特定製品への先入観を取り払う
「Hyper-VかVMwareか」の選択に役立つ移行評価ツール
ハイパーバイザーの選択は、客観的データに基づいて行われることが望ましい。選択肢のハイパーバイザーに移行した際のROI(投資利益率)とTCO(総所有コスト)を、算出するツールを紹介する。
物理マシンから仮想マシン(VM)への移行で使用するP2V(Physical to Virtual)移行ツールの多くは、移行の評価または支援(もしくはその両方)を目的としている。
移行評価は、アプリケーションを使って物理マシンとそのソフトウェアワークロードを検査し、移行ターゲットのVM構成を推奨する機能だ。一方の移行支援は、実際の移行プロセスを自動化する機能であり、移行したマシンが期待通りのパフォーマンスを発揮するための事後フォローアップを備えた製品もある。
私が「5nine P2V Planner」(以下、Planner)を初めて知ったとき、この製品は上記2つのうち、移行評価機能を主に提供するツールだと思っていた。しかし実際には、ハイパーバイザーの選択を支援するツールであり、対象となるジョブを米MicrosoftのHyper-VあるいはVMware vSphere(以下、vSphere)に移行した場合の相対的なメリットに関する情報を、管理者に提供してくれるのだ(関連記事:Hyper-V環境をGUIで管理できる「5nine Manager」の魅力)。
P2V Plannerの主要機能
P2V Plannerはある意味で「5Nine Migrator」(以下、Migrator)の弟分に当たる製品と言えよう。Migratorは分析とプランニング、P2V移行の支援に加え、移行したマシンとワークロードを継続的に事後評価する機能を提供する。一方のPlannerは、プランニングと評価に特化した製品だが、Migratorを使ったことがある(あるいは使う予定がある)人であれば、Plannerに親しみを覚えるだろう。というのも同じメタファー(比喩的表現)やレポーティング手法が数多く用いられているからだ。
vSphereとHyper-Vのどちらが自社の仮想化ニーズに適しているのかを検討している人にとって、Plannerの最大の存在意義は、意思決定支援ツールとしての価値である。管理者の中には「皆が使っているのでVMwareを使うつもりだ」とか「Microsoft製品で統一しているので、当然Hyper-Vを選ぶ」と安易に考えている人も多いようだ。
しかし現実はそれほど単純ではない。特定のハイパーバイザー向けに高度に最適化されたワークロードは、他のハイパーバイザーでは問題が生じる可能性がある。ライセンスのコストも構成によって大きく変わるだろう。また、既存の仮想化インフラへの投資も考慮すべき要因だ。このため、特定のソリューションへの移行に伴うさまざまな問題を複数の観点から把握することが大切だ。
Plannerはそれぞれの選択肢に移行した際の仮想化のROI(投資利益率)とTCO(総所有コスト)を、各種の計算式を用いて算出する。例えば、メモリの利用率について言えば、各ホストについて分析した平均メモリ利用率が、システムに搭載されている物理メモリよりも大幅に少なければ、1台のホストにより多くのVMを統合できるかもしれない。
その他の製品の機能
その他の移行評価および移行支援製品、特に仮想化ベンダーが提供する製品は、2つの基本機能、つまり(1)特定の仮想化ソリューションへの移行を評価する機能、そして(2)その移行の実施を支援する機能を備える。
Plannerは意思決定支援を主眼に置いており、他の移行計画ツールを1対1の関係で代替するものではない。移行計画ツールの中には、複数の種類のソースシステム(Windows、Linux、Solarisなど)を移行することを想定した製品もあるだろうが、ターゲット環境は、そのベンダーが提供している仮想化製品というのが一般的だ。
例外もある。中でも米Novellの「PlateSpin Migrate」が最大の例外である(関連記事:CTCSPとノベル、OS混在環境でサーバ仮想化を支援する新サービス、仮想化の高度な管理で役に立つ、無料/有料ツール5選)。これは複数の仮想化ターゲットプラットフォームへの移行用のツールだ。もちろんNovellのXen on SLES 10をサポートするが、その他の大手(および中堅・中小)ベンダーのプラットフォーム――VMware vCenter、ESX、ESXi、Solaris 10(U5とU6)ゾーンサーバ、Citrix XenServer 5.5、Hyper-V 1.0――にも対応する。こうした異種プラットフォームをサポートするのは、PlateSpin Migrateがもともとサードパーティー製品だったことによると思われる(同製品はNovellによって買収された)。
その半面、PlateSpin Migrateの評価機能はあまり充実していない。言い換えれば、これらのターゲットプラットフォームのどれが自社のワークロードに最適かを判断する助けにはならない。同製品の主要な目的は移行の基本機能を提供することだが、移行ターゲットがどれであり、そしてユーザーがその理由を知っていることが前提となっている。
比較の対象となるもう1つの直接的な製品に「Lanamark Suite」がある。これは、仮想ハードウェアと物理ハードウェアの両方を使ったデスクトップソリューションとデータセンターソリューションの連携を支援する製品だ。主としてソリューションプロバイダーによる販売・サービス向けだが、ワークロードを分析し、特定の仮想化プラットフォームを推奨するという点ではPlannerと競合する。Lanamarkが対応するターゲットプラットフォームは、XenServer、Hyper-V、vSphereと広範囲に及ぶ。
プライドと先入観
VMへの移行(および日常的なVMの管理と提供)を担当する管理者と話して分かったことだが、彼らは特定のハイパーバイザーに対して強い忠誠心を抱く傾向があるようだ。vSphereからスタートした管理者はvSphereに固執し、Hyper-Vに慣れている管理者はHyper-Vしか眼中にない。これは、特定のプラットフォームが他と比べて技術的なメリットがあるという客観的根拠に基づくものではなく、主に個人的好み、IT部門の方針、あるいはプラットフォームに対する先入観などによるものではないかと思う。ただ、それもやむを得ない面もある。例えば、完全な互換性を重視する管理者であれば、以前から付き合のある仮想化ベンダーが提供するP2Vツールを使った方が、安心だと思うのではないだろうか。
仮に、特定のワークロードではvSphereの方が優れたパフォーマンス環境を提供する(あるいは逆に、Hyper-Vの方がそのジョブに適している)という確固たる証拠を提示したとしても、管理者は抵抗するだろう。要するに、特定のプラットフォームに満足しているのだから、トレーニングをやり直したり仕事のやり方を変えたりする必要もないし、それでいいではないか、というわけだ。確かにその通りだが、それでもパフォーマンスの優れたハイパーバイザーは、運用に多少の苦労が伴ったとしても、それを補うだけの価値があると私は考える。
だからこそ、選択肢の種類と、それぞれの相対的メリットを管理者が把握するのに役立つPlannerのようなツールが必要なのだ。こうしたツールが豊富に出回って入手しやすくなり、使い勝手も改善されれば、先入観に基づいて特定のハイパーバイザーを条件反射的に選ぶことが減り、データに基づいて製品を選択することが多くなると期待される。もちろん、製品にはそれぞれ独自の前提条件や傾向があり、それを無視するわけにはいかないが、これが競争というものだ。
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