モバイルファーストは当たり前、HTML5も活用
日本人の知らない第3のERP「Workday」の正体とは
SAP、Oracleに続く第3の注目ERPパッケージともいわれる「Workday」が好調だ。クラウド、モバイル、HTML5など最先端の技術を活用し、ユーザーを獲得している。新たにビッグデータ分析を開始し、日本進出もうわさされるWorkdayの正体とは?
財務と人材管理(Human Capital Management、以下HCM)のクラウドサービスを手掛ける米Workdayは、2013年9月第2週にサンフランシスコで年次ユーザーカンファレンス「Workday Rising 2013」を開催し、ビッグデータ分析のための新サービス「Workday Big Data Analytics」のリリースを発表した。ビッグデータ市場に正式に名乗りを上げた格好だ。
Workdayの共同CEO、アニール・ブースリ氏は次のように語る。「Workday Big Data Analyticsは、Workdayのあらゆるデータを取り出し、次世代データウェアハウスに格納するとのコンセプトで構築されている。Googleドキュメント、Salesforce.comのデータ、Jiraデータ、Office文書といった企業データであれ、国勢調査やLinkedInのデータ、気象データといった公共データであれ、どんな種類のデータでも取り込み、そうしたデータに対して深い分析を行い、顧客企業が自社のビジネスの方向性を的確に見極められるようにすることが狙いだ」
だがビッグデータは拡大の一途をたどっており、ビジネスリーダー(事業責任者)にとって、「どこから着手すべきか」の判断は難しい場合が少なくない。この点を踏まえ、Workday Big Data Analyticsには10種類のアナリスティクステンプレートがあらかじめ用意されている。HCM向けと財務管理向けのテンプレートがそれぞれ5つずつだ。Workday Big Data Analyticsは、業務管理ソリューションの最新版「Workday 20」の新しいコンポーネントとして提供されている。
さらに、Workdayのもう1人の共同CEOであるデイブ・ダフィールド氏は、複数の学術機関と共同で開発中だという全くの新製品「Workday Student」を発表した。「われわれは従来の学生管理システムに新しい方法を取り入れ、記録のためのシステムと、モバイルファースト(モバイル優先)で人とのつながりを構築するためのシステムと、ビッグデータアナリティクスの基盤とを1つにまとめる」と同社は説明する。Workday Studentのコンポーネントは2014年後半に提供が開始され、完全版は2016年にリリースされる予定だ。
「Workday Rising 2013で発表されたロードマップの目玉は、高等教育向けのサービスだ。非常に大きな取り組みだ」。米Forrester Researchの副社長兼主任アナリストを務めるポール・ハマーマン氏は、このニュースの重要性を強調し、そう語る。「今後、Workdayは他の垂直市場にも進出し、ロードマップは進化を続けるだろう。これまでは主にサービスビジネスや水平アプリケーションに焦点が当てられてきた。だが、物的生産物を販売する企業にはまだ焦点が当てられたことがない」と同氏は続ける。
Workdayの幹部はさらに基調講演のプレゼンテーションにおいて、財務管理サービス「Workday Financials」に関する最新情報を提供した他、Workday Financialsと人材管理サービス「Workday HCM」で予定されている機能強化点を紹介し、新しいユーザーインタフェースと大いに期待されている採用業務支援サービスのデモを披露した。
テンプレートにはスターターパッケージとしての役割も
Workday Big Data Analyticsに用意されているHCM向けのテンプレートには、従業員数の分析、優秀な人材の分析、給与分析などを支援するためのものがある。給与分析のテンプレートでは、外部のベンチマークを使って市場平均と比較し、給与決定の指針にできる。財務管理向けには、自社の業績を他社の財務諸表と比較して競争力のベンチマークにできるテンプレートの他、顧客の収益性を分析したり、販売実績を分析したりするためのものが含まれる。
Workday Big Data Analyticsのテンプレートは人事部用と財務部用に分類されているが、WorkdayのブースリCEOはこの2つの部門が将来的に連係を強めるであろうことを示唆する調査結果を引き合いに出した。同氏によると、米Towers Watsonの調査では、人事担当者の70%、財務責任者の49%が「向こう数年で両部門間の協力が進む」と予想しているという。
前出Forresterのハマーマン氏はコラボレーションの重要性には同意しながらも、次のように指摘する。「会社の業績と従業員の仕事の成果との相互関係を明らかにするといった作業では、財務部と人事部が協力する必要がある。そのためには、共通のプラットフォームが役立つかもしれない。ただし、これは主に売り文句だ」
2014年の課題はグローバル対応、欧州とアジアを重視
では実際、HCMと財務管理で共通するWorkdayのプラットフォームからメリットを享受している顧客はどのくらいいるのだろうか? Workdayの共同CEO、ダフィールド氏によると、現在、Workday Financialsの顧客はWorkday Rising 2012の時点よりも10社増えて50社となっており、そのうち25社が本番運用に入っているという。
