に縛られることなく、アプリケーションベンダー各社と連携し、対象医療機関に最適かつ柔軟なシステムを提供している」と語る。こうした強みを生かすことで、自社を“新規参入組”と分析するデルでも「多くの医療機関に価値のあるサービスを提供できる」という。
地域医療連携の普及に向けた“長期”と“短期”の戦略
日本における地域医療連携の普及に向け、デルはワールドワイドで培ってきたノウハウの横展開に取り組むという。同社は医療機関向け専任部隊を2010年に組織。人材育成を通じて営業力の底上げを図るとともに、中核病院と診療所の双方への営業活動を行っている。
ただし「海外と日本では法制面などで違いがあり、実施方法に少なからぬ見直しが必要」(井村氏)なのも事実だ。また「行政主導で進められている医療システムの標準化も、一朝一夕に作業が完了するとは考えにくい」と捉えている。こうした現状を踏まえ、同社はまず関連学会や各種コミュニティーに参加し、草の根的な啓発活動に注力している。先述した3つの提案アプローチもこの視点で編み出されたものだ。
「日本の現状の環境を考慮すると、現場の医療従事者の声に耳を傾け、個々の課題解決の支援から始めるべきだと考えた。信頼獲得などのためにも極めて重要だ」(井村氏)
その成果は実績として表れている。石川県の恵寿総合病院では、デルのハードウェアとマイクロソフトの「Office Communications Server 2007 R2」を用いたユニファイドコミュニケーション環境を構築している。また、愛知県の三九朗病院は2010年3月、仮想化ソフトウェア「VMware vSphere」を活用して、電子カルテやオーダリングなどの医療システムを仮想環境に移行させた。長野県の相澤病院では、地域医療の情報発信基地としてデータセンターの構築も手掛けている。
クラウド提供における準備も着々
医療分野のIT化では、ITに精通した人材が医療機関に乏しい点が課題として挙げられる。同社はこの状況を打開すべく、SIerと共同で支援体制づくりに取り組んでいるという。また、医療機関のIT導入を促進させるために、今後はシステムの費用対効果をより明確に示せるよう、提案内容をさらに高度化させたいとしている。
デルは「病院内のシステムが高度化されると、業務の効率をさらに上げるために地域医療連携の要望も必然的に高まる」と考えている。そこでエンドユーザーコンピューティングや医療情報の管理などの院内のIT化を強化し、それを足掛かりとして地域医療連携の実現を技術面から支援する。システムの費用対効果にこだわる理由も、地域医療連携システムへの円滑な移行を促すためだ。
今後は、どのように地域医療連携の仕組みが整備されるのか。デルは「中核病院によるデータセンターの独自構築」と「診療所によるクラウドS型地域医療連携プラットフォームの採用」の2つを柱に環境が整備されると見ている。「コスト負担を考えると、クラウドの存在を抜きにした環境整備は考えにくい」(井村氏)
地域医療の研究事業にも参画
今後の地域医療連携の拡大を見据えて、デルは社団法人 地域医療情報研究開発機構が手掛ける事業にも参画している。同機構は自治医科大学などの地域医療データバンクに蓄積されたレセプト情報や人口動態データなどを基に、地域ごとの疾病受療率や医療機関ごとの患者シェアなど、地域医療の実態を明らかにすることで、自治体や医療機関における適切な医療体制の確立を支援する組織だ。
同事業においてデルは、地域医療データバンクやデータセンター、ASP型電子カルテ、救急医療支援システムなどのITインフラ/サービスを提供しており、システム面についてのアドバイスや意見交換なども行っているという。
「ITアドバイザーとして各種のシステムに関する提案活動を行うことで、医療機関の情報連携の推進役を担っている。その経験とノウハウは今後の貴重な財産となるはず」(井村氏)
病院内の情報化支援を切り口に、医療機関のIT化相談役として地域医療連携の実現に取り組むデル。今後は提案メニューの拡充を通じて、さらなる顧客の開拓を目指す。
著者紹介
岡崎勝己(オカザキ カツミ)
広島県生まれ。成蹊大学経済学部経営学科卒業。通信業界向け専門誌、IT情報誌の編集者を経て独立。利用者の立場から見た“技術”の価値と限界をテーマに、ジャーナリストとして活動を展開。得意とするテーマはITと業務改革/イノベーション、ビジネスモデル/人材論など。最近では電子書籍の主要企業の動向を追う記事も連載。著書に『図解ICタグビジネスのすべて(日本能率協会マネジメントセンター)』など。
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