Forresterのハマーマン氏は2つの理由を挙げて、この事実を説明する。「当社の成長が遅い背景には、一部には、クラウドベースの財務管理ソリューションに対して市場の受け入れ態勢が整っていないことがある。また、『Workday HCMの既存顧客にだけWorkday Financialsを販売する』というWorkdayの方針も影響している。今後はいずれの要因も変化し、顧客の伸びが加速すると予想している」
Workdayの製品担当副社長であるマイク・フランドセン氏は、Workday Financialsに関する最新情報を提供し、次のように語った。「このシステムは今や、機能的にはレガシーな財務管理ベンダーが提供するソフトウェアにひけをとらないレベルに達している。資金管理の他にも、財務業務を支援するのに必要な幅広いソフトウェアがそろっている」
ただしフランドセン氏は、グローバルな機能性の点では、まだ取り組むべき課題があることを認めている。「欧州とアジアに特有の機能を幾つか追加する必要がある。2013年はスケーラビリティと機能性の充実に重点を置いてきたが、2014年にはグローバル機能の強化に本腰を入れて取り組む」と同氏は語る。
Workday Financialsの今後数回のリリースで予定している新機能としてフランドセン氏が挙げたのは、業界固有の機能、Microsoft Excel対応機能の強化、より高度なアナリティクスなどだ。さらに「Workday 21」には、調達管理のためのダッシュボードや高度なマッチング機能が含まれる見通し。また同社ブースリCEOによると、予算編成、計画、予測のためのツールや、資金管理ツールが追加される可能性もあるという。
新しいユーザーインタフェースはHTML5で構築
HCM関連の機能としては、Workday 21には、モバイル版の人事考課、キャリアプランニング、Affordable Care Act(米国の医療費負担適正化法)に対するコンプライアンス調整などが追加される見通しだ。ただしブースリ氏によれば、2013年12月にリリースが予定されているこの新版の目玉は、新しいユーザーインタフェース(UI)だという。
「UIの刷新に伴い、長年使ってきたFlexを手放すことになる。創業当初は、非常に堅牢なユーザー体験を提供する上でFlexが役立ってくれた。だが今はより良い技術への移行を進めている。HTML5だ」とブースリ氏は語る。
Forresterのハマーマン氏によると、これは歓迎すべき変化だという。「UIの刷新は良い感じだ。幾つかの理由から、新しいUIが必要とされている。既存の枠組みが古くなりつつあったため、WorkdayはUIからFlexを外し、モバイルブラウザとの互換性を改善する必要があった」と同氏は指摘する。実際、Workdayの研究所でディレクターを務めるジョー・コルンジーベル氏は、短いデモにおいて、新UIが「ユーザーが使用するどんな端末にも対応するところ」を紹介した。
デモではもう1つ、2014年早くにリリース予定の採用業務支援アプリケーションも披露された。このシステムはモバイルファーストを念頭に設計されており、WorkdayのHCM製品担当副社長リーアン・リーベンサラー氏によると、新人だけでなく、管理職を採用するための使い勝手の良さが最大の特徴という。その他、社内と社外の候補者を並べて比較する機能や、他の人の面接フィードバックをほぼリアルタイムで把握できる機能などが含まれる。
顧客の要望に応えてリリース頻度を軽減
だが、こうして予定されている数々の新機能や新サービスに、果たして顧客は付いていけるのだろうか? WorkdayのブースリCEOは最初、「1年当たりのリリース件数をさらに1つ増やす」と発言して聴衆をからかったが、最終的には、1年当たりのリリース件数を3件から2件に減らす方針であることを明らかにした。この発表に聴衆は拍手喝采で応えた。
「われわれはユーザーの声に真剣に耳を傾けており、アップデートにはそれなりに手間が掛かることも承知している。従来のアップグレードと比べればはるかに良くなってはいるが、それでも手間は掛かる。当社はアジャイル開発手法に移行し、チームをまとめる方法としてアジャイル開発手法である スクラム(SCRUM)を採用している。従って、技術革新が減速することはないはずだ」とブースリ氏は語る。
さらにブースリ氏は、新しいプレビューインスタンスの追加を発表した。リリース前の1カ月間、サンドボックス環境において新機能をテストできるというものだ。Forresterのハマーマン氏によると、狙いは「新版リリース時の負荷の軽減」だという。
「リリース頻度の変更は、顧客の要望に応えたものだ。顧客は新しい機能を望んでいるが、それと同時に、新機能を使いこなせるようになるまでの混乱を最小限に抑えたいと考えているのだろう」とハマーマン氏は語る。
ただし、リリースの頻度は減らしても、Workdayの全体的な成長は確実に上向きという。
「Workdayは2013年、約60%成長する勢いだ。直近の四半期には、売上高が70%増加している。見通しは堅調であり、同社予測の成長率を上回る可能性もある。驚異的な成長だ」とハマーマン氏は語る。
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